あらすじ
人間を世界のほかのあらゆるものと区別するのは「心」の存在だ。そして、われわれの心の中のすべての表象は、クオリアというそれ以上分割できない単位からできている。風にそよぐ木々の動きや葉の色、鼻孔をふるわす芳香――さまざまなクオリアたちを表象する〈心〉が、脳内にいかにして現象するか。さらにクオリアと「私」の心を結ぶ「志向性」の新たな展開とは? 脳科学の現在から「私の心」の見取り図へ。模索する独創的思考の息づかいが感じられる格好の入門篇。
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Posted by ブクログ
「心」の全ては、脳のニューロンの発火に伴って起きる「脳内現象」に過ぎない。これは、現在の神経生理学の立場からしては常識であるという。そう、デカルトの二元論はとうに捨てられたのだった。では、脳というこの臓器の中でどのようにして「心」が立ち上がってくるのか?これはいまだ解明されていない問題である。著者は、それを「クオリア」と「指向性」という考えで解き明かす土台を作ろうとしている。議論を見るとなかなか面白い。ニューロンの発火の「クラスター」がクオリアを作り出しているという。ここの発火ではなく、その時系列にそして広がりを持った発火の相互関係から作り出されるという。これを「マッハの原理」というらしい。なるほどとは思うが、まだまだ数値的にも計測ができない領域だから、どう発展するのか不明で、それゆえ「ハード・プロブレム」と呼ばれているのだな。
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驚いた。
十年前の著書・再文庫化。
クオリアからポインタまで、拡張的に語られる、仮説の数々。
はじめは違和感があったのだけれど、最後まで行って落ち着くところに落ち着いた感じ。
どうも、自分の思考とダブる。気がするだけ?
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僕の考えが変わりました。詳細はねもと研論文にて、という感じですが。アイデンティティとか個性を考える大きなファクターの一つになる考えが示されていました。クオリア…すごいおもしろいです!!
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困難だが興味深い問題に挑戦している。認識の一番最初の起点をニューロン発火という物理現象に据えて、そこから説明できる部分とグレーの部分と壁とを淡々と認めつつ、そこから一歩素直に書いているように思った。日常生活で周囲を見たり感じたりすることが少し楽しくなるかもしれません。
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ニューロンの活動といった物質的な過程が、意識の中の表象とどのような関係があるかという問題について挑んだ本。
視覚的なアウェアネスの中で、色や音、香り、味、手触りといった鮮明な質感を伴うクオリアの塊(例:りんごの赤い感じ、つやつやした感じ)に、具体的な質感を伴わず抽象的だが、構造・意味を伴う明示的な視覚情報としてのポインタ(例:それはりんごである)が貼り付けられるという考えが興味深かった。
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クオリアとは「赤いトマトを見るかんじ」などそのような感覚のことである。
あなたや私はつねにいろいろな景色を見るが、その「見ている」ことや「何かを飲む」ことは神経や脳内伝達物質の作用に他ならないのであるが、私たちは心の話だの心理学テストだのあたかも「心」があるかのような話をする。ただ、「心」なんていうものは体のどこを探してもどこにもないのだ。
その後著者はだまし絵や絵画を用いて「脳の思い込み」を再現しようとする。顔を認識する脳、あるはずもない図形を幻視したり、脳の働きを垣間見ることができる。また感情を司る「ミラーニューロン」も把握することができる。難しいが、平易な表現も多い。
Posted by ブクログ
モデル論・・・モデル作りの意義や意味合いを感じることが出来る一冊です。
内容としては、新たに実証されたことについてのものではなく、
脳と心を考察する上でのモデルついて語られているって感じですっ
因みに、純粋な実証系の自然科学の本だと思って読んじゃうと、がっかりすること間違いなし?
現状の自然科学の枠組みと限界に対する投げかけ的な産物です。
(そろそろ次の段階に進んでもいいんじゃないっ?的な~なんですけど、現状の自然科学では><)
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茂木健一郎さんの本。脳科学に触れることができた。両眼視野闘争が面白い。それと、意識の問題が最大の焦点というところも。いつか解き明かして紹介して欲しい。
Posted by ブクログ
著者が、脳科学の立場から心の謎を解き明かすための展望を、大胆に語っている本です。
著者は、デイヴィドソンの非法則的一元論の立場に対して、ある程度の共感を寄せています。しかし、そこからさらに踏み込んで、脳科学の立場からクオリアの謎に迫る道を見つけようとしています。
その際に重要な区別とされるのが、「反応選択性のドグマ」と「マッハの原理」との違いです。「反応選択性のドグマ」では、ニューロン群の発火パターンと心の中に生じる表象の対応が成立していると考えます。これに対して「マッハの原理」は、ニューロン群の発火パターンと外界の対応を度外視し、ニューロンのネットワークの相互作用のあり方が、心の中に生じる表象を決定すると考えます。さらに著者は、ニューロンのネットワークにおける相互作用を単に生理的な配置と捉えるのではなく、あくまでニューラル・ネットワークという「システム」の中で捉えようとします。たとえば、シナプスの相互作用に有限の物理的時間がかかっても、この「システム」の中では一瞬に潰れてしまうことになります。またその空間的な配置も、心という一点に潰れることになります。著者はこのことを、相対性原理の「固有時」の概念やペンローズの「ツイスター」の概念を手がかりに説明しています。
さらに著者は、「私」の謎にも迫っていきます。著者は、「私の心がクオリアを見る」というときに生じている志向的作用を、プログラムにおける「ポインタ」のアナロジーによって解き明かそうとしています。同様に、行為における意図は「自由端のポインタ」として解釈されることになります。
個人的に疑問を感じたのは、「私の心がクオリアを見る」という言葉が畳語のように思えてしまうことです。クオリアに志向性を認めることは、クオリアを自然主義的に解き明かす際の常道ではあると思うのですが、著者の考えている「志向性」はクオリアそのものにそなわっている性格ではなく、注意作用のようなものだと思われます。痛みそのものには志向性はなくとも、私たちは自分の感じている痛みに注意を向けたり、そこから注意を逸らしたりすることができるので、そのような意味での「志向性」が存在することは論を俟たないでしょう。しかしそのような志向性に「私」の足場を求めることは、著者自身が戒めている「ホムンクルス」や「超越論的主観性」といった、出所不明の存在者を招き寄せてしまうのではないのかという疑念が、どうしても拭えません。
Posted by ブクログ
心の中で起こる全ての表象、そこに存在する映像、聞こえてくる音については、脳の中のニューロンの発火によって生ずる随伴現象である。人間の脳も原子の組み合わせで出来ており、自然法則に従う物質の集合体なのだと。
そのニューロンの発火パターン、因果関係についての考察。
科学が進めば、自分がどのような行動をこれからするのかかなりの精度で予測が可能になりそうな予感。
専門家ではないワタクシには難解で、後半理解するのが正直困難であり、かなり持て余しながら読んだので★3つ。
Posted by ブクログ
茂木先生が、”心脳問題のハードプロブレム”に真っ向から挑んでるっていうのがよく分かりました。
しかも、それが相当はハードプロブレムだということもわかりました。
専門用語に馴染みがあっても、少々納得しがたい部分もあったり。
入門となってますが、一般の人にはちょっと難しいかな?
科学的なアプローチをしようとしつつも、最後は現象学的な考え方が必要になったりするとこがおもしろいですね。
個人的には、こういう問題はブラックボックスにしといた方が仕事ははかどる…。
先生の研究には敬意を表しつつ、遠くから研究の進展を楽しみに待ちたいと思います。
Posted by ブクログ
脳科学者 茂木健一郎さんが提唱する、新しい視点の脳科学の本。
美しいものを見て美しいと思う、感動する、といった
いままで科学が避けていた「心」の問題に迫った本。
たしかにこれだけ科学や医学が発達しているのに
人が感動したり、心地よい感覚を感じるという「心と脳」のメカニズムは
ほとんど解明されていない。
心は脳がつかさどってることは間違いないんだけど
なんで脳のシナプスの電気活動だけで、人に多種多様な感情が宿るんだろう…
まだ科学で解明されてない部分だから、この本にも答えなんて書いてないけど
興味深い疑問を投げかけてくれた本でした。
Posted by ブクログ
脳科学、特に心と脳の関係について書かれている。専門的で難しいところもあるが、丁寧に書かれていて何とか読破できた。人の「心」を科学が解き明かすのは途方もないほど遠く難しいことなんだと感じたけど、この瞬間の自分の心は脳のどういう動きによって生じているかなんて考えてみるのは結構面白い。
Posted by ブクログ
心について脳科学の視点でアプローチしている。心を科学的に解明されると私たちには夢が無くなるけど、脳科学者にとってはロマンの固まりなんだろうなと。目に見える表象がクオリアの発火によるものなどとイメージしながら生活していたら疲れそうだ。
Posted by ブクログ
ジンセイにおける自己実現を果たしたとき
分かりやすく俗っぽい達成基準(ヨノナカで言う夢?)が二つ
1 ichiroと色んなカチカンとかについて語り合えるようになっている
2 プロフェッショナルに出演する
要するに、ボクのパフォーマンスとか カチカン・ビジョンについて
社会的に認知されて関心を持たれるほどにはなっていたい ということ
前置きが長くなりましたが
2つめの夢プロフェッショナルの司会者 茂木さんの一冊。
これ、かなりの良書です。オモシロい♪
脳について そしてココロについて
科学で解明したいんダ!という熱い議論が展開
いわゆる認知科学っぽいアプローチで
ココロ=脳でおきている現象
をベースにしてます
その脳でおきている現象とは
脳内物質ニューロンたちの発火の組み合わせ
から随伴する現象のこと
と定義
脳をひとつの小宇宙にみたてたかのように
そこに相対性理論に近い「マッハ理論」を適用
感覚器官から受けた信号から
脳内で表現された質感「クオリア」の光景
その光景をマウスのポインタみたいに選択する
「わたし」の主観性と指向性
この二段階の「わたしの見取り図」モデルがオモシロい
茂木さんも言ってるように
この主観性と指向性がナンなのか
これから探求すべきテーマなのでしょうね
ちょうどこのクールで愛読書「魍魎の匣」のアニメ版を見てたので
脳とか「わたし」に関してイロイロ情報や考えが
ボクの脳の中で組合わさったり弾け合ったり
読書のプロセス自体を楽しめた
この一冊が2008年の乱読納めとなったのは
とても素敵な出会いだったと思います
今年の乱読日記は75本
これだけ知識と出会えるのはスゴく幸せなコトだと思う
来年は一冊いっさつの読書に
既読の書で得た知識を組み合わせる
そんな思考の遊戯を楽しみたい
そんな風に考えてる大晦日。
Posted by ブクログ
最近はタレント活動ばかりしていますが、実は茂木さんて頭いいんだなあという本。内容は難しくて専門的すぎて、半分ぐらいしか理解できてないです。マッハ理論てなんだ。
Posted by ブクログ
従来まで主に人文科学で扱われていた表象の問題をいかに脳科学の観点から扱っているか気になって読んでみました。
【まとめ】
心で○○を見ている状態になるためには
1.外界の情報が眼によってとらえられる
↓
2.脳内のニューロンが発火→クオリア発生
↓
3.主観性がそれを見えるものとして採択
の3ステップをふむ必要性がある。
自然科学の論旨展開の緻密さが馴染まなくて、なかなかページが進まなかった。効き目があるということが主観性と深く結びついているのが面白いと思った。
Posted by ブクログ
まず、脳はクオリアっていうユニークな質感を感じて、それをポインタで指示する。このポインタを含めたクオリアの相互関係が「心」である、と言うようなことが書いてあったんだと思うんですが・・・難しくて・・・。それに著者も指摘しているように、「ポインタが指示する」ということは、「指示する何か(ホムンクルス)」が脳内に「存在する」ということなのか?という疑問もあります。そして、それこそが「心」なのではないかと。とすれば、これは心について書かれた本ではなく、心の材料について書かれた本であるようにも思うわけです。誤読の可能性、大いにあります。私が言えることは、「心についてはよくわからん」ということがわかった、ということだけです。