【感想・ネタバレ】世界史の誕生 ――モンゴルの発展と伝統のレビュー

あらすじ

ヘーロドトスの『ヒストリアイ』は大国ペルシアに小国ギリシアが勝利する物語であり、変化と対決を主題とした。司馬遷の『史記』は皇帝の統治権限の由来を語り、変化を認めない正当性を主題としている。この西洋史と東洋史という二つの流れを一つの世界史に統合したのが、13世紀のモンゴル帝国の建国である。ユーラシアを統一した大帝国はそれまでの政治の枠組みを壊し、現代につながる国々を誕生させた。さまざまな出来事の相互影響を記述する世界史はこのときから始まったと言えるのだ。

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Posted by ブクログ

「東洋史」=中国を中心とし、歴史は自らの正統性の証明のためのもので変化を認めない。「西洋史」=地中海文明(ギリシア・キリスト教)の歴史は二つの勢力の対立と正義の勝利という変化を描くもの。そもそも両者は全く異なるが、13世紀のモンゴル高原、中央アジアに住む遊牧民の活動(侵略)が、東西の歴史に重要な影響を与えてきたとの考え。
すばらしくエキサイティングな本。

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2018年04月02日

Posted by ブクログ

高校までの世界史の授業と全く違う世界史の話。そうなのか!と驚く。▲歴史という文化は、ヘーロドトスと司馬遷の二人の天才のつくりだした地中海文明の歴史と中国文明の歴史があるのみ。例えばインド文明もマヤ文明もアンデス文明も歴史のない文明。日本文明は中国文明に対抗してできた。▲それからモンゴル帝国の誕生による二つの歴史の交流が世界史の誕生なのだ。▲ユーラシア大陸の民族の興亡の話は雄大。▲現代の世界の対立は歴史のある文明と歴史のない文明の対立らしいです。

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2016年05月23日

Posted by ブクログ

前半の中国論、ヨーロッパ論は贔屓目に見てもあまりに粗っぽいが後半のダイナミズムは群を抜く。今まで軽視されてきた遊牧民族から改めて世界史を見直すとここまで面白いとは

モンゴル帝国こそが東西世界史を繋げた立役者にして後の国民国家や民族の原型を各地に残したという

節々に挟まる日本歴史学会への警鐘は独断かあるいは緻密な検証のたわものか、危うさこそあるがモンゴル史関連じゃー間違いなく最高の本の一つなのは間違いない

岡田英弘の長所と短所が露骨に現れてるので、彼を好きな人にも嫌いな人にも、一読の価値ありだろう

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2010年12月14日

Posted by ブクログ

岡田英弘氏の著書を読んだのはこの「世界史の誕生」が初めてでしたが、非常に独特な歴史論を展開される方だと思いました。おそらく歴史学者の中では異端とされるのではないかと思います。岡田史学という言葉もあるそうで、普通の歴史学者とはひと味違うようです。この本を読んで、他の作品も読んでみたくなりましたし、講義を受けたくなりました。

この著書で「世界史の誕生」は1206年だと主張します。
1206年はチンギスハンが即位した年です。

この年を世界史の誕生とする理由は、モンゴル帝国出現以前は、文字として残す歴史は地中海と中国にしかなかったが、モンゴル帝国がこれらを結びつけることで初めて世界史が誕生したからだという論旨です。

モンゴルは現代ではマイナーな国家になっていますが、かつては膨大な版図を有した国です。私の印象ではモンゴルは中世に登場して世界を駆け巡り、パッと消えてしまったという感じなのですが、モンゴル帝国はその後の国々に大きな影響を与えているそうです。例えばインドには19世紀半ばまでムガール帝国が栄えましたが、ムガール帝国とは「モンゴル人の国」の意味で、王はチンギス・ハンの血統だそうです。


この本を読んでて、日本という国が世界史に登場したのは19世紀後半からなんだなと思いました。明治維新後世界史にデビューしてメキメキと頭角を表し、第2次大戦では世界中を相手にして派手に戦い、ボコボコにやられて(児島襄 「太平洋戦争」によると第2次大戦時の日本の作戦版図はモンゴル帝国最盛期の領土より広大であったといいます)、もう駄目かと思ったら経済大国として見事に復活。。 人間に例えたら相当波乱万丈な人生を歩んでる国だなと思います。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[世界史の誕生]。岡田英弘歴史学

●岡田歴史学の本を紹介します。
岡田英弘先生の本を読むと
今まで疑問に思ってきたことが
すきっとわかる部分が、かなりあります。

まず[世界史の誕生]
では基本前提です。

●世界史は、モンゴル帝国とともに始まった。

●民族という概念は、19世紀に発生した新しいもの。
国家の概念も、フランス、革命、アメリカ革命から起こったもので
、それまでは、国家イコール君主の待ちものであった。
ーーーーーーーーーーーー
●モンゴル帝国が作った諸国民は、インド、イラン、中国、
ロシア、トルコ人である、すべて、モンゴル帝国の産物、遺産である、
●モンゴルはウルスという単位で構成され、
それぞれのウルスは、遊牧君主の所領であり、
大ハーンも、自分のウルスしか直営できず、他のウルス内政には干渉できない。
●モンゴル帝国によって、中央ユーラシアの遊牧民は、すべてモンゴル人の社会構成へと
入った。
モンゴルの東半分は清帝国となり、
西半分は、ロシア帝国となる。インドムガール帝国、
オスマン帝国(トルコ、西アジア、北アフリカ)もモンゴル帝国の
継承者である。

●中国という概念も考え直さればならない。
皇帝を中心とする世界で、出身の種族には関係なく
中国人という概念が、できた。
●中国の歴史は、ほとんど中央ユーラシアの遊牧民による
征服王朝である。
●清は、正式なるモンゴルの継承者であり、
中華人民共和国も、このモンゴル帝国の領土の継承者である。

●中央ユーラシアの遊牧民が、それまでの世界史に
も影響を与えた、西欧を襲ったのフン族は、中国の匈奴であり、
ゲルマン民族の移動を引き起こし、西欧の原型を作った。
一方、東洋では、中国と遊牧民帝国の戦いであり、
現在までの中国の歴史は、ほとんど中央ユーラシアの遊牧民により
支配王朝である。
(これに関しては、別途、岡田先生の詳しい本があります。)

●日本の国家成立は、668年を持ってする。
白村江の敗戦によって、世界の孤児に
なってしまった倭人が、当時の日本列島にきていた
華僑といっしょになって、唐、新羅と対抗するために
作った国家である、天智天皇を持って初めての天皇の号を使い
、日本という国号をもち、近江令を持って初めての成文法となる。
(日本史に関しても、別途、岡田先生の本があります。)

●資本主義もモンゴルから始まる。
遊牧民の政治プラス定住型の経済の結合システム
により、治安と交通の便がよくなった。
経済活動が活発化する。信用取引の原理が稼動氏始まる。
世界最初の紙幣も、モンゴルが作った。
以上、モンゴルおよび、その継承国家は
すべて、大陸国家である。つまり、陸上運輸コストが

かかる。それに対して海洋国家は、港を抑え、小さい海軍力でも
制海権を握れる。大量の物資を低コストで
稼動できる。貿易により、大きな利益をうける。

●21世紀の覇権国家は、海洋国家であり、アメリカ、ヨーロッパ、
日本である。軍事力を持つアメリカと、歴史で武装した、
日本と西欧との対立構図である。

●西欧の大航海時代も、モンゴルにユーラシアを押さえら得たために
ポルトガル、スペインが、直接交易を求めてインド洋、東洋にやってきた結果である、
しかし、東シナ海は、それより先に、大航海時代に入っていた。
日本人倭寇である。後期倭寇は、中国人がほとんどで
その王が王直である。(鉄砲伝来は彼の仕掛けであると前に書きましたが)


●歴史観としては、ヘロドトスに始まる地中海ー西欧型歴史観と
司馬遷の『史記』、司馬光による「資治通鑑」に始まる中国方の歴史の
枠組みがある。地中海ー西欧型歴史観は、
ヘロドトス、旧約聖書、ヨハネ黙示録が中心的な歴史認識として
あり、アジアを敵として認識している。それが
キリスト教とあいまって、異教徒に対する思想となる。

要約です。この本を、是非お読み下さい

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2018年05月28日

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ちくま文庫 岡田英弘 
世界史の誕生

東洋史と西洋史といった別々の歴史が1206年のモンゴル帝国をきっかけに ユーラシア大陸をおおう一つの世界史となる展開


日本やヨーロッパから世界の歴史を見ることはあっても、モンゴルなど中央ユーラシアから世界の歴史を見たのは初めて。とても面白かった


ヘロドトス「歴史」やヨハネの黙示録の影響を受けたヨーロッパの歴史観が アジアとの対立構造やヨーロッパ=善、アジア=悪の二元構造を持っているとのこと。アジア差別というのは ヨーロッパの歴史観からきているように感じた


秦・漢時代の中国を正統と捉え、中国の正統の歴史は、中央ユーラシア草原から移動してきた鮮卑、トルコ、ウイグル、キタイ、金、モンゴルから支配を受けてきた歴史と捉えている



著者の歴史観
*歴史は文化である〜人間の集団によって文化は違うから集団ごとに歴史がある
*歴史は強力な武器である〜歴史のない文明は、なんとか自分なりの歴史を発明して、この強力な武器を獲得しようとする

そういう理由で、地中海文明と中国文明は、歴史のなかった文明にコピーされ、次から次へ伝染していった

へーロドトス「ヒストリアイ」
*アジアとヨーロッパの対立こそが歴史の主題
*アジアに対するヨーロッパの勝利が歴史の宿命

「ヨハネの黙示録」
*この世は善神と悪神の対立抗争の場であり、最終的には善神が勝ち、世界は消滅するが、その前に出現するメシアの王権のもと、ユダヤ人キリスト教徒が苦難の報酬を受ける

*世界は善の原理と悪の原理の戦場である〜ヨーロッパは善であり、アジアは悪










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2025年01月07日

Posted by ブクログ

★★★2021年8月★★★


世界史はモンゴル帝国から。
壮大なロマンを感じる。
地中海史観による西洋史。史記の史観によると中国史。
それらを通して世界史を見るのではなく、ユーラシア大陸を全体としての歴史はモンゴル帝国より始まる。ロシア帝国をはじめ多くの国はモンゴル帝国の継承国であるという。
まさに「地果て、海尽きるまで」スケールの大きな話だ。

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2021年08月09日

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高校の世界史で挫折(どうしても頭に入らない)して以来、リベンジを繰り返してきましたが、この本のお蔭で、ようやく頭に入るようになりました。
そもそも「ゲルマン民族の大移動」って、どこから、何で移動してくるの? の疑問がようやく氷解した幸せ……。
ただ、中央アジアの地理関係を理解しながら読むために、世界地図を広げて指で地名を辿りつつ読まねばなりませんでしたが、それでやっとユーラシア大陸って一つじゃない、という当たり前すぎるのに受験世界史から抜けてた視点が補完されたように思います。
ついでに……アラル海が半分以上消えてるってこと、今ようやく気付きましたよ!
本編に比べればオマケのようなボリュームですが、ざっくりヨーロッパ史と、ざっくりキリスト教史も分かりやすくて面白かったです。

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2018年09月28日

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歴史は中国と、古代ギリシアからはじまり、モンゴル帝国の誕生をもって世界史の誕生となる。という視点は興味深かった。
ただ、中国が今後資本主義を取り入れずに発展しないと記述していた点は、時代を感じた。

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2017年03月15日

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ざっくりとした語り口で持論を明快に語る。300頁もないのでいくぶん駆け足だが概要を掴むには十分か。年代で輪切りして世界史覚えた人間にとっては納得のいく内容。また補足もできてよかった。

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2013年12月09日

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モンゴル帝国誕生の前は、世界史というものは存在しなかった、みたいな説明から始まる大胆な本。
蒙古にとって南は前だから、世界地図の南を上にして(つまりひっくり返して)見て、それが彼らの視点からの世界だ、という説明が斬新で好き。逆さまだという見方を捨てて、これはこういうものだと見れば、ほんとに違う地図に見えてくる。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

檄文としては面白い。

ヘーロドトスを始祖とする西洋史も、司馬遷を始祖とする東洋史も、どちらもローカルな個別事情に影響を受けて形作られたものであって、それらを世界史に統合・昇華させるのは無理がある。
モンゴル帝国こそが西ヨーロッパにも極東にも影響を与え、両者を連結する史上初めての存在であったのだから、モンゴル帝国を軸にして世界史を構築すべきだ。
したがって、テムジンが中央アジア遊牧民たちの指導者に選ばれ、彼がチンギス・ハーンと名乗り始めた1206年が世界史のスタートである(それ以前の歴史はローカル史に任せる)。

…という檄を飛ばしている一冊。すごく面白い構想について書いた本で刺激的だ。

刺激的だけど、ただの宣言である。
モンゴル帝国が東西ユーラシアに及ぼした影響について自明のこととして書いているのは本書の性質からすれば仕方ないのかもしれないが、予備知識がない立場で読むと、「ゴルフは呉竜府が中国で生み出してイギリスに伝播した」と書く民明書房の本かと思ってしまう部分もある。
ユーラシア以外を無視しているのはともかく、ユーラシア中央部の遊牧民族たちの歴史を語る部分が退屈というか眠くなるのが一番つらいところだ(そもそも歴史を語り継ぐ性質がない人々であったとするなら、主張の根幹にかかわるとも思う)。

そのほか、詳しい人が見たらツッコミどころが多いことが予想されるが、繰り返すと「構想としてはとても面白い」(大ぼら吹きと紙一重)。

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2024年03月10日

Posted by ブクログ

著者によれば、歴史の書き方にはヘロドトスに始まる、地中海世界の描き方(アジアに対するヨーロッパの戦いの歴史)と司馬遷に始まる中国の描き方(中国の正統を巡る歴史)がある(それしかない)という。その両方に影響を与えその特に中国にありながら中国を超える歴史的存在だったのがモンゴルなのだ、ということだと理解した。ただ結局その先に何があるのか、という展望については物足りなさも残った。

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2022年10月02日

Posted by ブクログ

岡田英弘氏独自の史観による世界史素描の試み。
世界史に複数の歴史を無理矢理つぎはぎしたような違和感を覚えるのは、異なる史観によって編集された西洋の歴史と東洋の歴史を同じ軸でまとめようとしているからだと指摘し、モンゴル帝国を中心とする史観によって初めて西洋史と東洋史の完全な統合が可能となると言うのが基本的な考えになります。

歴史が成立するための前提条件や、中国の得意な史観など、岡田氏ならではの斬新な指摘も多く、読みごたえがあります。
ただ、密度が濃い分、地名や人名を列挙した文章を長々と読むことになり、この部分は正直なところ歴史に詳しくない私には少しばかり苦痛でした。

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2011年09月09日

Posted by ブクログ

”世界史”の定義が面白い。
モンゴル帝国はあまり世界史の中で、特別大きな存在感がなかったが、
この帝国によって初めて東洋と西洋をつなぐ歴史が誕生した、という解釈は自分にとっては新しい視点だと思った。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

歴史は文化である。歴史は単なる過去の記録ではない。歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で把握し、解釈し、理解し、説明し、叙述する営みのことである。地球上にうまれたどの文明のなかにも、歴史という文化があったわけではなかった。

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2009年10月07日

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