あらすじ
それは、私の人生をもう一度、
歩き出すための旅だった。
東京郊外の大きな家で、ひとり暮らしをしている柑(かん)。なるべく人付き合いを断ち、規則正しく無機質な日々を送っているが、ある思いを胸に、亡き母の故郷である与那国島を訪ねることを決意する。それは、柑自身も覚えていないほど幼い頃に犯した、大きな罪と向き合うためだった。しかし思いがけず、小学6年生の甥っ子・伊吹もついてくることになり……。忘れられない痛みを抱えながら生きていく、すべての人に贈る物語。
【装幀】岡本歌織(woven tale)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この人の文章 本当に好き。
宮地尚子さんの『傷を愛せるか』のテーマとも共鳴する話も描かれてて良かった。
あと作中に出てくる
本とか音楽の趣味が私と似てて
地味に嬉しかった。
Posted by ブクログ
以下ネタバレ含みます。
天才的な画家だった母を、記憶にない事故とはいえ、自分が殺してしまったことを苛む柑。
慎ましく、求めない暮らしを続ける中で、彼は母の絵が飾られている与那国島の美術館を訪れようと決意する。
そこに付いてきたのが、甥の伊吹だった。
二人と一つの人形の旅を読んでいると、巡礼の旅という言葉を思い出した。
目的地は決まっているのだけれど、そこに辿り着くまでに、自分の手触りを何度も確認し続ける柑。
そして、そんな柑の側で、彼にガイダンスし続ける伊吹の存在が面白い。
きっと、ミミズクは伊吹だったんだろうな。
取り返しのつかない罪を、背負ってしまえば、誰かが下ろしてくれるわけではなくて。
ずっとずっと、自分の中に、それは蠢き続ける。
自分を暗く、照らし続ける。
まるで、『こころ』の先生のように。
伊吹は伊吹で、自分の言葉が他者に「影響」することが、唐突に怖くなってしまう。
それも、少し分かる。
そんな自分を、いつかの自分を、自分の中で切り離しながら、共にあり続けること。
時間があるから、昨日と今日は、分けることも可能であるということ。
そんな感覚的なものを、うまく言葉にしているなあとしみじみ感動して、星5をつけた。
良かった。
Posted by ブクログ
読み終わりまるで絵画を鑑賞しているような感覚におちいってしまいました。主人公が母親の死を自分のしわざと思ってしまった息子の柑、母親の故郷与那国島を甥の伊吹との破天荒な珍道中は楽しんで読みました。この小説家「雛倉さりえ」は定点観測をしてしまう作家さんになってしまいました。あなたもよ〜く考えて読んでみてください。
Posted by ブクログ
装丁に惹かれて本屋で衝動買いした。
自我が芽生える前の出来事によって、罪の意識とともに生きてきた主人公。
幼き日の自身は自分であり、他人でもある。記憶がないからこそ向き合いきれなかった過去から、前に進むために旅をする話だ。
旅の中で出会う人々は、そんな彼を導くガイドのような役割を果たす。共に歩く甥っ子伊吹は年齢に似合わずどこか達観している。まるで主人公とは真逆だ。気丈に振る舞う伊吹にも彼なりの痛みがあり、「こうしたいではなく、どうしたら良いのか」を基準に判断する姿勢においては2人に共通していると感じた。
誰ひとりとして、望んでここにいる者はいない。
生はまさに、拒むことの出来ない不条理な譲与である。
淡々と進んでいくストーリーだからこそ、穏やかに、静かに読者に問いかける物語だと思う。