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それは、私の人生をもう一度、 歩き出すための旅だった。 東京郊外の大きな家で、ひとり暮らしをしている柑(かん)。なるべく人付き合いを断ち、規則正しく無機質な日々を送っているが、ある思いを胸に、亡き母の故郷である与那国島を訪ねることを決意する。それは、柑自身も覚えていないほど幼い頃に犯した、大きな罪と向き合うためだった。しかし思いがけず、小学6年生の甥っ子・伊吹もついてくることになり……。忘れられない痛みを抱えながら生きていく、すべての人に贈る物語。 【装幀】岡本歌織(woven tale)
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Posted by ブクログ
優しさが人に与える影響を知れる小説。 3歳の時に芸術家の母が病で亡くなってしまう。 そして時が流れ、なぜ母が亡くなってしまったのか。その秘密を知ることに・・・ 姉に息子の息吹の思考があまりにも優しく切ない気持ちが漏れる場面は、 個人的には共感し辛く感じました。 ・人は相手には興味がなく、自分のこ...続きを読むとを多く語る。 ・またちょっとした一言で人の人生を左右する恐れのある怖さ。 柑は自分が犯した罪との向き合い方に葛藤する姿は、自分自身でどのように向き合っていいのか本当にわかりませんでした。それでも現状に満足せずに変化を起こすための行動には尊敬を感じました。 この小説からは、人それぞれ感じる部分は色々あると感じるいい小説でした。 ありがとう。約束どおり、「感想に対する感想」として話すね。
インマヌエル。神は我とともにあるとは、私たちへの庇護であり、制約であると思っていた。同行者としての役に立たない神ではあるが、常に寄り添う神というのはとても印象的なテーゼだ。贖罪の物語、とても内省的で静かでピンと糸を張ったような素晴らしい物語でした。
湖永さん、こっとんさんのレビューを読み、とても気になっていた本書。 原罪をテーマに描かれていて、哲学的でありながら文章の美しさも素晴らしく、読み進めるうちに気持ちが凪ぐような小説。 装丁の美しさだけでなく、表紙、テキスト、フォント、空白など視覚的な印象すべてが物語の世界観にフィットしている。だから...続きを読む、心が落ち着いてくるのかもしれない。 記憶にない罪を贖うというとてつもなく難しいテーマはまさに原罪を抱えて生きること。 柑のように、家族から記憶のない罪を知らされた人だけでなく、原罪を抱えて生きている人は少なくないと思う。 苦しみの中にいても、インマヌエル―神は私たちとともに在りつづける―ということが救いとなるという概念が少しわかった気がする。 柑とエンマの会話は、不条理の罪を背負った人にとってわずかな救いとなるかもしれない。 そして、柑が姉との対話を持つことができたことは物語の救いだったし、私にとっても救いだった。 姉の粋夏の言葉 「もしわたしが、母さんと同じ事故にあったら―(中略) わたしは伊吹を怒ったり、責めたりなんかしない。ただ、心配する。わたしのいない世界をちゃんと生き延びて、大人になれるのかって。それで、できることなら近くにいたいと思う。あの子の目には見えなくても、何もできなくても、ただずっとそばに」 母を病で亡くして26年。 ずっと母の死の責任を感じながら生きているけれど、またこの本に母からの言葉をもらったような気がする。
読み始めた瞬間にこれは自分の好きな作品だと直感しました。心をさぁっとさらわれるってこういう事かと。 どこを読んでもこの表現好きだなと思いながら読み進め、気づけばずっと言葉を味わうように読んでいて、読み終わるのが本当に惜しく感じられました。 静かな物語ですが、その分一文一文の重みが強く残っていく作品...続きを読むだと思います。 この作品は、自我が生まれる前の罪への向き合い方が描かれています。きれいに割り切ることはできなくても、そのまま生きていく事への覚悟を感じました。 読み終えたあとも言葉が何度もよみがえり、これからも繰り返し思い出す大好きな作品となりました。
この人の文章 本当に好き。 宮地尚子さんの『傷を愛せるか』のテーマとも共鳴する話も描かれてて良かった。 あと作中に出てくる 本とか音楽の趣味が私と似てて 地味に嬉しかった。
以下ネタバレ含みます。 天才的な画家だった母を、記憶にない事故とはいえ、自分が殺してしまったことを苛む柑。 慎ましく、求めない暮らしを続ける中で、彼は母の絵が飾られている与那国島の美術館を訪れようと決意する。 そこに付いてきたのが、甥の伊吹だった。 二人と一つの人形の旅を読んでいると、巡...続きを読む礼の旅という言葉を思い出した。 目的地は決まっているのだけれど、そこに辿り着くまでに、自分の手触りを何度も確認し続ける柑。 そして、そんな柑の側で、彼にガイダンスし続ける伊吹の存在が面白い。 きっと、ミミズクは伊吹だったんだろうな。 取り返しのつかない罪を、背負ってしまえば、誰かが下ろしてくれるわけではなくて。 ずっとずっと、自分の中に、それは蠢き続ける。 自分を暗く、照らし続ける。 まるで、『こころ』の先生のように。 伊吹は伊吹で、自分の言葉が他者に「影響」することが、唐突に怖くなってしまう。 それも、少し分かる。 そんな自分を、いつかの自分を、自分の中で切り離しながら、共にあり続けること。 時間があるから、昨日と今日は、分けることも可能であるということ。 そんな感覚的なものを、うまく言葉にしているなあとしみじみ感動して、星5をつけた。 良かった。
これは生きていくのが辛い。こういう地獄のようなニュースはたまに見るが。お姉さんが親の立場からの意見を聞かせてあげることができたのが救い。そして難しい言葉が沢山出てきて日本語が美しい。よくこんな文章書けるな。
デビュー作からなんとなく好きで追ってる作家さんの一人だけど今回の作品物凄く良かった…私も一人の子の親になったからかな…なんか最後すごく泣いてしまった。美術館ってのも良かったし、柑って名前すごくいい(粋夏はちょっとあれだけど)もっと広く知られてほしいなと思う作家さん
自分に身に覚えのないことでも、誰かを傷付けてしまうことがある。 身に覚えがないことだからこそ、自分の罪の重さから逃れられない。 とても辛いお話でした。 あることがきっかけでバラバラになってしまった家族。傷付いた方も自分の傷にいっぱいいっぱいで、相手を思いやる余裕が少しもなくて、これは一緒にいるのは...続きを読む辛い。 自分をとことん責めている主人公の柑(かん)が旅先で出会った人から言われた言葉、「わたしたちの立場が、真逆だったとしたら、わたしにどんな言葉をかけますか」‥‥そんな風に自分を赦してあげるのも大切ではないかなと思いました。 最後に姉と一歩ずつ歩み寄れたのは良かったと思います。 全体的にとても丁寧な美しい描写で、孤独がより際立つような気がしました。静かに本を閉じる‥‥そんな一冊でした。
なるべく人と関わらず、規則正しく無機質な日々を送っている柑は、亡き母の故郷である与那国島を訪ねるが、旅立つその日に小学6年の甥っ子・伊吹もついていくことになり…。 記憶にないことでも家族をバラバラにしたという思いがずっと心の中にあり、絶望のなかで生きてきた柑だったが、伊吹の何気ない言動や与那国島で...続きを読む出会ったエンマとの会話で、自分を見つめ直すことになる。 そして、何をすべきか…それは、姉と対話することだったのだと。 とても静かで、だけど感じることは力強くて、情景が浮かんでくる、好きな小説だった。
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