あらすじ
八十歳になろうとする老大納言は、若い妻を甥の左大臣に奪われるが、妻への恋情が断ちきれず、死んでしまう。残された一人息子の胸にも幼くして別れた母の面影がいつも秘められていた――。平安期の古典に材をとり、母への永遠の慕情、老人の美女への執着を描き、さらに、肉体の妄執が理性を越えて、人間を愛欲の悩みに陥れるという谷崎文学の主要なテーマを深化させた作品。
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Posted by ブクログ
国経と平中の気持ちはとてもわかるんだけど、時平
だけ役回り的に嫌なやつにしか見えないw
あの年齢になってやっと対面できた滋幹も良かった。
平中の滑稽さ、国経の哀愁(妄執とも言える)、滋幹の美しい終わり方。
完璧な史実と創作の融合でした。
時平が北の方を奪い取る時の谷崎潤一郎の癖が滲み出ている文体の迫力、凄すぎ。
Posted by ブクログ
時平が国常の妻を奪う強烈でドラマチックなハイライトシーン、平中が侍従の君の機知に富んだ嫌がらせで袖にされるさま、国常が妻を想う執念、名場面がいくつかあるけれど、やっぱりラストの滋幹の「お母さま!」に尽きる。
平中、時平、国常、焦点を当てて語られる人物はあくまでも脇役、滋幹ですら主役ではなく、「母を恋い慕う子の叫び」が主役の本なのだと思った。
Posted by ブクログ
少将滋幹の母
(和書)2010年02月16日 19:39
1953 新潮社 谷崎 潤一郎
美しい女をめぐる人々の間の関係がとても上手く織りなされている。年月の流れ、和歌、種本などなかなか興味深い内容で読み応えはあった。
ふと自分の過去の情景が頭をよぎる。
Posted by ブクログ
「痴人の愛」以来谷崎小説は避けてきましたが、雅で上品な官能に満ちた話でした。
最初に驕慢な貴公子の恋の駆け引きにどぎまぎして、
妻への恋情に死んだ夫とそれを見つめる滋幹の場面にどこか無常観と業の深さを感じ取りました。
滋幹の母、北の方が最後に尼僧になったからかも。
何もせず、美人というだけで夫とその係累と元夫、情夫やもう一人息子も?死に至らしめてしまった北の方が一番浮世離れして、まるで雲をつかむように心情が読めなかった。
周りの男たち、滋幹すら北の方への欲望でドロドロしているのに。
最後の40年ぶりの親子の再会のおかげで、北の方は魔性の女という誹りを免れていると思うのは意地悪?
男って母という女には弱いのねと思いました。
女性とその親…ならまずないように思います。
実際、こんな綺麗なだけの生き物じゃないもの。
だから北の方視点の話がないのかしら。