あらすじ
円の価値が毀損し続ける中、どのように自分の資産を守るべきか
「いつか円高に戻る」という過去の経験則は通用しない
本書は、為替の第一人者が、円安の根本原因を解き明かし、今後起こりうるシナリオと防衛策を提示する。静かに進行する危機の本質を把握し、インフレの時勢を生き抜くための一冊。
【目次】
第一章 お金、投資、マーケットのそもそも
「お金」ってそもそもなに?
投資は、お金を増やすためだけにするのではない
マーケットを見る目を養うための勘所
第二章 なぜ円はこれほどまでに弱くなったのか
「円安」は日本の問題か、円の問題か
歴史的な超円安の背景となっている2つの要因 ほか
第三章 日本政府の借金はなにが問題なのか
国債は本当に問題なのか 発行残高の幻想と現実
国債依存の副作用 金利・通貨に滲み出る歪み
第四章 マイナスの実質金利から抜け出せない円
構造的インフレと社会への影響 なぜ2億~3億円のマンションが売れるのか
実質金利マイナスがもたらすお金の大移動
インフレ下での常識は、今までの非常識 ほか
第五章 止められない日本からの資金流出
なぜ経常黒字でも円高にならないのか
貿易黒字国から貿易赤字国への変貌 4つの要因
円安は誰にとってプラスなのか 円安で喜ぶ人と苦しむ人
第六章 失われた30年はなぜ失われたのか 取り戻すために必要なこと
日本の失われた30年 スイスとイタリアとの比較
失われた30年を取り戻すために ほか
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ネットで見つけた本です、この本の著者である佐々木氏の本は初めて読みました、佐々木氏の経歴は日本銀行に入社したのちに、外資系金融機関に勤務されています。14年前に「弱い日本の円」という本において日本の将来を憂いた内容で書かれていて、この本はその続編(完成編)となります。
このところ、円安が続いているのになぜ、日本は低迷が続いているのか、円高不況と言われていた頃を記憶している私はそれが不思議でしたが、この本に詳しく解説されていました、円高だった頃の日本と比較して、今は日本そのものが変わってしまったようですね。
最後の章で解説されていた、スイス・イタリアと日本との比較は印象に残りました。また、多くの一次データを利用して説明されている点も嬉しく思いました。
以下は気になったポイントです。
・ 今のままでは 今後、 円安傾向は続き日本のインフレ率は高止まり する。 円安 も インフレを高止まりさせる一つの要因であるが、 さらに重要な要因としては、人手不足である。日本企業の円建ての利益は 膨らみ、 実質的な成長がなくても名目上の 円建て 利益は膨らみ、 株価は上昇する(P28)
・ゴールド価格は2025年から急に上昇したわけではなくその前から上昇していたが ここ数年 その上昇 スピードが速くなっている、各国の中央銀行が発行する通貨に対する信任が低下してきていることに背景がある。 2020年に広がった コロナ 禍を通じて 資金繰りに困った 金融機関や国民に対して 政府が補助金を出すことが普通の行為になってきた、この補助金は政府が発行した国際を中央銀行が購入してお金を政府を渡すことによって 工面した、こうしたやり方をすると民間企業・ 家計が保有する通貨が増え、 その結果 通貨の価値が下落する。 これが金価格の上昇という形で現れている(P31)
・社会人として仕事をして報酬を得ている人に一度考えてほしいことがある、 最も有望な投資先はどこか、 答えは「自分自身」である、 自分自身こそが最も高い リターンをもたらす 投資対象である(P41)
・物価高 で有名だった 日本が割安な国になった2つの理由、1) 海外では物価の上昇率が大きく 日本ではほとんど 物価が上昇していない、 日本で 物価上昇が目立ってきたのは最近のことである、2)日本人が使っている「 円」という通貨の価値が極端に安くなっている(P60)
・日本国内だけで見れば円の価値はそれほど低下していないにもかかわらず、 国際的に評価されなくなっている、具体的に言うと「 海外から見ると非常に割安となっている円を買って日本で使えば、 日本国内で様々なものやサービスが割安に買えるのに、誰も見向きをしなくなっている」本来であれば 円が割安でなくなるところまで 日本のものやサービスが買われたり、日本に投資が行われる結果 円高になるはずである(P65)
・ 為替相場の評価を行う時には物価の変動率の差も一緒に考える必要がある、 1970年の相場は1ドル360円だったので 現在の1ドル 150円の方が円高だという評価は正しくない、 1970年 当時と比べると米国の物価は日本に比べて大きく上昇している。 実質的には(円の実質実効レート) 1ドル360円だった時より1ドル 150円という今の方が円安水準となる(P68)
・円が極端に弱くなった2つの理由、1)実質金利= 金利 マイナス 物価上昇率、が大幅な マイナスとなっている、 これはお金の価値の低下に直接影響する、2) 日本から海外への資金流出が増加している、日本人が縁を打って外貨を購入し 海外の資産 製品 サービスを購入する流れが大きくなっている(P81)
・ 国債発行残高増加の本当の問題点とは、1) 国債を発行して調達した資金の使い方が 以前は政府の資産 になるもの(ダム、 建物等)であったが 最近は国民に直接配布している、2)金利が上昇することを想定していない、 3)国債発行 増加を中央銀行に頼っている(P108)
・今銀行の預金金利は0.2%、物価上昇率は3%程度であるから、実質金利はマイナス2.8%である、 これが意味することは 円という通貨を持っていると 毎年 2.8%ずつ 目減りすることを意味する(P113)
・ 日本の人手不足は人口減少 よりも 労働時間短縮が原因である、 1990年から2024年までの35年間で1人当たり年間総労働時間は20%も減っている 、就業者数は2010年から ほぼ毎年増えている(P119)
・ 労働時間が減少した要因として、1) 2018年7月に公布 2019年4月から施行された「 働き方改革関連法」の影響が多い 、2)非正規雇用者の賃金が上昇したことにより 同じ 労働時間で働くと配偶者などの扶養を外れ 社会保険料を支払う必要が生じるため労働時間を抑える 動きも影響している、このことから 過去10年程度で 労働時間は急速に短縮していった可能性がある(P121)
・ 日本の人口を5歳ごとの年齢に区切って人数を比べると 最も人口が多いのは50から54歳の層である、第2次ベビーブーマーと呼ばれる人たちで毎年200万人 生まれていた、現在の出生数の3倍 近くである。 次に多いのが 55から59歳の 層である、つまり 現在50代の層の人口が非常に多くなっていて 総人口の15%を占める、 これから10年くらいは 雇用者に占める シニア層の割合は増えていき、 就業者数もまだ増えていく、日本は人口減少がいよいよ 労働市場に大きなインパクトを与えるタイミングで 労働時間を強制的に短くする政策を行ったので、 人手不足感が一気に強まりそれが 賃金上昇・ 物価上昇につながっている(P124)
・ 現在の日本のインフレに対応するための政策は「 利上げ」が最善の政策ではないかもしれないが、少なくとも 減税 や 補助金の支払いで解決するようなものではない。 本来は 供給を増やす政策を行うべきであり、 中央銀行の金融政策ではどうにもならない、 円安 も インフレの一つの原因であるので それに対処するには 日本銀行による利上げで実質金利をプラスに戻す しか手段はない(P131)
・ 最近では米ドル建てで見ても円建てで見ても ゴールドの価格が上昇を続けている、これはゴールドの価値が高まって いるのではなく、お金の価値が低下している、マーケットはお金の価値の低下を敏感に感じ取り それがゴールド価格の上昇につながっている(P147)
・ 株価は「 利益X倍率」 で 決まる、 つまり 企業の利益がどのぐらいになって その何倍まで株価をつけるかという仕組みである、 バブル期には 倍率の方が膨らんだ、 つまり高水準の企業の利益が今後も長い間続くとの期待だけが膨らんでいった、 だから 破裂した。 しかし今の株価は「 利益」の増加が押し上げている、利益の増加のかなりの部分は「 円安」と「インフレ」によるものである、 従って 筆者の予想通り 円安基調が続き インフレ率も高止まり するのであれば、株価は長期的には上昇していくことになる、日経平均株価が15万円まで上昇するという予想はそれほど驚くことではない、 ただし 物価 も同時に上昇していくので今の感覚の15万円とは違う(P160)
・2024年の日本の経常黒字額は28.7兆円と過去最大になっている、対名目 GDP 比で見ても 4.5%と2007年 と ほぼ 同じ程度の水準である、 なぜ過去最大の形状 黒字なのに円高にならないのか、 その答えは 経常黒字の内訳にある、日本の経常黒字は全て 第1次所得収支の黒字であり それがなければ 経常収支は赤字である、 第一次所得収支とは「 過去に海外に対して行った投資から得られる利益」のことである (P168)
・ 1990年から2000年代に行われた 円高を止めるための「円売り介入」には限界はない、 日本の政府短期証券を発行して円を調達してそれを 海外 為替市場で売って外貨を買う、基本的には限界はない。 しかし 「円買い介入」を行っても効果がないとマーケット 参加者に見透かされた時、 世界の投機筋が本当に円の売り仕掛けをする可能性が出てくる。そうなるともはや 円売り圧力を止める術がなくなる、 新興国で時折起こる通貨危機はこうして発生する、 日本も その手前にいるのかもしれない(P192)
・日本とスイスとの違いではっきりしているのは、 日本は「価値よりも価格」にフォーカスし生産は「コストの安い 海外」に頼ってしまった、 国内で生産する分については 円を弱くすることで輸出競争力を高めようとした、 つまり 価格の安さを追求した。スイスは「 価格よりも価値」にフォーカスし クオリティの高い製品を生み出すために、国内人材も教育し、 海外からも優秀な人材を受け入れた、スイスは「クオリティが高いから価値も高い」を目指した(P205)
・日本経済が失われた30年を経験することになった 非常に大きな要因は、 日本的な人事制度や 労働慣行、雇用システムにあるのかと思われる(P209)
・米国と日本 両方の企業文化 を見てきて感じるのは「どちらが良い・ 悪い」 ではなく「 どちらが今の時代に合っているか」という違いのような気がする (P212)
・ AI が初級から上級レベルの仕事代わりにこなすようになると、組織における人材育成の仕組みは 根底から 揺らぐことになる、 すでに専門的な知識を身につけたシニアが適切な指示を出せれば、 AI が仕事を正確かつ迅速に実行してくれるという世界が広がっている。 つまり 今後は「誰が手を動かすか」よりも「 誰が AI に正しい指示を出せるか」が問われる。 AI に指示する人を育成するためには、 大学院・ 専門職大学における教育があるかもしれない(P218)
・ 日本企業が海外で上げた利益を日本に還流するために時々言及されるのか「 レパトリー減税」である、日本はすでに 海外子会社から受け取る配当益の95%を非課税とする制度を導入している、企業が日本国内に資金を戻して 日本国内に投資をしたいと思わせる環境を作る必要がある(P226)
・ 多様な バックグラウンドを持った人がそれぞれの特徴を力に変えられる組織 こそ強い組織となる、 均質な集団では新しい発想が生まれにくく環境の変化への抵抗力も弱まる。 企業が 女性管理職を増やすべきなのも男女平等のためだけではなく組織を強くするためでもある。同じ理論は国家にも当てはまる、 多様な ルーツを持つ日本人が集まることで 国としての力も強くなる (P248)
2026年3月28日読破
2026年3月28日作成
Posted by ブクログ
為替を主にした日本経済をテーマにした本だが、働き方、学び方という点でも示唆があるように思った。
6章は特におすすめ。
スイスとイタリアと日本の比較がすごくわかりやすい。
Posted by ブクログ
タイトルとは裏腹に丁寧な語り口で日本の現状を述べられた本。内容はそうだなと思うし、私ではうまく言語化できない問題について、そうそうこれが言いたかったとばかりに分かりやすく説明されている。面白かった。
Posted by ブクログ
はじめに
第一章 お金、投資、マーケットのそもそも
第二章 なぜ円はこれほどまでに弱くなったのか
第三章 日本政府の借金はなにが問題なのか
第四章 マイナスの実質金利から抜け出せない円
第五章 止められない日本からの資金流出
第六章 「失われた30年」は、なぜ失われたのか
ー取り戻すために必要なこと
おわりに
Posted by ブクログ
最近のインフレと円安。日本が現状に至るまで何が起こったのかよくわからないため読んでみた。わかりやすくて読んでよかった!
政府の財政支出を投資家が国債を買うことで円の量に変化が起こらなければ円の価値はそのままだが、日本では現在、中央銀行が国債を買って支えているため、円の発行が増加して価値が下がっている。通貨価値が下がっても物の価値は変わらないからインフレになるのは当たり前。生活必需品の多くを輸入に頼っている日本には致命的なことだ。
なぜ日本が失われた30年を経験したのかやツケを払わされている現状についても詳しく解説されていた。またスイスと日本の比較がとても興味深かった。両国は30年前から今まで、インフレ率が低く名目値GDP成長率、賃金上昇率が他国と比べて低い。でもスイスの実質GDP成長率と実質賃金はアメリカよりも高い。スイスの取った施策は「価格よりも価値、クオリティ戦略」日本がとった施策は「価値より価格にフォーカス、コストの安い海外生産」確かに、現在世界トップの賃金水準となったスイスに学ぶことは多い。
また、「日本人ファースト」の考え方にも警鐘を鳴らす。「ルールを守らない外国人」が問題なのではなく、「ルールを守らない人」が問題なので、「外国人排除」の方向になってしまわないように、世界中の優秀な人材が「日本で働きたい」と思ってもらえる魅力的な国にならないと、日本は衰退のペースを速めてしまう可能性があると。多様性を受け入れる国に発展すると良いなと思いました。
Posted by ブクログ
日本が高インフレ国となり、実質金利はマイナス状態、政治的意図から金利上昇は抑制され、円安は続いていく、見かけ上政府債務も対名目GDPで減少するため、為政者からすると都合がいい、という議論。
また、企業が海外への投資一辺倒になり、円安に寄与していることが整然と説かれている。
日本の抱える病の病態生理は明快であったが、それに対する処方はなんとなく歯切れが悪かった。
が、それは手遅れに近い状況だからなのかもしれない…