あらすじ
綿矢ワールド全開のデビュー25周年記念作!
2001年『インストール』で文藝賞を受賞し作家デビューしてから25年。前作『激しく煌めく短い命』で女性同士の恋愛を描いた綿矢さんが新たに挑んだのは――綿矢作品史上最もファンキーな主人公が大暴れする“妊婦コメディ”小説!
◎本書より
「青春むだにするほど勉強したのに、働き盛りの繁殖期には全部中断して、産め産めって!そりゃねえだろ!クソッ」
「いくら金なくても、国のために子どもなんか産むか、ボッケエエエエエ!」
「あああ、もう声出さねえと、やってられねえ!痛い!めちゃくちゃ痛い!腹ん中で赤ん坊が暴れ回ってやがる!」
◎内容紹介
俊貴は控えめで笑顔が可愛い由依と結婚する。不妊治療を4年続けた末、夫婦2人で生きていくと決めた矢先、俊貴が仕事から帰宅すると、由依が珍妙な格好で踊っていた。「ヨウセイダーーーーッ!」。妊娠した喜びで(!?)由依は内面、外見ともに豹変。髪型はデニス・ロッドマンのように、喋り方は『ドラゴンボール』の孫悟空のようになる。
驚きと笑いに満ちた夫婦の日々を描いた「グレタ・ニンプ」と、バレンタインに手作りチョコを!壮絶な一夜の奮闘を描いた「深夜のスパチュラ」の2編を収録。
(底本 2026年1月発売作品)
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Posted by ブクログ
いやー面白かった。笑いと共感と学びと感動と。綿矢りさ恐るべし。
夫で語り手の俊貴は温厚で比較的鷹揚な性格。そんな彼でも由依の変貌ぶりに混乱や不満が芽生えるのは当然のことではある。男性である私は基本的に彼に共感しながら読み続けた。
しかしふと気づく。女性作家が夫の一人称で男性が共感できるように書いたものに、私はまんまと共感していたのだ。どうして男性の気持ちを完全に把握した上で書けるのか。しかもこんなぶっ飛んだ話で。もうこの時点で私は綿矢りささんの手のひらで転がされていたのだ。
読んでいる側ですら困惑するしかない由依の変貌ぶり。しかしその理由を知ると途端に応援したくなってしまった。
「強い自分になりたい」
これ以上ないくらい端的な理由だけれど、由依は新しい命を体内で育みながら自分自身も生まれ変わろうとした。言動のインパクトが強すぎるので目立たないが、子を宿しながら母もまた生まれ変わる。何かとても崇高な光景だと思った。
妊娠した人が妊娠出産に関する諸問題について語ることにより、妊娠を望みながら叶わずにいる人たちの反感を買ってしまうという現象。私は世の中にこんな事があるなど考えたことすらなかった。作者は由依をその現象に巻き込ませ、反感を持った人の為に由依に反省の涙を流させた。これは「どちらも間違ってないよ」という双方に対するメッセージであると捉えた。
対立するのではなくてお互いの手を取り合うことができないか。私は素直にそう思うのだが、男性として安易に語って良いことなのかという躊躇もある。これに関しての私の答えはまだ出ない。
この手の作品はきっとハッピーエンドで終わるだろうと思いながら読んでいた。そして実際ハッピーエンドだった。しかし、思っていたものとは違った。
私はなんだかんだで最後は由依は妊娠前のような姿に戻るのだろうと思っていた。ところが由依、変わらないでやんの。おまけに俊貴がそのまんまの由依を丸ごと愛している。
これについて私は心の底から猛省した。最近女性作家の作品ばかり読んでいる自分に酔っているだけで全く何にも分かってなかった。結局私は男性目線でのハッピーエンドしか想像できていなかった。由依は自分がなりたい自分になって、しっかり自分の足で立っているではないか。これ以上のハッピーエンドがどこにあるのか。思いもよらず良い学びの機会となった。今作に出会えて良かった。
『深夜のスパチュラ』は難しいことを考えずにただただ楽しく読みました。スパチュラをGoogle検索しなくてよかった。
次に読むときはPerfume『チョコレイト・ディスコ』でも流しながらかな。
Posted by ブクログ
要所で出てくる派手なフォント、インパクトのあるキャラクター、勢いのあるコメディの中に、妊活や妊娠出産、子育てに至る深刻で現実的な問題が色濃く滲んでいて、クスクス笑って読んでいたのに急にヒヤッと身につまされる一文が現れる
p.133「そしたらご機嫌取りみたいに、子ども産んだら特典として、金をやる、クーポンをやる、って行ってくるぞな?でもそんなんもらえたら確かに嬉しいけど自尊心は下がっていくんだす!」
世間から産め産めと言われているような圧を感じる度、家畜や物扱いされているように感じてしまう気持ち悪さが、由依のこの言葉を読んで少し消化された気がした
Posted by ブクログ
「グレタ・ニンプ」
旦那良いやつだな〜
異様なほどの変貌を遂げた妻を頑張って受け入れようとしてるところとか、言いたいことがあっても1回立ち止まって考えてるところが偉い。
浜中元気そうで良かった。
「深夜のスパチュラ」
可耶の必死な姿が可愛かったし、最後の展開が面白かった!
Posted by ブクログ
結構ぶっ飛んだ小説だったんだけど、嫌いじゃないし、何度も声出して笑ってしまった
でも確かに由依の怒りもごもっともなんだよなぁ〜
それにしても装丁のインパクトの強さよ
フォントと文字サイズも挑戦的で目新しかった
Posted by ブクログ
グレタ・ニンプ…?
グレた妊婦…?まさかねえ…と思いながら読みはじめたらそのまさかで大爆笑してしまいました。妊婦だからグレないなんてことはないですね。色んなところに思い込みってあるな…と考えさせられましたが、それにしても笑いが止まりませんでした。徐々にでもなく、一瞬でグレるんだ…と目が点に。
途中雲行きが怪しくなり、この夫婦は大丈夫なのか…?とうっすら不安になりました。うっすら。けれど由依を受け入れて、自らの環境の変化にも適応しようとする俊貴。
由依を非難する両親からも守るようになる俊貴。純粋にすごい…!と感じました。
パートナーのあの変貌ぶりは受け入れられない人もいるでしょう。由依は見た目が大きく変わったかもしれないけれど、俊貴は中身がものすごく変わったのだろうと感じました。
ひさしぶりに本でゲラゲラ笑って読み終わりました。