あらすじ
両親が離婚し、離れて暮らす姉弟。完璧主義の姉・園は、仕事もプライベートも自己管理を徹底しているが、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛を続けている。体が弱く冷めた性格の弟・行は、寝たきりの愛犬・ハルの介護をしながら高校に通い、進路に悩む。行が入院し、ハルの介護を交代した園。そんな二人に転機が訪れ――。瑞々しい感性が絶賛された、第18回小説すばる新人賞受賞作。
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Posted by ブクログ
久しぶりにページを捲るのが止まらないような面白い小説を読んだ気がする。
なにかにつけて完璧主義で容姿端麗だけど結婚が決まっている幼馴染と不倫を続けている姉と、やれば何でもそこそこ出来るけど「まぁそんなもん」が口癖で何かに熱中したことが無くやりたいことも見つからない受験生の弟を中心に、老犬ハルとともにそれぞれの壁に悩みながらぶつかっていく物語、といえるだろうか。
語り方として一人称を姉と弟と交互に切り替わっていく形で、これが非常に面白く、片方の視点の認識や印象と、もう片方の認識や印象とのズレをスリリングに読み進めることができた。
また、それぞれの人間性をエピソードを交えて協調する部分が非常に面白く読めた。
例えば、姉の方は、小学生時代のシーンで、容姿端麗であることをその頃から自覚しており、他の女子に対して優越感を感じてしまう描写がドキっとした。
> どうして振り返ってしまったのだろう。あの日、恭司の背中で。 振り返って、真ん中の彼女と目が合った。私は笑ってしまったのだ。「笑った」じゃなく、「嘲笑った」のだ。
Posted by ブクログ
姉と弟それぞれの人間関係が丁寧に書かれていて楽しめた。
みんなそれぞれに悩みやコンプレックスを抱えながら日常を過ごしている様子がよく伝わって応援したくなる。
どの登場人物にも共感できる部分があって、いわゆる「嫌なキャラ」というのがいなかったのはさすがだと思う。
あともう一歩先まで読みたいと思うところで終わった。
この作者の別の作品も読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
完璧主義者の姉と病気がちな弟と老犬ハルのお話。
姉の園が私には愛おしいキャラクターでした。
洗濯物を干すときやタンスの中の洋服がグラデーションになるように並べるようなこだわりの強い子で、何事にも几帳面できっちりしてて完璧な子。友人だったら疲れちゃいそうな子。自分を完璧に見せることによって自分を守っている、そうじゃないと自分を守れないと思いこんでいる。婚約者がいる恭と付き合っていて、離れられない、苦しんでいる。
最後に園があるきっかけから前に進むことができてほっとしました。
Posted by ブクログ
水原園
行の四つ年上の姉。九年前に両親が離婚して、母親と一緒に出て行った。短大を卒業して、就職して一人暮らしを始めた。デパートの受付嬢。婚約者のいる幼なじみの恭司と体の関係を続けている。
佐々行
園の弟。高校三年生。身体が弱く、幼い頃から入退院を繰り返している。高校一年で留年している。
水原由理
園・行の母。父親より三歳年上の銀行員。
園・行の実父
家の一階で中華料理屋をやっている。
ハル
両親が離婚する前、行が五歳、園が小学三年生の時に二人で公園で拾ってきた芝犬に似た雑種犬。十四歳の老犬。今では立ち上がることもほとんどできなくなり、介助犬ならぬ、すっかり被介護犬。
美佐
園の唯一の友人。
佐々真奈美
行の義母。腰が低く誰に対しても申し訳なさそうな態度をとっており、「すみません」が口癖。父親とは離婚前から不倫関係だった。
佐々忍
行の義兄。高校を中退た後、カー用品店に勤めている。
岩下
行のクラスメイト。決して嫌なヤツではないが、ホストみたいな黒ずくめのキメキメの格好で補習に来る。
折笠夏美
なっちゃん。行のクラスメイト。化粧もしてない、髪も染めてない、自然体の女子高生。「なっちゃん」「行ちゃん」と呼び合う仲。
野口
行のクラスメイト。
平山
行のクラスメイト。
松永
行のクラスメイト。
西野めぐみ
園の職場の後輩。デパートの受付嬢。二十歳。香水がキツイ。
松田
園の職場の後輩。貴金属売り場の販売員。二十歳。堂島と付き合ってた。
堂島と別れた後、園に対して軽く探りを入れている。
窪田恭司
園・行の幼なじみ。広告代理店に勤めている。大学時代の先輩である三歳年上の沙織と婚約しているが、園と浮気をしている。
沙織
恭司とは同棲しており婚約中。
浅野
行が入院した時の担当の看護婦。
宮本
行が入院した時の隣のベットの人。高校の数学の先生。
中野智子
老婆、水婆と呼ばれている。園が勤めているデパートに毎週水曜日に毎回違うピンクの服を着てやってくる。
堂島
園の職場の同僚。四大出の同期で二つ年上。食器売り場担当。同僚の松田と交際していたが、園に告白するため別れた。
小川
園のアパートの隣人。大学二年生。
Posted by ブクログ
主人公・行がなあなあにしていた日常をもう1度見つめなおす物語。園も、そう言えるのかな。
この物語1番のキャラクターと言えば、なっちゃん&めぐみなのではないかと思う。病弱や両親の離婚及び再婚ということを日常として受け入れて来たふたりを動揺させる行動を取れたから。人は行動することで他人を動かすのだと思う。
個人的には恭司の様な男は嫌いだが、彼にも弱さはあり、彼は彼なりに懸命に生きている姿を垣間見れて良かった。
小川くんは今後、園とは何ともならないとは思うが彼の人生を応援したい(宮本さんも!)
作中になった「服装や化粧がどれだけ「人」を表すのか」から始まる園の独白が、この作品の背骨になっている様に思う。私も頑張らないとなあ(笑)
Posted by ブクログ
飛鳥井千砂さん長編初読み。
いくえみ先生のイラストが素敵。
読んでいて思ったことは、園ってやな女だなー。ってこと。
自分に厳しいから人にも厳しいんじゃなくて、人に厳しいから自分にも厳しくしとかないとバランスとれないんじゃないの?みたいな、なんかちょっとめぐみちゃんの気持ちもわからないでもないな。と思った私は女の嫉妬なのかしら。
園の完璧主義についてのバックグラウンド的な説明があれば、もうちょっと園に寄り添って物語が読めるのにな。なんて残念な気持ちになりつつも、最後スッパリと終わらせる事ができて良かったね。って思いました。
Posted by ブクログ
話いろいろ省いていくと
2つの「きょうだい」のかたち、というのが
一番印象的かも
血がつながっていても、厳密には他人だから
お互いの考えていることはわからないこともある
そんな姉と弟
血がつながっていなくても、家族は家族だから
何も言わなくてもお互いに分かり合える瞬間もある
連れ子どうしの義兄と義弟
そうなっちゃうと別にわんこが間に入らなくても
よかったのかなぁと個人的には思ったりして・・・
Posted by ブクログ
姉の園と弟の行。両親が離婚し、園は母親と、行は父親と住んでいたため別々に暮らしていたけれど二人の仲の良さは変わらず、社会人と高校生になっても時々一緒に過ごす間柄。そんな中、二人が幼少時代から飼っていて、離婚後は行が面倒を見ていた飼い犬のハルが、老衰により余命がわずかとなった頃、行も身体を壊し入院してしまう。そこで一人暮らしをしていた園が、しばらくの間ハルの面倒を見ると買って出る。行は、入院中もお見舞いに来てくれたクラスメートのなっちゃんとのことや、大学進学という目の前の選択のこと。園は職場での人間関係や、婚約者がいる幼馴染とのこと。と、それぞれが抱えている悩みがある中で、物語が進行していく。タイトルの通り最後にハルは亡くなってしまうけれど、二人のそれぞれの選択のシーンや、成長していく過程が明確に書かれているわけではないので、後半はなんとなく物足りないなあ、という印象。