【感想・ネタバレ】明日、あたらしい歌をうたうのレビュー

あらすじ

「君がいつもそばにいるから、毎日があたらしい」

遺影として飾られていたカリスマ的なミュージシャンの写真を、父と聞いて育った新(あらた)。
誰にも見えない存在として少女時代を生きてきたある日、耳にした音楽に救われ、恋に出会って新の母となった、くすか。
新が父の真実を知った時、二人の物語が、一つの歌に重なりはじめる――。

200ページで大長編の感動を約束する、珠玉の青春小説であり、親子小説であり、胸を打つ恋愛小説。
人の人生を変えた一曲を描く、あなたの人生を変える一冊。

【角田光代さんより皆さまへメッセージ】
どんなにちっぽけな原因であれ、奈落の底に落とされた気分で、もうだめだと思いこみ、起き上がることすらおっくうなとき、あなたは何に救われてきましたか? と、いろんな人に訊いてみたことがあります。小説、ドラマ、テレビのお笑い、いろんな答えがありました。自分を救ってくれたものを、職業として選び取っている人もいました。
私の場合は音楽です。
音楽がはじまり歌が流れる。どん底にいる私のところに光がさして、景色が見える。夜をうつくしいと思う。いっしょに笑っただれかをたいせつだと思う。冬の光が金色だと知る。歌われているすべて、私の体験ではないのに、この世界が生きるにあたいするうつくしい世界だということを、体感する。
私は音楽にくわしいわけではありません。聴く音楽もかたよっているし、流行にも疎いです。それでも信じています。すべての音楽には、それを必要とする人を救う力があると。
音楽でなくても、私たちを救ってくれるものはあると思います。そうしたものと出会うということは、けっして生きやすいとはいえないこの世界に、私たちだけの居場所を作るようなことなのだと思います。
自分がなぜここに生まれてきて、なぜ生きているのかわからない人たちが、あるとき、生きるにあたいする世界と出会う。これはそんな物語です。
今まで私を幾度も救ってきてくれた有形無形のものにたいする感謝の気持ちであり、恋文のようなものです。
読みながら、あなたの世界を変えた何かに思いを馳せてもらえたら、とてもうれしく思います。
――角田光代

【著者紹介】
角田光代(カクタミツヨ)
1967年神奈川県生まれ。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、2005年『対岸の彼女』で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年『八日目の蟬』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、2021年『源氏物語』(全三巻)訳で読売文学賞(研究・翻訳賞)、2025年『方舟を燃やす』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『キッドナップ・ツアー』『くまちゃん』『笹の舟で海をわたる』『坂の途中の家』『タラント』『神さまショッピング』他、エッセイなど多数。2020年より直木賞の選考委員を務める。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

音楽に救われた母と子の物語。
子の青春小説であり母の恋愛小説でした。
音楽っていいよね。素晴らしい友達がいるのもいいよね。
でも母親が当初、父親を偽って子供に教えるのはどうかと思いました。写真を見た子供に「パパとママが大好きなミュージシャンだよ」って正直に言えば良かったのに…(^_^;)



0
2026年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初は少年たちのバンド青春物語かと思って読み始めたが、少年や母親の過去が明かされるにつれ、深みのある人間ドラマへと発展していく作品だった。物語は少年視点から、次第に母親視点へと切り替わっていく。


少年は優秀なバンドメンバーと自分を比べ、「自分には何の才能がない」と心を閉ざす。だが彼が闇を抱えていたように、母親もまた暗い過去を抱えていた。少年の父親となる男性に救われたが、その父親は他人を助けて、不慮の事故で命を落としていた。

終盤、母親が、父親の真実を語るシーンに胸を打たれた。他人を助けて死んだ父親について、「自己中心に生きて欲しかった、でもそれが父親なんだ」と伝える。何よりも自分自身の人生や幸せを大切にしてほしい——その切実な願いに深く感情移入した。

最後、少年は葛藤を越え「毎日二度と同じ日はない」という尊さに気づき、仲間と歌を歌って前へ進んでいく。

私にも二人の子供がいる。彼らにも二度とない人生を大切に、好きなことを見つけてキラキラ生きていってほしい。そう望むなら、親である自分自身が「口だけ」にならず、日々を充実して生きる背中を見せねばならない。今の自分に深く刺さる一冊だった。

0
2026年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

母くすかと息子あらたの二人の視点で物語は進んでいく。
母くすかの章では、親からもらった過酷な運命に支配されるのではなく、自分で選んだ音楽と、自分で生んだあらたへの愛によって、自分の人生を新しく(あたらしい歌として)歌い直すこと、生きることが描かれる。
息子あらたの章では、シングルマザーの家庭で「母ひとり子ひとり」として育つあらた。彼は、母親の持つ切実さや、どこか影のある過去をうっすらと感じつつも、健やかに、そして力強く成長していく。高校3年生の文化祭でのバンド演奏というクライマックスに向かう中で描かれる、匠人や陽菜との瑞々しい友情。それは、大人たちの過酷な現実とは切り離された、「彼自身の人生の輝き」だ。
あらたの視点から見る主題は、「親の運命に縛られることなく、自分の仲間を見つけ、自分の音(歌)をかき鳴らして世界と繋がっていく、若者の自立と希望」といえる。
ニュース事件が差し込まれることで、フィクションでありながら「私たちの地続きの物語」として深く心に刺さる。どれほど不条理な運命にあっても、くすかとあらたがそれぞれの場所で「強く生きる」姿は、まさに普遍的な応援歌であり、読者に「人間は捨てたものじゃない」と思わせてくれる、圧倒的な肯定感に満ちている。
「消防士。先生。カウンセラー。思想家。保護犬保護猫の世話係。スパーマン⋯」この件で涙が止まらくなった。今の「推し活」のような消費されるエンタメではなく、魂の救済としての音楽がそこに…

0
2026年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

(良)シングルマザーと息子、不在の父親は有名なバンドマンだったのか、電車事故で亡くなった痴漢だったのか、はたまた冤罪だったのか。人を助けるのも自分の安全を確保しなさい。プロだってそうするでしょう。母、父、息子がみんなロックで繋がってる。父の痴漢冤罪を証明した母の強さに反抗期の息子も感涙。角田光代さんの作品はとても久しぶりに読みました。『八日目の蝉』が印象的です。

0
2026年05月15日

「小説」ランキング