あらすじ
あらすじ紹介不能の衝撃作「漸然 山脈」。秋刀魚絶滅後の凄惨なディストピア「白笑疑」。母の遺品の櫛笄の値がどんどんつり上がり……人間の本性を暴き出す掌編「花魁櫛」。世界中を震撼させたコロナ禍の拡がりゆく猛威を写し取った表題作。父子の心の交流に感涙を禁じ得ない名編「川のほとり」等、八十有余年にわたって作家の大脳皮質に蓄積した言葉と感情と記憶と思索が暴走横溢する傑作14編。(解説・小川哲)
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Posted by ブクログ
巨匠が小説の枠組みを破砕する。自由過ぎる文体で綴られた、超・私小説たちを中心に編まれている。小説としてまともな構造を成しているのは「花魁櫛」だけだろう。辛うじて「川のほとり」もそうかもしれない。あらすじ説明不能な作品が殆どで、高度な語彙力と言葉遊びの洪水に晒されて溺れかけた。
「漸然山脈」から「川のほとり」まで、一貫している要素は「死」なのだと思う。
老いて尚、文壇の第一線で活躍し続ける巨匠の考える「死」が散りばめられている。
「一九五五年二十歳」で人生という名の本の白紙のページを埋める、未来への希望を描きつつ、人生何が起こるか分からないと突きつける印象的なラストも「死」と結びつく。
心境の全ては理解出来ていないし、大作家と同じ境地に至ろうというおこがましい考えも無いけれど、もっと歳を取った時に共感出来るようになるかもしれないと思った。
これまでの人生も、コロナ禍も、息子さんの死の悲しみも、全てジャックポット(大当たり)と捉え、文学として昇華させてしまう大作家の業を目の当たりにした瞬間、なんとも言えない余韻が漂う。涙が滲んだ。