あらすじ
19世紀末の英国に颯爽と登場したハーバート・ジョージ・ウェルズこそは、現代SFの礎を築いた巨人であり、卓越した文明批評家であった。後世に多大な影響を及ぼした作品の中から5編を選び、雑誌掲載時のイラストを再録する。直径6メートルの鋼球にひとり乗り込み、人類で初めて8000メートルの海底を目指す男──表題作ほか、細菌研究者の身に降りかかった事件「盗まれた細菌」、とあるクラブ宿舎に現れたものの困惑するばかりの奇妙な幽霊「新米幽霊の話」、戦車の登場に10年以上先んじて書かれた戦争小説「陸の甲鉄艦」、5万年前の人類が送った過酷な日々を雄渾の筆で描く本邦初訳作「石器時代の物語」など。/【目次】盗まれた細菌/深海潜航/石器時代の物語/新米幽霊の話/陸の甲鉄艦/訳者あとがき
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Posted by ブクログ
本邦初訳の「石器時代の物語」が収録されているし、「陸の甲鉄艦」が文庫で読めるのもうれしい。いわゆる傑作ではなく大衆小説家としてのウェルズが感じられる作品集だった。「深海潜航」はクトゥルフものとの同時代性も語れそう。
Posted by ブクログ
本書収録の「陸の甲鉄艦」が強烈。戦車が登場する10年以上前に書かれた話で、ウェルズの先見性を評価するときに話題になる短編。
しかし本短編は先見性以上に文明人とされる西洋文明の驕り、陳腐さを激烈に批判しているところに価値がある。
敵方の最新兵器として登場する戦車(機械)に対して、当初は「人間対機械」と敵方を戦車に操られた人間として批判する書き振りであったジャーナリストの主人公が、味方の屈強な兵士が戦車を田舎者が扱う鉄器と見下したところで、「人間対鉄器」とかえた。西洋文明を代表する味方の発言から知性の死滅を感じ、敵方を人間としてとらえ西洋文明人を人間から鉄器にすり替えるウェルズのブラックユーモア。傑作。