あらすじ
19世紀末の英国に颯爽と登場したハーバート・ジョージ・ウェルズこそは、現代SFの礎を築いた巨人であり、また卓越した文明批評家であった。20世紀になって陸続と書かれる数多のSFのテーマとアイデアのほとんどは、彼によって創出されたといっても過言ではない。本集には、80万年未来の地球と人類の衝撃的な姿を描破し、第1作ながら後世に多大な影響を及ぼした時間旅行譚「タイム・マシン」をはじめとして、「塀についたドア」「奇跡を起こせる男」「水晶の卵」など、必読の傑作6編を収めた。/【目次】塀についたドア/奇跡を起こせる男/ダイヤモンド製造家/イーピヨルニスの島/水晶の卵/タイム・マシン/訳者あとがき
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Posted by ブクログ
SFの巨匠、H•G•ウェルズの短編集。6作品あって、はじめに短編が5つあり、最後に中編の表題「タイム・マシン」という構成。
H•G•ウェルズは前々から読んでみたかった。新潮文庫などでもお馴染みの影山徹の装画は素晴らしくカッコ良いので揃えたくなる。とりあえず短編から読もうと思って本書を買ったまま、しばらく経ってしまった。こんなに面白いなら早く読んだら良かった。
SFというと固いと思っていたが、本書の短編はどちらかというとホラーや怪奇譚の様相だ。書かれた時代もあるのだろうけど、今のSFのような難しい理論などは出てこない。「世にも奇妙な物語」などに近い。
収録されている物語は全て、主人公が当事者から聞いた話の体で進む。そして摩訶不思議な体験談が語られたのち、真実は闇の中、今はどうなったか分からないまま終わる。この「終わらせ方」がとても巧妙で、「まだどこかにあるのではないか」と読者に強烈な余韻を植え付けていく。世にも奇妙な系の話は沢山あるけれど、奇抜なアイデアよりも終わらせ方が大事なのだと勉強になった。これがストーリー・テラーか。
本書の前半分に短編が5作品あって、残りの半分が表題の『タイム・マシン』となっている。これが元祖タイムマシンなのかと感慨深い。日本でもドラえもんや星新一など、身近なSFのアイコンとして愛されているが、基本は最初から完成している。時間移動をタイム・スリップと言うのも、本書で四次元(時間)に沿って滑らせると書いており、今でもそのまま使われているのも驚く。
着いた時間が80万年後というのも壮大な話だ。ちょっと先の未来にしてしまうとすぐに古くなってしまうので、極端にすることが必要だったのだと思う。
人類が進化して化け物じみているのは、現代の感覚で読むと子供っぽい気もするが、マンガの世界ではずっと使われているように思う。読みながら楳図かずおの『漂流教室』を思い出した。
100年以上前の作品だけれど、どれも本当によく出来ていて感心する。もちろんアイデアも素晴らしいが、ストーリーも捻りが効いていて、今読んでもワクワクさせられた。
難しいことは言わないし、エンターテイメントに徹した作家性が表れていて、人を楽しませるのが好きな人柄だったのだろうな。