あらすじ
「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」――愛するべき真の相手はどこにいるのだろう?「恋愛の本質」に果敢に挑み、描き上げた“もっとも純粋な”恋愛小説。第142回直木賞受賞作!
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Posted by ブクログ
東海さんがすごく好きです。明夫が感じた東海さんのいい香りを想像してはときめきました。
東海さんが明夫にとって、ほかならぬ人である。その証拠に彼だけが感じた香りがあるって、すごく素敵だと思いました!
Posted by ブクログ
いつもは解説は飛ばしてしまう私だけど、今回は解説まで含めて、とても面白い小説に出会えたと思う。
『見えない確かなもの』から愛を感じとる主人公たちには共感しかなかった。
私もそれをどんなに時が経っても大切にしたい。
匂い。初めて。
大人になればばかばかしく感じるようなものを、私たちはこの先社会に翻弄されずどれだけ大切にできるだろうか。
Posted by ブクログ
「ほかならぬ人へ」「かけがえのない人へ」の2つの物語。「ほかならぬ人へ」主人公は明生(男)、男性視点からの純粋な恋愛小説。
妻であるなずなの裏切りによって彼の人生は大きく変化しする。
だが、その結果として彼は運命の人と短くも幸せな時間を過ごす。
兄弟や幼馴染も含め、多くの人の心と心がすれ違う中、明生が見つけた運命の人である証拠(徴)は素敵な匂いであった。
儚く、切ない物語。
「かけがえのない人へ」結婚を控えたみはる(女)の物語。
ほかならぬ人へがあまりにも切ない物語であったが、本作はその対局にあるような恋愛物語。
結婚相手の中に自分を見つけられず、かつての恋人である黒木との関係を続けていく。
ようやく自分にとっての黒木の存在に気づいたみはるが結婚式前夜に黒木を訪ねるも、そこに彼はすでにいない。
読んでいる間は気づかなかったが、ここに書き込みながら本作の中に込められていた切なさにこのタイミングで気づいた。
説明
内容(「BOOK」データベースより)
「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」…妻のなずなに裏切られ、失意のうちにいた明生。半ば自暴自棄の彼はふと、ある女性が発していた不思議な“徴”に気づき、徐々に惹かれていく…。様々な愛のかたちとその本質を描いて第一四二回直木賞を受賞した、もっとも純粋な恋愛小説。
Posted by ブクログ
『ほかならぬ人』、『かけがえのない人』の二編に共通するのは衝動とでも言える、心の底から湧き上がる感情のように思えた。この話での衝動は一時的なものではなく、むしろ積み上げた正確な気持ちであったように感じた。なずな、とみはるは普通の人が躊躇してしまう衝動に身を任せるということをやった。彼女たちのその後の結果がどうであれ、爽快な話だった。
Posted by ブクログ
表題「ほかならぬ人へ」と、「かけがえのない人へ」の、二編の小説。
「ほかならぬ人へ」
最初は、明生の妻なずなが酷い女のように感じたが、そうとも言いきれない。
仕方がないこと。人を好きになるのは、理屈じゃないから。
自分にとってベストだと思っていた相手は、実はそうではなかった。勘違いだった。
ただそれだけのこと。
匂いが好きだと思う人とは相性が良いと言うけれど、それは間違いないと思う。
「かけがえのない人へ」
みはるが黒木から離れられないのも、わかる。
黒木は結婚してくれそうもないから、みはるは真っ当なエリートと婚約したわけだけど、黒木といる時の自分の方が自分らしくいられたんだろうな、きっと。
黒木は黒木で、みはるの元から立ち去ったのは彼なりの優しさだったんだと思う。
あと、真面目で几帳面な黒木が一切避妊をしなかったのは、生殖能力が無いってことなのかなと。
私の思う黒木と、全く避妊しない黒木が、なんだかちぐはぐに思えて違和感を感じたのだけど、考えすぎかな。
Posted by ブクログ
白石一文好きだなって改めて思う。自分が美しいと思う考え方ではないけど、この人が書くと綺麗だと感じる。
特に前編の方が好き。運命の人って言い換えがこんなに綺麗になるのが良いかもって思う。
Posted by ブクログ
*ネタバレ
気に入ったセリフ抜粋
▼「とにかく私としては一度結婚というキャリアを消化しておきたいの。ー失敗したところで結婚という経験をすることができた、というのが大きいのよ。自分でもいやになるような、この訳の分からない結婚願望のようなものを私は私のこの身体のなかからはやく追い払いたいの」
まさに今の私の心境が言い当てられたようでびっくりした。
本当に結婚したいかと言われれば分からない。
結婚のメリットが分からない。
でも1人で生きていく覚悟はない。
だから、自分の人生経験において、結婚というキャリアを消化しておきたい。
▼「人間の人生は、死ぬ前最後の1日でもいいから、そういうベストを見つけられたら成功なんだよ」
▼「ベストの相手が見つかった時は、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」
この小説で「ベスト」は何かを教えてくれる。
この小説の主人公たちは「匂い」と「初めて」だったのだ。
▼「宇津木、生きていたらいろいろあるよ。でもね、何年か経ったらどんなことでも大したことじゃなかったって分かるから。人間はさ、そうやって毎回自分に裏切られながら生きていくしかないんだよ」
思い出したくない過去がある。
“どんなことでも大したことじゃなかったって分かる”
時がたった今、本当にその通りだと思う。
このセリフのおかげで励まされた。
個人的に、思い切り泣いたとか、感動して心揺さぶられたとか、そういう話ではなかった。
ただ、上記に挙げたように、小説の会話の中でハッとさせられるような言葉が刺さった。
しっかり心に残るような、登場人物からのそんな言葉のパワーが感じられた。