あらすじ
建築不況、食品偽装、市場混乱、メディアスクラム、裁判員制度……。日本停滞の背景には「法令遵守」からさらに進む、なんでも「遵守」の害があった! コンプライアンスの第一人者が問題を鋭く指摘、解決策を示す。(講談社現代新書)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
自分の業界、専門でも「思考停止」だと思うことがままある。
欧米との比較論で単純に批判してきたが、
本書を改めて読んでみると、日本社会全体に巣食う病理であることが分かる。
・食品「偽装」「隠蔽」
・経済司法の思考停止
・司法への市民参加(裁判員制度)の思考停止
・厚生年金「改ざん」の思考停止
・マスメディア
Posted by ブクログ
”思考停止”とは、一体何が止まっているのか。
まさに、考えることが止まっている。
与えられた情報や、指示された事を、全く無批判に受け入れ、従い、行動している。
誰か(どこの誰かも知らない)が、テレビやネットを通じて垂れ流している情報が、あたかも真実であり、重要であるかのように伝えられ、信じ込まされている。
それらに対して、何らかの疑問や、対抗する意見を持ち得ない事の危うさ。
”思考停止”状態にある自分に気づかせてくれる一冊だった。
.
著者の関わってきた具体的な事例を交え、そこに潜む矛盾や欺瞞、意図的な策謀を含めた解説が、それらの報道を見て、聞いて、受け止めてきた自分に突き刺さる。
自分もまた、”思考停止”状態にあったことに気づく。
気づかされてみると、それらを含めて、今起こっていることに対する視点も、思考も変わってくる。
それは、これから起こるであろう事にも、違った対応を促すことになると思う。
出版されたのは、2009年と一昔以上前なのだが、昨今のこの国の状況を見るに、決して古い内容とは思えない。
むしろ、この本の指摘している問題は、深刻化している。
となれば、是非とも、今、多くの人に読んでもらいたい一冊である。
Posted by ブクログ
日本人が、本質、大局を見ずマスコミの指し示す方向に突っ走り、社会が悪い方へ悪い方へ行っていることを指摘する。社会のその性向は、太平洋開戦から何も進歩がないと。
東京地検特捜部を経験した著者は、日本の裁判所、検察が、恐ろしい状態にあり、経済状態にも本質的な悪影響を及ぼしていることを指摘する。司法が閉じた世界で、他の分野の専門家を導き入れることもなく、他国とは比較できない悪制度の裁判員制度を導き入れ、その問題点を指摘する道も封じていることも。
不二家「事件」、伊藤ハム「事件」、実情を伝えようとしないマスコミによって作られた虚像を信じこまされていたようだ、と感じることができた。
不二家が TBS の捏造報道によって陥れられたことは、証明できていると言ってよさそうだ。
伊藤ハムは、柏市保健所の誤った条例解釈により、本質に関係ない事実を公表させられ、マスコミによってバッシングを受けた経緯も、よくわかった。
日本をまともな方向に導くためには、たとえば伊藤ハムが受けた行政指導の違法性について国家賠償請求訴訟を提起する道があるということも指摘している。
四年前の本、残念ながらその時点から改善されたことは何もないようだが、著者には注目して行きたい。
Posted by ブクログ
他者のつくった言葉やルールを「遵守」することが大切だ、とする今の教育の危険性を指摘する本。最近の「実学」志向の流れは、「遵守」の危険性という考えが世の中に浸透してきたからうまれたものなのかな…と思った。
Posted by ブクログ
単に揚げ足を取るだけのようなことをもって「コンプライアンス」を論じる風潮に対して明確に否定しています。
思考停止とは非常に的を得た表現だと思います。
なぜ法令が守れないのか、守っていない方を単なる法令違反なのに重罪犯罪者の如く一方的な論調で「断罪」していくさま、またその行動を批判することになく受け入れる姿はまさに「思考停止」だと思います。
Posted by ブクログ
日本社会に蔓延る「法令遵守」そのものの自己目的化、絶対化の影響について論じた本。当書では不二家など食品会社の不祥事、耐震偽装、ライブドア事件などの経済司法、裁判員制度、社会保険庁の「宙に浮いた年金記録」、マスメディアの報道問題など多岐に渡ってこの問題を扱っている。
全体的に言えるのは、「法令違反だから」という理由で猛烈にバッシングしておきながら、真相が明らかになる頃には皆無関心を決め込む、バッシングのみに関心が集中して本来の問題が忘れられるという傾向が日本に見られることである。
それはマンションの耐震偽装については、1981年の建築基準法改正前に立てられた物件の中には、偽装物件より耐震性の低い物件が多くあったのに偽装叩きのみが盛り上がったことが例として挙げられる。
また、裁判員制度は官・民(日弁連)の間でろくに議論されないうちに「司法に『市民感覚』を採り入れないより採り入れた方がいい」という理由で導入された。このように著者は思考停止的に事件が国民に受容されている問題点を的確に抉り出す。
最も根深いと思ったのはマスメディアの問題。納豆ダイエット捏造による関西テレビの「あるある大事典」事件、みのもんた氏が不二家の単なる形式的会社基準違反(それでも社会的悪影響は大きいが)を執拗に(TBSでは1か月間、1日平均15分かけてこの事件を取り上げる)バッシングして経営困難に陥らせた「朝ズバッ」事件などが挙げられている。
著者はこうした事件が起こる根底に、単なる放送事業の過剰な営利追求姿勢の他にも、マスメディアが自らの虚偽を認めることが隠蔽するままよりも評価されず、不利益になることを指摘する。特に「あるある」の場合は捏造そのものは追及されたのですが、それだけという感じが以前からしたので、なるほどと思った。
このように「法令遵守」そのものが水戸黄門の印籠の如く扱われる日本の風潮について、著者は日本人にとって法令は「伝家の宝刀」であると説明(アメリカ人にとっての法令は「文化包丁」)しています。日本では法令が非日常的であり、社会の実態と法令の間にズレが生じているにも関わらず、単なる崇拝の対象として扱われる(アメリカでは、法令は日常的であり、社会的要請に答えるための道具、手段)。
この状態から脱却するためには、法令の趣旨、目的、基本的解釈を各々が自分の頭で理解し、「印籠」に頭を上げて直視することが求められる。そのようにして法令を媒介として、上命下服ではなくルールとして互いに尊重する関係を築いていくべきであることを著者は主張する。
単にルールに従うことを有り難がり、はみ出し者を親の仇の如くバッシングし、後は野となれ山となれという態度を決め込む日本社会の側面を炙り出した素晴らしい一冊だと思う。
ルールに従うことでマゾヒズム、はみ出し者を叩くことでサディズムを満たしているということだろうか。マスメディアの報道のやり方や、ネット上でのニュースの反応を見ていると、本書の内容に思い当たる節は枚挙に暇がない。
Posted by ブクログ
法規の試験で建築基準法はやったけど。あの手のものを大量に覚えることを必死にやるのは。。う〜ん。なんだかなぁ。でも思考停止はまずい。脳みそついてんだから考えないとね。
Posted by ブクログ
2009年刊行の本なので取り上げられている事例は伊藤ハム、不二家、耐震強度偽装、村上ファンド、ブルドックソース、秋田連続自動殺害事件、厚生年金記録改ざん問題など、やや古い話題ですが、これらの問題の根底にある状況に対する著者の指摘は昨今の検査不正・認証不正問題などにもそのまま当てはまる気がします。
「法令」は例えるならアメリカ社会では普段使いの「文化包丁」であるのに対して日本社会では「伝家の宝刀」(最終手段)であったところにアメリカ流に何でもかんでも「遵守」という姿勢が持ち込まれたために社会が思考停止状態になってしまっているという著者の例えには首肯せざるを得ません…。
Posted by ブクログ
遵守の対象は法令。日本では法令は非日常の世界のためのものであり、人々の生活、日常のトラブルや揉め事は法令ではなく社会的規範や倫理に基づいて解決してきた。
ところが遵守の対象が社会的規範にまで及ぶようになり、これが遵守されないと「隠蔽」「偽装」「改ざん」「捏造」というレッテルを貼る。日本らしいといえばそれまでだが、直していこうという動きは必要だろう。
Posted by ブクログ
2009年の本だが現代でも通用する。法令は遵守することが目的ではなく法令の内容自体を柔軟に変化させ実態との乖離を防ぐべきだ。日本国憲法が一度も改正されていないこともおかしい。社会現象も自分の頭で考えるべきだ。偽装、隠蔽、捏造、改ざん等言われているが実際は法律が実態と合わないこともよくある。ライブドア、粉飾、保険料滞納、建築基準法、これからは法令を使いこなしていきたい。
Posted by ブクログ
先日、社内会議の席で「思考停止」というフレーズを
連発するヒトがいて、なかなか面白い表現をするなぁ
と思っていたところ、本書を書店で見つけた。
そこで、すかさず購入。
食品企業の不祥事や、年金記録の改ざん問題、裁判員
制度などを取り上げて、「法令遵守」という「思考停止」
に警笛を鳴らしている一冊。
不二家の信頼回復対策会議の議長を務めた郷原さんの
論理展開は実に明晰で、説得力も十分。
(不二家のところは少し甘い気もするが。)
法曹界の方には必読の書、と言ってもいいほどの内容と
思う。
ただ、マスメディアを斬った章はやや物足りなかった。
本書で取り上げられている「思考停止」はどれも罪は
深いが、中でももっとも罪深いと思うのはマスメディア
だから。
Posted by ブクログ
"多くの人に読んでもらいたい本の一つだと感じた。たまたま私は、伊藤ハムの事件について、従業員の声も聞けたし、柏市の保健所の立場の声も聞けた。概ね本書に記載の通りである。中核市になった柏市が保健所を自主運営する最初の仕事が伊藤ハムの水質問題になった。本書に記載の通り、見誤った対応のすえ、何ら食品に問題がない商品の回収をせざるを得なくなった企業の風評被害は甚大であり、従業員たちの苦労も聞いているだけに、正しい報道をすることのないマスコミには憤りを感じる。
同様に、本書のTBSと日テレの対応の違いとその後の処分の違いに、また怒りすら感じてきてしまう。
いずれにしろ、風説に惑わされずにしっかり実態を把握できる教養なり、感覚を持ちたいものである。"
Posted by ブクログ
「はじめに」を読んで、法令遵守の何がいけないのかと思ったが、読み進めていくうちに著者の考えが理解できた。マスゴミの曲解による煽情的な報道、それに迎合する検察、裁判員制度の欠陥、法科大学院の問題など、著者の言うとおりだ。
しかし残念ながら事態は何一つ良い方向に変わっていない。昨今の食品偽装問題でもシャケ弁をトラウト弁に言い換えるとか、大の大人がくだらない議論をしているのを見ると心底がっかりする。司法当局の認識の通り、90%以上の日本人は馬鹿か幼稚かのいずれかだ。これは間違いない。低俗なTVの報道を真実と思い込み、納豆が体にいいと聞けば納豆が棚から消え、バナナを食べれば痩せると聞けばスーパーでバナナを奪い合う。まさに思考停止だ。
もう5年ほどTVを見るのをやめているが、この世からTVが無くなっても結局ほかの何かに騙されるだけで、日本人の馬鹿と幼稚はずっと変わらないんだろうな、と思う。
Posted by ブクログ
コンプライアンスについて、誤った適用の事例が多く集められている。
不二家の食品偽装や裁判員制度導入の問題など、著者が直接関わった事例も多く、内容に説得力がある。
マスコミの一方的な報道、それによって作られるムードによって、社会がまさに「思考停止」しているとの指摘は、決して他人事ではない。
コンプラ関連として、合わせて読んでみるべき1冊。
Posted by ブクログ
情報弱者とか強者とかいうけど、真実を理解するには相当ニュースを読み込んで、客観性をもって考えないと強者にはなれないなと感じた。行き過ぎたコンプライアンスに陥らないために、マスコミもうまく使いこなせないと墓穴をほるのでしょうね。今まで「不二家のケーキは買わないぞ」と思ってましたが、考えを改めます<(_ _)>
Posted by ブクログ
法令遵守の観点でしか物事を考えない、その背景、実態には目を向けずに単純化され、思考停止社会に陥っている。マスコミには視聴率のためなら事実を曲げて報道し、間違っていても逃げ続ける。マスコミの視聴者受けするための単純化優先の論理が社会の思考停止を助長する。
これまでの報道、一般に認識されてきた事実はマスコミの都合、舛添元厚労相の無責任な発言などに起因することが指摘されている。
普段感じるマスコミのレベルの低さを改めて認識させるものだか、その改善策は今ひとつハッキリしたものがなく、問題点指摘にとどまっている感がある。
Posted by ブクログ
法令を守ることだけを主眼としてしまって、その奥にある真の目的を守れなくなっている現状を、元検事の視点から解き明かした本。
具体例としては、食料品の偽装、建築の構造計算、経済司法の問題、裁判員制度の問題、厚生年金の問題、マスメディアの問題点を挙げている。
思考停止になることの問題点を考えるならば、ぜひ一読すべき本だと思う。
Posted by ブクログ
思考停止社会か。本書に出てくる、事件は当時メディアでよく騒がれていた。年金の問題、食品偽装、livedoor事件等。自分も思考停止に陥っていて、「ああ、また悪いことしているよ」と思っていた。
それは何故か。今、出た答えは、固定観念が強くて知ろうとしなかったことがデカイのかも。
でも、そこから知ったきっかけは何だったんだろう。うーん。
Posted by ブクログ
法令遵守の御旗の下で繰り返されるマスコミのバッシング、マスコミ自体の虚偽報道、その他。
年金改ざんの問題の実態をきくと、じゃあどうすればいいのか、という気になる。役人が良心に基づき良かれと思ってやっていることなので、目をつぶるべきなのか。その前提で着服、使い込みをしたのがそもそものきっかけではなかったのか。
賢者による善政が敷かれたのは、奴隷によって市民が労働から解放されていた古代ギリシャぐらいだろう。不信感の充満した現在の日本で、ガス抜きバッシングが頻発するのは当然とも思える。
Posted by ブクログ
耐震偽装、賞味期限といった世間を賑わせた社会問題から、「法令遵守」の皮をかぶった「思考停止」に対する警鐘を鳴らす。実例が豊富でわかりやすい。思考停止は法律に限らず、学校や企業などどこでも起こりうることだと私は思う。問題なのは、「思考停止」自体ではなく、「思考停止」を自覚できているかということな気がする。
Posted by ブクログ
事実を不公平なく伝えられないマスメディアへの批判
●不二家や伊東ハム・姉歯建築・消えた年金問題の真相 マスコミの報道との齟齬
また「虚偽を正したものへのあまりに厳しい制裁」「うやむやなままにしておいた方が非難されない」という社会の有り様に言及。
社会の風潮に多大な影響を与えるマスコミの問題点など。
マスコミ(テレビ番組)の報道内容を批判しているが、すべての問題は「法」の問題に帰結する。
(郷原さんは法律家なので。)
社会問題とマスコミの関わりについて述べながら、法の望ましいあり方を論じています。
日本の法令は実際の生活になじんでいない。徒に権力を振り回す法ではなく、より国民の生活を支える法を作ること、また国民と法との繋がりを助ける法律家が望ましい。法曹界も改善が必要。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。
相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。
[ 目次 ]
第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章 思考停止するマスメディア
第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
「遵守」に蝕まれる日本、という副題の通り、形式的な法令遵守に囚われすぎて、本質を見誤っているのではないか、という内容。扱われている話題としては、不二家、伊藤ハムの偽装事件、耐震強度偽装事件、村上ファンド、ライブドア事件、裁判員制度、年金記録改ざん問題がある。日本の法律制度の根本思想として、「普通の人はバカか幼稚だ」ということがあるが、これはこれでうまく働いていたのだという。世の中の変化に伴い、法が実態と合わなくなることに対してどう対処すべきか。法を柔軟に変更しようというのが米国のスタイルで、日本は慣行や話し合いという形で問題解決を行なってきた。刑事事件のような特殊な事件、あるいは民事裁判に持ち込まれるような普通の人があまり起こさない事件、社会の周辺部分のみが法の対象となってきた。が、近年では、法令遵守の名のもとに、社会の中央部分にも法が入り込んできたために、閉塞感が強まっているのだという。全く卓見で、著者のいう通りだと思うが、これは常識がある人にだけ通用する理論なのかもしれない。一部の非常識な人たちや確信犯的に利益を追求する人たちが、社会の中心付近で、プレゼンスを増していることこそが、法の規制が日常に及ばざるをえなくなった原因ではないかとも思う。色々と考えさせられるところの多い本ではある。
Posted by ブクログ
法令遵守が徹底された今は、問題の中身より、偽装、隠ぺい、改ざん、捏造は一切弁解ができない。
背景や原因は問われず、法令に違反したかどうかだけが問題とされる=本当に正しいか、思考が停止している。
食の偽装、隠ぺい
不二家の問題は、賞味期限と消費期限の問題
ローソンの焼き鯖寿司回収、賞味期限切れの原料の使用を公表して自主回収した
伊藤ハムの自主回収、工場内の地下水の水質が原因
ステンレス鋼管データ捏造問題=全数検査をすることになっていたが、していなかった。抜き取り検査でいいことにしたが、もともと検査していないのでその対応ができない。そもそも検査は不要だった。
経済司法の貧困=司法が開かれていない結果
村上ファンド事件=何がインサイダーの重要事実にあたるか、が問題。
ライブドア事件で、金商法の推定規定でライブドアに賠償させようとした。
裁判員制度をやめようという声が出ないのは法令遵守が立はだかるから。
日本の裁判員制度は、外国と比べても特異なもの。
被告人に選択権がない。事実認定だけでなく量刑も対象にしている。職業裁判官にも議決権が与えられる。
日弁連はアメリカ型の陪審員制度、裁判所はヨーロッパ型の参審員制度にとどめたい、その妥協の産物。ヨーロッパはすでに死刑を廃止している国が多い。印象や感覚で死刑の適用を判断する民衆裁判になりやすい。
厚生年金の記録改ざん事件
事業主の了解のもとに事業主の報酬を遡及して下げることは悪いことか。実態を考えれば正しい手法ではないか。
保険料を滞納していても年金が支払われる仕組み、がいけない。
国民年金不正免除問題
申請がないのに免除にして、納付率を上げた。
マスメディアの責任
朝ズバの顔無し証言で、不二家の工場を叩いた。不二家が山﨑製パンの傘下になる一要因。
法令遵守と規範遵守
日本の法律は緻密だが、実際に適用するのは周辺分野だけ。実際は慣例や話し合いが問題解決手段。
アメリカでは、法令が普通の市民間の解決手段として機能している。文化包丁と伝家の宝刀の違い。
日本では法令遵守そのものが目的となっている。
遵守が法令だけでなく、コンプライアンスにも要求される。適用範囲が拡大される。日本では社会的規範にまで遵守が要求されている。
水戸黄門の印籠にひれ伏すのではなく、どういう意味なのかを考える社会が必要。
Posted by ブクログ
新書を読むのは久しぶり!
2000年代に話題になった食の偽装/耐震強度偽装などのトピックをテーマに、報道によって拡張された言葉と実際の数字の間にあるギャップを検証することで、どれだけ人が情報を鵜呑みにしてしまうかということを前半で説いている。後半はメディアの不完全性についてが中心だが、大衆を「育てる」メディアの在り方まで説けたらなおよかった。時代は変化しているのだから過去に作られた「法令」の名のもとに、検討を放棄するのでなく、異なる立場の人々がそれぞれ検討を重ね納得のいく社会規範を形成していくことが必要と結論付けている。
最後の結論は同意。
でも、やっぱり食品も建築偽装も、一個曖昧にするとじゃあどこまでいいの?ってなるから、ある程度厳しく罰せられることは必要で…
メディアは過熱し過ぎでも、注目されないと民意形成のための議論の対象にもならないからね。
問題は、どの番組もほぼ横並びで同じことを言ってしまうことね。でもそれが正しかったかというと微妙だと。
そして311以降メディアはある面では改善されて、ある面では改悪されたと思うのです。ということを私は語りたい。
Posted by ブクログ
情報を見極める目を養う必要がある。
iPS細胞の臨床応用問題の新聞報道もそうであるが、
報道されると、ありえないことも、真実だと思わされてしまう。
Posted by ブクログ
「思考停止社会」。特に、現代日本の問題点を象徴する言葉だと思う。
思考停止に陥っていることさえ認識できず、ただただ一方的に流される情報に受身。本質を隠す隠蔽体質、それに対して懐疑心を持続するパワーに欠け、見抜く手段さえ麻痺してしまった国民。
法律も時代に即応できるような組織体制ではなく、事なかれ主義。踏襲社会が歪みを生む悪循環システムのようだ。
Posted by ブクログ
食の安全の問題がまたとりあげられるようになったのでこの本を手に取ってみた。
世間では食中毒事件と実際に食の安全を脅かす出来事が起きた。その被害が起きてしまったという点ではこの本に書かれている食の問題とは違うかもしれない。
ただこの本にも書かれている重要なこととは本当にそれが消費者にとって利益になっているのか?ということである。隠蔽=悪、という図式がなりたっていては真実は見えてこない。公にしなかったのはそれが企業にとって利益が生じ、消費者にとって不利益が生じるからだったのだろうか。安全に関する情報をすべて提示していればそれは消費者にとって大きな誤解を生じさせ得ない。
とかくそれが本当に消費者の利益になっているのか?この視点を忘れてはいけない。