【感想・ネタバレ】薄闇シルエットのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『「結婚してやる。ちゃんとしてやんなきゃな」と恋人に得意げに言われ、ハナは「なんかつまんねえ」と反発する。共同経営する下北沢の古着屋では、ポリシーを曲げて売り上げを増やそうとする親友と対立し、バイト同然の立場に。結婚、金儲けといった「ありきたりの幸せ」は信じにくいが、自分だけの何かも見つからず、もう37歳。ハナは、そんな自分に苛立ち、戸惑うが…。ひたむきに生きる女性の心情を鮮やかに描く傑作長編。』

同棲していたタケダ君に飲み会の席でみんなに「結婚してやる。ちゃんとしてやんなきゃな」と宣言され、しらけるハナ。結局破局する。小さい時母親がなんでも手作りの人で、ケーキも手作りだったことを思いだす。

『誕生日に母が役ケーキは、決してまずかったわけではない。どちらかといえばおいしい部類だった。けれどそれはあくまで素人の作るおいしいケーキでしかなった。ケーキ職人のケーキを味わったあとで、母の手作りケーキはいかにも貧乏くさくて、あか抜けず、古典的でマンネリ化していた。けれど母は、自分が作るケーキが誕生日を迎えた人を幸福にすると信じて疑わず、せっせと作る。母をかなしませないために私はそれを食べた。食べたのだが、たとえば私の成績が落ちたり小遣い前借りが続いたりした折に、手作り教の教祖にふさわしい威厳と傲慢さでもって、「今度の誕生日にケーキを作ってあげませんからね」と母が宣言するとき、鼻白むようなあわれむような、苛つくような侮辱したいような、荒々しい気分にったものだ。』

こういう心情の機微に触れる角田光代の文章は読む人を引き込んでいきますね。登場人物が生きている。現状を嫌い否定するのは若い時はいいけど、年とると一歩も前に進まないという37歳女子の話。その焦り苛立ちは分かるけど、振ったタケダ君に電話したくなったり、そうやって揺れ動くのが等身大の人間とも言えるが、ちょっと面倒くさい女でもある。

『ステージでは、陣内さんの親戚らしき人がアカペラで歌をうたっている。演歌かと思ったが、よく聞いてみるとビートルズだった。』

『いくつになったってその人はその人になっていくしかないんだから、他人と比べるだけ無駄だよっ。きょろきょろ人のこと見てるあいだに、あっという間におばあちゃんだよっ』

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2021年04月04日

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ネタバレ

読みながらハナにイライラして、そんなの言ってるからじゃんとか思ってるのにそのイライラは自分がそうだったからと読みにつれて気付いていった。

タケダくんに結婚してやると言われて
納得いかず断るんだけど その時はタケダくんのことなんてなんとも思わないのに
別れて時間が経つにつれてタケダくんとの空気感が楽だったし楽しかったと振り返っちゃう感じ
すごくわかる。

したくないことはしたくないくせに
してる人をみると羨ましくなる。

でもやっぱり自分のしたいことをしたい
人との繋がりは離れたり新しい縁に巡り合ったり
その時々で自分の環境は変わっていくけど
変わらない自分だっていいじゃないかと
なんとなくそう思った。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『したくないことを数え上げることで、十年前は前に進むことができたけど、したくないって言い続けてたら、そこにいるだけ。その場で駄々こね続けるだけ』
『作り出すことも、手に入れることも、守ることも奪うこともせず、私は、年齢だけ重ねてきたのだった』

という言葉が効いたー。
ほんと、角田さんの書く文章は、私の心をえぐるんだよなー。もう、心が痛くてしょうがない。

思い起こせば30代後半。
私も主人公・ハナちゃんとおんなじ思いを持っていました。
何も持ってないままただただ歳を重ねることに、すごく恐怖を感じていました。

結婚することが幸せ。子供を産み育てることが幸せ。
それは確かにそうなんだけど、でもだけど、私の人生、もっとほかにも何かあるんじゃない?みたいなそんな気持ちが頭の中をぐるぐる回ってて。

何も持ってない自分を想像するのがすごく怖かったんだと思います。

だけど、「何も持っていない」というのは実は私の思い込みで、本当は私は確実にいろんなことを手に入れてここまできてるんだ。と思えるようになった40代。
あー、私、大人になったのね。なんてしみじみ思ってみたりして。

迷うことも立ち止まることも変化を恐れることも、かっこ悪いことじゃなよ。
いつか自分の手に何かをつかめるその日まで、うんと悩めばいいさ。それも経験さ。
なんて、えらそーなことをおばちゃん言ってみたりする。

薄闇に一筋の光が差したような、そんなラストがとてもよかったです。

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2022年02月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もがく女の話。共感する価値観が多く、読み心地が抜群だった。
主人公はさまざまな考え方を発見し、そしてそれに伴い行動を起こす。その結果でまた、考え方が変化し次のチャレンジへ進む。人生はきっとこういったことの繰り返しで、この物語はとても普遍的だ。だからとても共感できたのだと思う。
決意は美しい。何かを決断した人に読んでほしい一冊。

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2020年07月28日

ネタバレ 購入済み

いますこんな女性

私の友達には申し訳ないのですが、その友達もしばらく恋人ができず長年付き合った恋人とも別れ主人公となんとなく似ていて重ねてしまいました。でも読みやすく、特に私と同じ年代(20代後半)の女性には是非、第三者的な目線で読んでいただきたい本です。

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2017年10月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶりに読んだ角田さん。角田さんの描く女主人公の呟きは、現実に根付いている。あぁこういう人いるよね。こう思ってしまう瞬間、そして、こういう態度をとってしまう時ってあるんだよね。

薄闇の主人公ハナちゃんは、特に向上心とかもなく、キラキラしてる所を目指してない。でも、やりたくないことは避けてきた人生を歩んでいる。

この本は2006年にハードカバーが刊行されているが、この時代に既に結婚をしてやるとか、家庭を持って子どもを持つのが流れであり女としての幸せとか、旦那に許してもらって仕事をするとか出かけるとか、そういう事に疑問を呈するハナちゃん。

ハナちゃんと共同経営者であるチーちゃんには歳の離れた彼が出来て、仕事でも新たな挑戦に燃えている。
そして、元カレになったタケダくん。距離を少し置いたつもりが、気づいたら別れたことになっていて、新しい彼女が出来て、あっという間に就職して結婚をすることを知る。

1人取り残されたような気持ちになるハナちゃん。
でもそれは自分の選択でもあり、人の幸せは多種多様であり、マウントを取り合うものでもない。

そんなことをふんわりと伝えられた様な気持ちが後味。

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2023年11月06日

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