あらすじ
盗みに手を染めた元大工の石蔵が、居酒屋で働く娘に惚れて足を洗いたいと思うようになり……(「ひと時雨」)。料亭で女中をしている独り身のおたつは、亭主が酒豪だと嘘をついて、昼間から酒を買う……(「心恋」)。店賃を調子よくごまかす善吉が、遺書をしたため行方不明になった。(「風穴」)。15歳のおえんは、怠け者の母親を内職で支え暮らしていたが、ある日、お店者風の男に「お嬢さん」と声をかけられた。(「長屋すずめ」)。ほか、江戸は本所の貧乏長屋を舞台にした、心揺さぶられる全七篇。
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Posted by ブクログ
タイトル通り、とある長屋のお話なのだが、なかなか面白かった。
人の人生、正にいろいろ。落ちぶれて、だまされて、心さえさびれそうになる。だけど這い上がり、奮い立つ心もまた生まれる。
明るくはないし、寧ろ探られたくない心の内を見つけられたようで落ち着かなくなる。だが感慨深いものがあった。
ところで一番割を食ったのは伝衛門では? あの人は悪い人じゃないのにな。ちょっと可哀想。
Posted by ブクログ
正直ものは馬鹿をみるといいますが、
本作ではそんな正直ものがたくさんでてきたように感じます。
良くも悪くも賢い人は、人を蹴落としてでも上へと行こうとするにも関わらず、
正直ものは真実だけをひたすら告げ、
それが信じてもらえなかった時はあっという間におしまい。
この時代は、正直で真っ直ぐな人ほど生きにくかっただろうなと思います。
そのうえ現代より、情を大切にしている。
どんな親でも見捨てることができず、
はたまた親のために復讐を誓うものもいる。
なんと難儀なことか。
誰しもが生きにくさを抱えるような時代で、
思うところがあっても家族と過ごしたり
泥に塗れても夢を諦めなかったり
懸命にいちにちを生きる人々を
丁寧に鮮明に書かれているように感じました。
Posted by ブクログ
とても良かった。
江戸本所の裏路地にある長屋に住む人々のお話。おたつさんの話が一番切なかったなぁ。
ずっと好きだったなんて。
序と終章の繋がりが、素晴らしい。
なるほど!と思って違和感がなくなった。
「花かんざし」の市太郎にむごいけど、彼らに殺された尾淵屋の人たちからしたら当然の報いだよなぁ。
Posted by ブクログ
江戸本所の裏路地にあるいわくつきの長屋
店名は裏霧(うらきり)長屋、表にこぎれいな霧左衛門長屋というのがあって、その裏にあるからうらきり・・・
だけど人はこう呼ぶ「うらぎり長屋」って。
うらぶれた、雨漏りのするぼろ屋で
江戸で生きづらくなった人たちが行きつくところだ。
住んでいるのは盗みの片棒を担いだ元大工
怠け者の母親を内職で支える15歳の少女
昼間から酒を飲み男を待ち続ける女
客をしくじりどうにもなりゆかなくなった幇間 など
ぼろ長屋にふさわしい面々が住んでいる。
それぞれに事情を抱え、日々もがくように生きているのが読んでいて苦しい。
本当に救いのない人たちばかりだ
それでも月日がたち一人また一家族とうらきり長屋を後にしていく
それぞれに新たな道筋ができ、少し明るい顔になって新しい一歩を踏み出し始める。
作者のプロフィールをみてびっくり
名古屋女子短期大学卒業・・・
えっ! 作者女性だったの?
名前からして男性だとばかり
すごい人見つけたなぁ
楽しみだなぁ
Posted by ブクログ
本所入江町のとある長屋。訳ありの者たちが住む曰く付きの長屋、人呼んで“うらぎり長屋”に新しい木戸番として何やら訳ありの老母と息子がやって来るところから話が始まる。
そして語られる店子たちそれぞれの事情。仕事を失い、明日への希望もなくした者たち吹き溜まりのような場所。
彼らの過去と今が描かれる七つの短編。そして彼らが長屋を足掛かりにして小さな一歩を歩み出す姿が描かれる終章。最後にわかる番太郎親子がここに来た理由。
犯罪に手を染め人生を誤った男たちと、恋心ゆえに道を誤った女たちの姿が哀れ。
だけど皆どこまでも逞しく、人間はどこからでも真っ当になれるという小さな希望が見え隠れする物語は決して暗く終わらない。
最後まで前を向く希望を描く作品でした。
Posted by ブクログ
生きづらくなった者が行くつく、江戸の貧乏長屋。そこに住まざるをえない人々の人生や人間模様に興味を惹かれた。長屋は『裏霧長屋』だが、タイトルの『はうらぎり長屋』。自分なりに解釈もでき面白い。なるほど、どの時代も、裏切らない、裏切られない、真面目に生きるのが1番だとおしえてもらった気がしました。
Posted by ブクログ
江戸で生きづらくなった人が行きつく
「うらぎり長屋」そこに住む人たちの
7編からなる短編集
雨漏りがひどく、鼠の死骸が転がっているような
酷い長屋だが、大家の河内屋伝衛門は一向に
修理をしようとしない。そんな劣悪な環境の長屋に住む者は、それぞれが事情を抱えている。癇癪を
おこして親方を殴って逃げてきた石蔵、居もしない亭主が酒豪だと酒屋に嘘をつき、昼から酒浸りの
料亭の女中頭のおたつ。材木屋の若旦那の機嫌を
損ね、お払い箱になってしまった幇間(たいこもち)の小鉢。濡れ衣を着せられ、意地を張り続けた末に紙漉き職人の職を失った平治。決して許されない罪を犯した市太郎など。
どの登場人物も、何らかの形で裏切りを受けるが、最後の話で、それまでと全く違う
裏切りが‥
なるほど‥そうなんだ、そうだったんだー!
この仕掛け‥上手い!
人情時代小説だと思いながら読んでいただけに
驚いた。
ただものではない、この作者さん笑
いいなと思った話は、
〈風穴〉
「うらぎり長屋」大家の河内屋伝衛門の話。
店子の善吉が遺書を置いて行方不明に。
どうやら先を憂えて自殺したらしい。
善吉が遺した僅かな金を、孫のおふゆに渡すのだが‥いつの世も、男は女の気持ちを分かっていない。
〈鳥の影〉
材木屋の若旦那の惣太郎を贔屓客としていた
幇間(たいこもち)の小鉢は、惣太郎の機嫌を損ね
お払い箱になってしまう。仕事がない状況が続き、更に運に見放されたような事が続くが‥‥
惣太郎から届いた褒美の羽織、最後にウルッときた。どん底でも諦めなければきっと這い上がれる。
後半で前半の登場人物のその後の消息が少し
分かったりする。短編集だが緩やかに
話は繋がっている。