あらすじ
ロシアによるウクライナ侵攻、世界的な移民排斥運動、権威主義的国家の台頭、トランプ2.0、そして民主主義制度基盤の崩壊……。
「なぜ世界はここまで急に揺らぎはじめたのか?」。共同通信社を代表する国際ジャーナリストが、混迷する国際政治の謎を解き明かすために、国際政治学者や評論家、政治家や現場を知る実務家へのインタビューを敢行。辿り着いた答とは?
プロローグ 「警察官」の退却
第1章 覇者の驕り―「無敵」から「Gゼロ」へ
第2章 「格差」の超大国―アメリカを蝕む病
第3章 リバンチズムー「大ロシア」再興の野望
第4章 百年国恥 ー中華民族の偉大な復興
第5章 「南」の逆襲ーBRICSの論理と心理
第6章 白人の焦燥ー「人種置換」の世界観
第7章 SNSと情報工作ー民主主義の新たな脅威
第8章 「警察官」の犯罪―時代遅れの戦後秩序
第9章 逆流する歴史―よみがえる伝統主義
エピローグ 「19世紀」へ向かう歴史
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Posted by ブクログ
界隈で話題になっている新書。
国際情勢や政治、社会に少しでも関心がある方は、読む価値があります。
著者の川北省吾氏は、共同通社入社後、世界各国で海外特派員を歴任されてきたジャーナリストで歴史的洞察とキーマンへの取材を組み合わせた文章力が素晴らしい。
キーワードは「レコンキスタ」、失地回復です。「失われたもの」という感覚が、現代の様々な動きを生んでいるという指摘は鋭いものがあります。
例えば、ここに書かれていませんが、女性蔑視的な思想を持つ人々の動機を分析すると、「男性が従来持っていた優位性や権利が失われた」という被害意識が根底にあるのです。
これも一種の失地回復です。普通に考えれば、女性を蔑視することに正義はありません。しかし、彼らは被害意識を先に持っているため、それが「正義」の感覚と結びついてしまうわけです。
同様に、白人至上主義も「移民や少数民族に権利を与えたために、自分たちの権利が失われた」という被害妄想から生まれています。黒人だけでなく、アジア系、中東系を含めた移民に「乗っ取られる」という恐怖が、白人優位主義を支えているのです。
著者の綿密な取材によれば、アメリカにおいてトランプ大統領の登場は突然の出来事ではありません。むしろ、こうした流れの中で生まれてきた「現象」なのです。
2/14 ミュンヘン安全保障会議で
アメリカの国務長官が「各国に見合った自衛力を」と発言しています。
しかし、自国を守り抜ける軍事力を持てるのは「金と資源、及び人材を持っている国だけ」です。そして戦争は大抵が「弱小国」を狙って行われるものなので無理があるのです、それでも中小国が超大国と軍事面で対抗できる防衛力を持つには、いくつかの選択肢しかありません
1. 北朝鮮モデル:国民の生活や自由を犠牲にして、軍事力に集中投資する。要は先軍政治
2.中規模国家の連携:カナダのカーニー首相が提唱したように、中規模国家が連携して超大国に対抗する枠組みを作
る
3. 従属国化:いずれかの超大国の国家となる(ただし見捨てられるリスクもある)
さて、最近感じるのは「自由を求める人ほど、他人の自由を制限したがる」という矛盾です。自分の自由は主張するが、他人の自由は認めない。しかし、自分もまた誰かから見れば「他人」である以上、結局は自分の自由も制限されることになります。
本来、公共という考え方のもとで折り合いをつけていくべきです。自分が裸で外を歩きたくても、見たくない人の権利もあるわけです。法律や社会規範は、そうした調整のために存在します。
しかし今、ネットを通じて、こうした秩序を破壊したいという意思が増幅されています。特に超大国が各国の民主主義を弱体化させようとするというのも然ではないでしょう。
中米露以外の国々は、国内政治が混乱し多様性が失われれば、勝ち目がありません。00年代のアメリカのユニラテラリズムだって抑止なんかできなかったのが3つもあるわけですから。
日本はアメリカ、ロシア、中国の真似はできません。1996年から2000年の間に構造改革をしていれば、状況は変わったかもしれませんが、それでも資源がありません。しかも、構造改革は実現できませんでした。
侵略国家並みの先軍政治をやるべきになりますかね。
そうなると、各国は権威主義的な国家にならざるを得ないでしょう。
問題は、権威主義体制は腐敗します。最終的に縁故主義しか残りません。
縁故主義では経済発展は望めないのです。
明治初期、イザベラ・バードの旅行記『日本奥地紀行』には、当時の日本社会で賄賂や不正が横行していたことが記されています。つまり、日本もそういう国家に逆戻りする可能性があるということなのです。
やるせなくはなりますが。