あらすじ
子供の頃、伯母から聞かされた恐怖譚――。月のない夜、奥多摩の霊山に建つ神官たちの屋敷を男女の客が訪れた。思いつめた二人は、神主の説得の甲斐もなく屋敷内で心中を図ったという。だが女は死に切れず、事切れた男の隣で苦しみながら生き続け……。著者の母方の生家に伝わる話を元にした「赤い絆」「お狐様の話」など、怖ろしくも美しい全7編。短編の名手が紡ぐ、味わい深き幽玄の世界。
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Posted by ブクログ
浅田次郎の小説はコミカルなものしか読んだことがないので、これは驚いた。
けっこうコワい。
「赤い絆」
人間の情念みたいなものを書いた短編で、男女の心中事件を、昔語りに子どもに話してきかせる老婆の話がある。
勉学一筋、親の期待を一身に受けたおぼっちゃん大学生の恋愛事件(お相手は遊女)を扱って、大時代的な悲恋を語るのかなー、と思いきや。
そこは本当にあった話的な怪談に一気になだれ込む。
「遠別離」には感動した。
戦争中、フィリピンのレイテ島で命を絶たれた男と、東京で2浪の末に大学進学をあきらめガードマンをしている男性の人生が奇妙にシンクロするお話。
兵士の、この世に残った魂が愛妻に別れを告げるシーン、社会人として責任を感じ始めたガードマンが兵士の魂を受け継ぐシーンが涙を誘った。
Posted by ブクログ
自伝短編小説?
一つ一つの短編にすっきりとした解決がないところが良いなぁ。
人の生活って、小説のようにきれいな解決がなされるものではなく、なぁんとなく、過ぎ去ってしまってから、腑に落ちて決着が付くコトが多い。そんなあいまいな事柄達。
浅田次郎にかかると、そんな事柄達も立派な短編になってしまう。
浅田少年の周囲の大人達の決着のつけ方が、すごく怖く、本の題名通りに本当に「あやし うらめし あな かなし」
すごく怖い本だ。