【感想・ネタバレ】凡人として生きるということのレビュー

あらすじ

世の中は95%の凡人と5%の支配層で構成されている。が、5%のために世の中はあるわけではない。平凡な人々の日々の営みが社会であり経済なのだ。しかし、その社会には支配層が流す「若さこそ価値がある」「友情は無欲なものだ」といったさまざまな“嘘”が“常識”としてまかり通っている。嘘を見抜けるかどうかで僕たちは自由な凡人にも不自由な凡人にもなる。自由で平凡な人生が最も幸福で刺激的だと知る、押井哲学の真髄。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私は、友達に飲み会に誘われたとき、迷うことなく参加するタイプではない。旅行にいくときにも、躊躇することが多い。その時の理由は、翌日が仕事だから、お金がかかるから、得るものがない、無駄、めんどくさい、などである。これは、飲み会や旅行に限ったことではなくて、他のあらゆることにおいて、私の思考の根にあり、何かするときに阻むものである。何でも論理的な損得勘定で考えると、何もしないことが失敗のリスクもく得だという結論になる。
しかし、躊躇し断って、なにもしないでいると、しばしば後悔するものである

その意味で、本書でもっとも重要な点は、以下の部分である。

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もう一度時間を戻そう。家路を急ぐあなたの足元で、小さな生き物がくんくんと鼻を鳴らしながら、あなたの温もりを求めている。あなたはその時、躊躇なく子犬を抱き上げる。両の手のひらを通じて、小さな生き物の体温と鼓動が伝わってくるはずだ。

そのほのかな温もりは、犬なんか飼えないと抱き上げなかった、先ほどのあなたには得ることができなかった感動だ。この感動を得ることが、人生を生きる最大の目標であり、収穫である。

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この一文は、私にとって、本書の核心である。子犬は、もちろん例え話であるが、人や旅や趣味、何か自分が好きなもの、やりたいことに置き換えることで、その意味はとても深いものとなる。

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2013年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ぼんやりと考えていたことに押井守流の答えを突き付けられ自分なりに咀嚼し、自分だけでは消化不良だったところがすっきりした感じ。

例えば自由を求めて孤独に生きると最終的には不自由になりかねないということ。社会と関わり、親なり配偶者なり子どもなりを背負って家庭を持ちながらそれらのフィールドを自在に行き来し、不自由さの中に楽しさを見つけて生きることを真の自由と語っている。結婚などについても価値観を押し付けず独自の理論で語っていてなるほど納得。どうやら結婚も悪くないものらしい。親や近所のおばちゃんの「結婚して一人前」という言葉よりよほどいい(私の親はそんなこと言わないが)私の言葉だと稚拙になってしまうので気になる方は是非読んでほしい。

他にも「納得できない映画は作らない」、「金ではなくまず美学を持って行動せよ」、「勝負を恐れず諦めず、しかし、勝ち続けることを狙ってはいけない」とうい映画監督として、人生の先輩としての哲学も語っているし、オタク論、格差論、引きこもり、虐待などについても広いような偏った視点で独自の理論を展開していて非常に面白い。仕事仲間はいるが友達などいないというのも押井監督らしい。

既存の価値観の崩壊と再構築が進んでいる現代では非生産的な存在であったオタクですら産業を生んで進化し続けていること、アキバの生産性についても語っており、メイド喫茶で働く女の子とたちは現役期間が短いスポーツ選手と同じであると例えているのはすごいと思った。私も少し考えてた「ちょっと年齢層が上のメイド喫茶の誕生」を予言している。私は個人的に「ベテランメイドがいるスコーンと紅茶がおいしい英国風カフェ」の誕生を夢見ている!高齢化が進めば「ばあや」レベルのメイドも需要があるのではないか(笑)

文明やメディアがもたらす害についてはなるほどと思った。また、彼はメディアは既存の言葉に頼らず、独自のメッセージを発信せよと語っており、彼は独自の方法でもう発信しているという。本書が発売された後に公開された『スカイ・クロラ』に若者に向けたメッセージが込められているらしい。心して再度見なくては!

本書のタイトルは『凡人として生きるということ』であるが、彼のメッセージは「努力を続け、熱意を持った凡人になれ」ということらしい。努力を続け、熱意を持って映画を作り続けた著者だからこそ言える言葉だと感じた。

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2012年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

押井守さんのエッセイ。
僕は彼の作品が好きでけっこう観ているが、コンテンツを観たことによって、色々と示唆をくれるという意味で彼の作品が好きだ。

本書の中にも、作品について触れられる箇所がいくつかあるが、「うる星やつら ビューティフルドリーマー」に関してはやはり思い入れが強いのか、出現頻度が多い。

本書の目次を紹介しよう。
第1章 オヤジ論―オヤジになることは愉しい
第2章 自由論―不自由は愉しい
第3章 勝敗論―「勝負」は諦めたときに負けが決まる
第4章 セックスと文明論―性欲が強い人は子育てがうまい
第5章 コミュニケーション論―引きこもってもいいじゃないか
第6章 オタク論―アキハバラが経済を動かす
第7章 格差論―いい加減に生きよう

彼の主張するところには、映画監督は作った作品がすべてであり、言葉は必要がないそうだ。だが、なぜ本書を出したかと言えば、優れた洞察により世の中を批評する批評家がいないためであるとされる。

なるほど。これは一理ある。報道がワイドショー化し、ネタとなるものは瞬間風速的に祭り上げられる光景はいまや日常茶飯事だ。
これにはインターネットの進展における情報流通スピードの早さも要因としてあげられるだろう。

そのモチーフになりうる、「攻殻機動隊 Ghost In The Shell」を作った押井さんがインターネットに関しては興味がないとばっさりと言ったことに驚きと新鮮味を感じたのだ。
今、世の中のインターネットはまさに攻殻機動隊の描いた世界へと日々進歩している。それはコンテンツとして世に出たそれに模倣する形に違いない。

本書の指摘にもあるように、文化とは模倣であり、コンテンツとして世に出た瞬間から正当化されるのである。
これは別の文脈では「ミーム」として形容されるケースも多く、言葉は違えど様々な分野の先人が感じていることではないだろうか。

新書ということもあり、内容もそれほど重厚ではないが、押井さんのエッセンスが多分に含まれた本書はオススメである。

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2012年06月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間 押井守が書かれた哲学書です

今という時代を生きるに当たって、社会が生み出した幻想に惑わされずに、自分を生きるための方法が書いてありました。


押井守からみた社会、人間、家庭。

参考になりました

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2012年05月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

失敗や挫折そのものが人生の醍醐味。
胸にきました。
こうしなければいけないってのは、ないのではないかってこと。要は心のままに、真に楽しい方に行きなさいってこと。

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2011年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「物語」が罷り通った時代の考えからの脱却を示している。

もう何遍もどこかで言われてきたであろうことなんだけど、文章として読むとストンと胸に降りてきて、素直にそうだな、とも思える。書き方がラフだからってのもあるかも。

しかし、共感はあるにせよ、あんまりにも飛躍がありすぎて、新書ってよりは押井守のインタビューみたいだった。


まとめ

▼第一章 オヤジ論——オヤジになることは愉しい
「若さに価値がある」なんて建前に振り回されず、物事の本質を知り、心の自由を手に入れなさい。さすれば自分の本当にやりたいことがわかるよ。建前と本音は使い分けて、図太く生きな。

▼第二章 自由論——不自由は愉しい
本当の自由ってのは、自在に出来るっていう行為のことだ。
人生は選択の連続だが、選択を避けても自在感は感じないだろう?選択を避ければ残る可能性もあるだろうが、潰れる可能性もある。

▼第三章 勝敗論——「勝負」は諦めたときに負けが決まる
失敗は成功の母だ。勝つまでやれば、最終的にはオールオッケー!

▼第四章 セックスと文明論——性欲が強い人は子育てがうまい
文明化して、セックスも子育ても本能のものではなくなった。文明化は止まらないから、ちゃんとセーフ/アウトの線引きしなきゃだよ。

▼第五章 コミュニケーション論——引きこもってもいいじゃないか
友達じゃなくて仲間を作ろう。仕事は仲間が出来て面白いぞ。

▼第六章 オタク論——アキハバラが経済を動かす
「物語」はもうないから、情熱に生きろ!

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2013年08月30日

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