あらすじ
維新がなければ、世に出られなかった熊本の陪々臣の三男、井上毅は肺を病むほどに学び、大久保利通と伊藤博文らに見出され、立憲政体の詔勅、大日本帝国憲法と教育勅語の起草など近代国家の礎を言葉にしていく。大隈重信、岩倉具視、星亨、牧野伸顕などの英傑もクセが強く、黎明期の明治は熱く面白いと見直す記念碑的傑作。
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Posted by ブクログ
井上毅が大久保利通や伊藤博文らに見出され、大日本帝国憲法を作り上げていく物語です。読むまで「いのうえ つよし」と誤読していたほど、井上毅について何も知りませんでしたが、本作を通じてその人物像に引き込まれました。
伊藤博文、大久保利通、岩倉具視、大隈重信、黒田清隆、森有礼、板垣退助など、明治維新後の政治家たちも多数登場します。漠然と否定的な印象を持っていた彼らへの見方が、本作を読んで変わりました。異論にも耳を傾ける余裕があり、立場が上の者にも意見を言える人物がいたからです。
皇室典範を語る際に出てくる「神武以来2600年」という言葉についても、当時から歴史的事実というより神話として認識されていたことを知り、興味深く感じました。それにもかかわらず、その神話を根拠に男子以外の天皇を認めないという考え方が現在にも持ち出されることには、違和感を覚えます。
本作で最も心に残ったのは、憲法を作るためにどれほどの心血が注がれたかということです。
外国の憲法を学び、日本の国体を考え、推敲と議論を重ねて作り上げられていく過程が丁寧に描かれています。
読む前は明治憲法を未熟なものと思っていましたが、それは戦争を止められなかったという結果論にすぎないと気づかされました。
天皇のことだけでなく、国民の義務と権利もしっかり考えて作られた憲法が、その後どのように軽視され、曲解され、色褪せていったのかも指摘されています。
私たちはよく「憲法に守られている」と思いがちですが、結局は人がそれをどう扱うかが重要なのだと、読み終えて強く感じました。
憲法がどんな人々の思いを込めて作られたのかを知ることも大切なことだと思いました。
再読したい一冊です。
Posted by ブクログ
史実に基づいて書かれたフィクション。歴史教科書から知りえた知識は断片的で事実のみに制約されるが、著者が集めた情報から立体的に表現されたフィクションであればこそ、思考の深みと厚み、何より人間らしさを感じながら読み進められる幸せを感じた。
Posted by ブクログ
幕末から明治にかけて実在した井上毅を中心に、大久保利通や伊藤博文など歴史に残る英傑達が憲法起草に賭けた熱い想いを描いている。其々の出自も影響する緻密な人間関係や主義なども面白く、一気に読んだ。膨大な参考資料を見て、この大作を完成させる作者の想いの深さも感じ入った。
Posted by ブクログ
この作品を書き上げた川越宗一さんすごいです。
どれだけの資料を読み込んだのか。その執筆準備の量を想像するだけでもう。。。
それまで憲法なんて概念さえなかった時代に、海外に渡航し勉強してきた人々。明治憲法を作り上げたのもすごいが、国内の政治や経済の基盤を整えた偉人たちには感服します。
井上毅の実家の両親の話にはくすりと笑ってしまうことも。固い話の中のちょっとしたオアシスでした。
Posted by ブクログ
読み応えがありすぎた。
幕末から明治の時代の中枢から見た日本がよくわかる。世界の中で他国に蹂躙されるまいと自立しようともがいている日本のありように固唾をのんだ。憲法を軸に一人の官僚の生き様を追うことで、この時代の近代化への理解がすすむ。優秀な人材によって国はできている、ことへの安堵と、民主主義とはという矛盾を感じた。いろいろな視点から考えさせられる重厚な物語。満足。
Posted by ブクログ
普段は、フィクションで史実が書き換えられているようなものが多いので歴史小説は読まないが、今回は、憲法改正の下準備が進むなか大日本帝国憲法のことを知りたくて読み始める。伊藤博文に引き上げられ、大日本帝国憲法を起草した、肥後の最下級武士であり漢学者だった井上毅の物語。大日本帝国憲法の構造と問題点、明治維新の立役者達のその後の行動を知ることができた。
小説最後の、大久保利通の子供、井上毅の部下でもあり、吉田茂の義理の父でもある牧野伸顕の回想、”大日本帝国憲法は、いっときに絢爛と輝いた法だった。そして国中のいたるところで起こった憲法の軽視や無視、曲解によって色褪せ、光を失ってしまった。”
伊藤博文が立憲体制構築を目指したものの、自分たちの藩閥政治を正当化し、政府から下野したライバルたちが起こした民権運動から議会から守るために憲法に仕組んだ仕組みが、政党政治の腐敗、軍部の台頭に利用され、太平洋戦争の惨禍に繋がった。憲法は、やはり大事です。
”法を編むとは国家を造ることと同義である。 ”
”国家の横暴から人民の権利を守護する。これぞ憲法ただ一つの意。この意を含まぬ法は憲法とは呼べませぬ。 ”
Posted by ブクログ
もっと彼らは今からはぎょっとするような考えかたをしていそうな気がする。男女や身分や長幼やの縦軸の中で考えてたろうから。
明治だとその違いをうっかり忘れそうになる。