あらすじ
海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて――。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。
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Posted by ブクログ
14歳からずっと、心の支えになっている本。
本気になれよ、とみのりちゃんは私にいつも話しかけてくれます。
心にまっすぐに生きている人は、ただただ美しくて、とてもまぶしい。
そんな人でいたいな。
Posted by ブクログ
サッカー少年で、離婚した父”テッセイ”に会ったことで絵に目覚めた木島
家に居場所が無く、イラストレーターの叔父”通ちゃん”ちに入り浸っている村田みのり
高校生って学校で友達に見せる顔と違う顔を持ち始める
それが魅力
2人は絵を通して それに気が付いた
ゆっくり恋愛が始めっていく
みんな悪い人すぎず、良い人すぎず、普通に描かれていて好きだな
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「もっと描いたら?絵をたくさん」
「もっと」「本気で」
…
『本気って、ヤじゃない?』
僕が聞くと、村田は理解できないという顔つきになった。
『こわくない?自分の限界とか見ちまうの?』
…
「いいな木島クンは やれることがいっぱいある」
「私は何もしていない。限界が見えるようなこと、何もできない」
…
「でも何が好きかだけは、わかってるんだ」
Posted by ブクログ
本気ってこわくない?限界見えちゃいそうで。
見たこともない限界にたいして、おびえていた頃。
あの頃、あんなにもまっすぐで、伸びやかだった気持ち。
いつのまになくしちゃったのかな。
ふたりがであってくれてほんとうによかった。
14歳は大人が考えるよりずっと大人なんだと思う。
確かそうだった。
自分と重なるところもあったせいか、木島にも村田にも終始心がゆさぶられてばかりだった。
大人になった今に、こんなにも十代の恋愛をテーマに書いた小説に心揺さぶれるなんておもっていなかった。
本当に、10代の頃にであっておきたかったな、ってつくづく思った。
でも今でも出会えてよかったと思う。
Posted by ブクログ
このもどかしい感じ、すごく好き。
曖昧で半端で、でもまっすぐに進もうとする二人の主人公の姿が眩しい。
胸を突き上げてくる感情。付かず離れずの関係。ツボにハマる。
でも無理にそれを「恋」っていう枠でくくってしまった事が残念。
愛だとか恋だとか、そういうのじゃなくて、もっと深くて繊細で微妙に違うニュアンスの感情だと思うんだよな。
でもかなり私好みだったから、星5つ。木島が良い。
Posted by ブクログ
・バスタブ。
銀色のバスタブ。
ステンレスのバスタブ。
冷たいバスタブ。
からっぽのバスタブ。
私の宇宙船。
虚空を飛び、数多の世界へ旅立つ船。
・「自分の顔ってわかんないよ」
私は言った。
・「もう、入らない」
私は言った。
「入れない」
言い直すと、得体の知れない悲しさが、じわじわとわきあがってきた。
・「いいな、木島くんは」
村田はポソリと言った。
「やれることが、いっぱいある」
「やれてないってば」
「やってるじゃん」
村田はきつい調子で言った。
「私は何もしてない。限界が見えるようなこと、何もできない」
俺は黙っていた。
村田も口をつぐんだ。かなり長いこと黙っていてから、
「でも」
と言いだした。少し照れ臭そうに目を細くして、
「何が好きかだけは、わかってるんだ」
「何サ?」
「絵だよ」
・後半、監督から交替の指示はなかった。
円陣が解けてベンチから出ていく時、本間さんは一言だけ俺に言った。
「いったい何を恐がってんだ?」
いったい何を恐がってんだ?その言葉が何度も俺の頭の中を駆けめぐった。恐い?恐いさ。何もかもが。特にヘマでヘボなこの俺自身が恐くてたまらねえんだよ。
・「俺の、俺のー絵、見る?」
おじいちゃんは返事をしなかった。俺は顔が熱くなるのを感じた。なんか馬鹿みてえだ。
「今日、試合で・・・」
俺はぼそぼそと言った。
「俺、初めて、試合に出て」
「ぜんぜん駄目で・・・」
「でも、絵が描きたくなった」
「見ていいのか?」
とおじいちゃんは聞いた。どっしりとした感じの声だなと思った。嬉しくても悲しくても、簡単に声からはわからないだろう。
「うん」
と俺は答えた。
・「俺が描きたい村田さんって、もっとチガウんだよ」
「どう・・・チガウの?」
木島の細い目がいよいよ細くなった。
「もっと突き抜けた感じ?強い感じ?うまく言えねえけど」
わかんないよ。
「似てればいいっていうんじゃなくて、なんか、こう、印象みたいなのをはっきり形にしたいんだよ」
木島は説明した。
「俺が村田さんを見て感じるものを形にしたいんだ」
・「俺たちは、もう、いいかげん、あの男から解放されてもいいんじゃないか?歩美が悪いんだ。いつまでも、あいつのことばかりグチグチ言って」
俺は赤く染まりだした西の空に目をやった。胸の奥がかすかにうずく。
「好きなことをやるんだ」
おじいちゃんは言った。
「最後は自分だけだ。誰かのせいにしたらいけない」
その言葉は、重く、強く、厳しく、俺の心と身体を貫いて、背筋をピンとさせた。
・「木島さんがいいです」
俺は苦笑した。まあ、本間さんはおっかねえし・・・。
「だってね、本間さんは”できない”ってことが、わからないんですよ」
三宅は心底困ったように訴えた。俺は思いきり吹き出した。
「そう、そう!そうなんだよな!」
わかるぜ。
「天才の弱点だよな」
・「変わるって、いいことかな?」
私は焼きそばをわりばしでつつきながら聞いた。
「よく変われば、いいこと。自分がいいと思えば、いいこと」
スガちゃんは半分冗談みたいに答えた。
そんな自信なんてない。今の自分。これからの自分。だけど、止まっているのをイヤだと思ったんだから、変わるって、きっと、すごくいいことだよ。
・「どんどん好きになる。きっと、もっと好きになる。自分の気持ちみたいなの、どんなふうに言ったらいいのかわからなくて、絵ばっか描いてたけど、絵じゃないと伝わらないって思ってたけど」
照れた子供みたいにパッと笑った。
「言っちゃったし」