あらすじ
死ぬことだけ考えて生きている、うつの男。死に場所と決めた廃屋で見つけたのは朽ちる寸前の手紙の束。男は放置された7通を郵便局員に代り配達することにした。すべて届けたら自殺してラクになる、そう決意して……。神経症の時代に贈る愛と希望の物語。
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Posted by ブクログ
正しいかどうかは知る由もないのですが
鬱の方の心理を内側から描く設定に
とても知的好奇心を刺激されました。
中途半端な希望的観測など許さない徹底した
心象の描写には、本当に心揺さぶられました。
主人公が迎えた結末には絶望と驚きとかすかな希望。
作品世界に吸い込まれて、そうして吐き出された途端、
締め付けられるような思いとあたたかい思いの両方を
胸の中に感じて、それこそが現実なのだと
思い至りました。
今は…本当の幸福な結末を心から祈るばかりです。
Posted by ブクログ
鬱のときの無気力さや、心が動かなくなる感じがリアルに表現されている。経験者ならではの描写。
でも、そういう傾向のない人にはくどく感じられるのかもしれない。私は、最初の方の主人公の状態がやけに身近に感じられた。
1通ずつ手紙を配達していくのだが、いつも予想外の展開で関わりを持ってしまう。そうすることで少しずつ心が動き始めるので、もしかしてこれは7通配り終わって回復してしまうというような展開になるのかと思いきや、まさかの幻想、そして自殺の実行、さらには植物状態という怒涛の展開にびっくりした。結局自殺は一度実行されてしまうのか。
死が救いに思える精神状態、朝が来ると「まだ生きている」と思ってしまう心理は私にとってはとても馴染み深いものなので、できればラストは違う形がよかったなあとも思う。でもまあ、こんなものかもしれない。どれだけフィクションだとは言っても、そうそう脳天気なハッピーエンドを持ってくるわけにもいかない。
澤野が書きはじめた手紙が、たぶん一筋の希望なのだと思う。
Posted by ブクログ
手紙の配達先で7人の人間模様を見て、希望が生まれ、心を入れ替える、そういう結末になるとばかり思っていましたが、そうではありませんでした。
私にとっては、ショッキングな結末でしたが、このような終わり方の方が現実に近いのかもしれないと思いました。