【感想・ネタバレ】タテ社会の人間関係 単一社会の理論のレビュー

あらすじ

日本社会の人間関係は、個人主義・契約精神の根づいた欧米とは、大きな相違をみせている。「場」を強調し「ウチ」「ソト」を強く意識する日本的社会構造にはどのような条件が考えられるか。「単一社会の理論」によりその本質をとらえロングセラーを続ける。(講談社現代新書)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

西欧の理論ではなく、日本社会を日本から眺めて分析しようという本でした。
まず社会集団の構成要件に、「場」の共有性と「資格」の共通性の2つが挙げられています。場というのは、例えば同じ会社とか同じ学校卒とかそういうもので、資格というのは厳密なルールがあり、同じ職種(例えば旋盤工であるとか)とか、同じ父系一族であるとかというものです。
で、日本の場合は、とにかく「場」が重視されていて、例えば「家」についても、よそに嫁いでいく娘よりも、家に入る嫁が重要であったり、独立した息子よりも番頭やお手伝いさんが一族的な立ち位置になったりと、血族という資格よりも家という場に属しているということが重視されます。で、「資格」はルールに基づいているので枠組みははっきりとしているんですが、「場」というのは枠をはっきりとさせておかなければ、曖昧になってしまうので積極的に「ウチ」と「ソト」を区別するという意識になるようです。
そして、「場」による関係性は資格の異なる構成員を結びつけなければならず、必然的に「タテ」の関係が重視されます。一方、資格の共通性による集団は、「ヨコ」の関係が重視されます。「タテ」関係は並列でないものの関係で、親分・子分のような関係です。「ヨコ」は同じ階級同士のつながりとかそういった関係性です。例えば日本の企業は「タテ」が重視され、欧米の働き方は「ヨコ」重視なのではないでしょうか。「タテ」の関係は開放性がある(ネズミ講みたいなイメージ、ヤクザの組織形態ですね)のですが、非常に厳格な上下関係があります。一方、「ヨコ」は並列でお互いに尊重しあえますが、資格外の人を排除するような排他性があります。「タテ」の関係は、開放的ですが、親分を解してしかつながりが持てないために、親分がいなくなると崩壊してしまったり、ある一定の子分を率いて独立するということが起きます。「ヨコ」の関係は、ルールに基づいていますので、親分がいようがいまいがその関係は維持されます。ただ、階級を乗り越えて「タテ」につながることは難しい組織形態になっています。(筆者はインドのカースト制をヨコの例として挙げています。同じカースト同士は非常に結びつきやすいですが、階級を乗り越えることは容易ではありません。日本の場合は、末端同士の同じ立場で団結するというより、どの派閥に属しているかが重視されます)ところで、同期同士はつながりがあるし「タテ」だけじゃなく「ヨコ」もあるという指摘もあるようですが、あくまでも同じ会社という「場」の中の「ヨコ」関係であって、「場」を超えた「ヨコ」関係は成り立ちにくいというのが著者の主張です。

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2021年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本人は、上からヒイキしてもらいたい…

・「2017/6/28出光興産の株主総会で、出光興産の創業家は、"昭和シェルとは企業文化が異なる"ことなどを理由に合併に反対の考えを示した」とのことです。

 これは、この本に示されている「成員の全面的参加、家族ぐるみの雇用関係、ウチのもの意識などタテの関係、序列意識、場を強調する日本の組織」と、ロイヤル・ダッチ・シェル(オランダとイギリスの企業)傘下の日本法人である「昭和シェル」が持っていると思われる「欧米的“ヨコ”につながる階層的な文化」との違いを危惧してのことだろうか?

・この本を読み終えて、感想・レビューをアップしなければ、と思っていた時に、報道されていたニュースに絡めてしまいましたが、正直、感想・レビューが書きにくい本でした。なぜならば、古い本なので仕方がないのですが、新しい発見をした驚きに乏しかったからですヾ(- -;)

・前書きに、遜った言葉があったり、文章が硬かったり、サンプルが少なかったり、変わった本だなあと思いながら読んでいたのですが、50年も前に書かれた本だったのですね。

 かく言う私も思い当たる節が色々とありますが、50年後の現在、上席に座っている人たちは、崩れつつある「タテ社会の人間関係」を守ることに苦労されているようにも見えます。この本が提出している世界は、私たちが普段から意識的または無意識的に順応してしまっている日本の社会でした。

・グローバル化が進んでいるのか、私の上司たちは、私よりも若い人たちなのですが、更に上は、年齢的にも先輩なので、タテ社会的な応対を望んでるようにも見えます。私が違和感を感じたのは、ヨコ文字職業の懇親会で、あたかもタテ社会のような空気が充満していた時でした。この本で示されているタテ社会に加えて、タテの上からヒイキしてもらって引き上げてもらいたい、という意識もあるような気がします。

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2020年05月03日

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