【感想・ネタバレ】先導者・赤い雪崩のレビュー

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何時も早すぎる

2017年06月25日

また、読んでません、これからです。

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Posted by ブクログ 2022年07月21日

「新田次郎」の山岳小説短篇集『先導者・赤い雪崩』を読みました。

『八甲田山死の彷徨』に続き「新田次郎」作品です。

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自然の魔と人間の魔があった。
山岳小説の傑作・全八篇。

上越国境を縦走する女性4人と男性リーダーのパーティーが遭難死に至る経緯をとら...続きを読むえ、極限状況における女性の虚栄心、嫉妬心などを克明に心理描写した『先導者』。
南アルプスを背景に女性をめぐる二人の若者の争いを描く『赤い雪崩』。
ヨーロッパ・アルプスの悲運のガイドを描く『嘆きの氷河』など、山でおこる人間ドラマと自然の厳しさを雄渾な文体で綴る全8編を収録する。
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山岳小説ばかりを集めた以下の八篇で構成された作品です。

 ■先導者
 ■登りつめた岩壁
 ■蛾の山
 ■嘆きの氷河
 ■谷川岳幽の沢
 ■白い砂地
 ■赤い雪崩
 ■まぼろしの雷鳥
 ■解説 小松伸六


『先導者』は、無責任な友人「宮地」に裏切られ、経験不足の女性4人を連れて上州と越後の国境縦走に挑むことになった主人公の「茂倉」が、4人の女性とともに遭難死してしまう物語、、、

山の恐ろしさと、極限状態に置かれても虚栄心や嫉妬、エゴを捨てきれない女性たちの心理が巧みに描かれていました。

自然と対峙するには、知識や装備だけでなく、計画性やリーダーの判断が大切だなぁ… ということを改めて感じました。
(『八甲田山死の彷徨』にも通じるテーマですかね)

現代の山ブームにも通じる作品かもしれませんね。


『登りつめた岩壁』は、「松本清張」の黒いシリーズを連想するようなミステリー作品、、、

主人公「中村友治」の暗い(黒い?)過去が徐々に明示され、「中村」に遭難死させられた姉の復讐を計画している弟「喜見田」の殺意が読み取れる展開… その二人がザイルを結び幕岩を登攀するシーンは緊張感たっぷりでしたね。

そして、どんでん返しの結末… でも、スッキリするエンディングでしたね。


『蛾の山』も、「松本清張」の黒いシリーズっぽさを感じさせる作品、、、

教師に犯されその教師を殺害した過去を持つ女性「洋野まみ」が、その後も性的に結ばれた相手を殺してしまう物語。

登山中での事故死(転落死)に見せかけられ、兄を殺された女性「玲子」が、復讐を計画する… 争う女性を赤と青の蛾に例えて嫌悪感を感じさせるところが巧いですね。

「山ではゆび一本で人を簡単に殺せる場所がいくらでもある」という言葉が印象に残りました。

『先導者』や本作品を読むと、「新田次郎」って女性登山家が嫌いだったのかなぁ… と思っちゃいますね。


『嘆きの氷河』は、ヨーロッパアルプスを舞台に30年前に起きた登山ガイド「ゼップ」の墜落事故の謎を巡る物語、、、

スイス辺境にある魔王の剣に登るためにやってきた日本人と、「ゼップ」墜落事故以来、村八分となっている登山ガイド「ペーター」は、氷河から「ゼップ」の遺体を探し出し、墜落事故の真相(「ペーター」の潔癖)を証明しようとする。

真実の追及か、今を生きる人の救済か… 悩ましい展開でしたが、善意が感じられ、好感が持てる作品でしたね。


『谷川岳幽の沢』は、幽の沢登攀路から離れた場所で発見された下着一枚の変死体を巡る物語、、、

全く無関係と思われる三人の人物が自分の身内ではないかと名乗ってくるが、事実が明らかになるにつれて、三人の関係性が判明する。

女性との関係を清算しようとする男、たまたま居合わせた狂女、、、

それらが、最後にはひとつに… 巧く計算された作品でしたね。


『白い砂地』は、チューリッヒから帰国した男性「芳村」が、遭難死したペンフレンド「田久沢昇」の墓を訪ねる物語、、、

「芳村」は、生前の「田久沢」と交わした約束を守るために義姉の自宅や、交際していた女性、遺骨を間違えて持ち帰った女性を訪ねるが約束を果たすことができない。

荼毘に付した上高地を訪ね、ようやく目的を果たす… 竹藪の葉が風に吹かれる音が効果的に使われていて、日本の自然の良さが感じられる作品に仕上がっていましたね。


『赤い雪崩』は、男二人女一人の登山での雪崩事故を巡る物語、、、

雪崩に巻き込まれ遭難死したと思われた男性「笠田」が死の淵から生還… 「笠田」が死んだと思い山中に残して下山した男性「舟塚」と女性「多津子」と「笠田」が異なる証言をしたことと、三人が三角関係であったことが判明したことから、雪崩を装った事件ではないかという疑惑が浮上する。

「舟塚」が嫉妬から「笠田」を殺害しようとしたのか… ミステリー仕立ての面白い作品でした。


『まぼろしの雷鳥』は、南アルプスでは絶滅したと言われている雷鳥を八ヶ岳で見たという写真が茅野市役所に送られてきたことから、観光課の職員「関沢慎一」が、その真偽を確認する物語、、、

この写真が真実であれば、これまでの学説を覆すことになることから、「関沢」は撮影者から直接状況を聞き取るために東京を訪ねるが、なかなか会うことができない… 「関沢」の懸命さに、ついつい感情移入してしまいますね。

専門的になり過ぎず、雷鳥の生態や分布がわかりやすく解説されているので読みやすかったのですが、、、

悲劇的なエンディングでした。


ドキュメンタリー風かつ純文学風の作品を想像していたのですが、ミステリー要素を含んだ作品が多く、予想以上に愉しめました。

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