【感想・ネタバレ】草枕のレビュー

あらすじ

「しつこい、毒々しい、こせこせした、その上ずうずうしい、いやな奴」で埋まっている俗界を脱して非人情の世界に遊ぼうとする画工の物語。作者自身これを「閑文字」と評しているが果してそうか。主人公の行動や理論の悠長さとは裏腹に、これはどこを切っても漱石の熱い血が噴き出す体の作品なのである。 (解説・注 重松泰雄)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【本の内容】
山路を登りながら、こう考えた。

智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。

―美しい春の情景が美しい那美さんをめぐって展開され、非人情の世界より帰るのを忘れさせる。

「唯一種の感じ美しい感じが読者の頭に残ればよい」という意図で書かれた漱石のロマンティシズムの極致を示す名篇。

治39年作。

[ 目次 ]


[ POP ]
『国家の品格』いわく文学・哲学・歴史・芸術・科学といった、何の役にも立たないような教養をたっぷりと身につけていることが真のエリートの条件の一つという。

ならば、役に立たない教養を身につけているだけではなく、役に立つことはしない百けんは超エリートではないだろうか。

その師にあたるのが、漢文に詳しく英国留学の経験がある明治のインテリで、日本を代表する文豪・夏目漱石。

『草枕』は、その文章芸を堪能できる1冊だ。

山路を登りながら、こう考えた。

智に働けば角が立つ。

情に棹させば流される。

意地を通せば窮屈だ

。とかくに人の世は住みにくい。

という冒頭が有名だが、遠くに見える山桜、雲雀の声、雨の糸など、自然描写が印象に残る。

日常会話では役に立たないけれども、美しい言葉がたくさん出てきて、読んでいるだけで楽しい。

[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「世間には拙を守るという人がある。この人が来世に生まれ変わるときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい。」

0
2013年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実家から出られず母親の古い古い本をあさり読んで。

*
 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくかろう。
 越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、くつろげて、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世をのどかにし、人の心を豊かにするが故に尊い。
*

以上が文庫1ページ目の、草枕です。

漱石すごいよね面白いよねと言いつつ、何が面白く何が楽しいかを説明するのは至極難しい。
『硝子戸の中』などは随筆だけに滋味あって読みやすく、幼少期のエピソードなどもあって読み物としても、自然に笑みの浮かぶようなものだった。
『虞美人草』は結末が唐突に思えてさほど好きではないが、お話としてまとまって疾走感のある物語だった。
教科書的に解釈やら何やらをせられた思い出もあるけれど、『こころ』も事件性があり、時代背景が書き込まれてあり、読み応えがある。
が、しかし暗い。
暗さでいえば『門』や『道草』の閉塞感こそ。

みたいな話を母親としていたけど、wikipedia先生に尋ねたらもっと全然作品数あるのですもの。
読もうかなー、と思うのは、暗かろうが何だろうがあまりにも読みやすい文章のためな気がする。

結局は読みやすくて、暗くても構わないが不快になるものは嫌いというだけの趣味傾向でしょうが。

*
洋画家を自称しながら本文中では一枚も絵を描かない主人公が、山あいの鄙びた町の温泉宿に泊まる。
温泉宿と行ってもそこは温泉街ではなく、町に一軒、裕福な主人の隠居所のような家で客が来たら泊めるというようなところ。
日露戦争中のことで他に客もなく、主人公は、宿の娘で傾いた嫁ぎ先から出戻ったという那美と話すようになる。
那美は、嫁ぎ先が「傾いた」というだけの理由で出戻ったことや、種々の奇行から村のひとの一部には「きの字」と言われている。
けれど、(絵も描かないで)非人情を語る主人公とのあいだに物語的な展開は起こらない。

ある日に那美の傾いた嫁ぎ先の夫が那美を訪ねて来、那美が夫に金銭を渡して呆気なく別れるのを主人公が目にする。
金を包んだ包み渡し、受け取る仕草に画題としての美しさを見る一方、那美が自分の絵を描くよう頼むと主人公は那美の顔は描けないといって断る。
那美のいとこが日露戦争に行くのを見送りに来た駅で、ひとり満州に出稼ぎに向かう夫の姿を見つけた那美の表情を見て、
その「憐れ」が出た表情をもって主人公の胸中で那美の画が成就する。
*

詩人/画家の立場としての「非人情」と、画題としての(構図の美しさ、西洋と異なる日本の空気を描く色の必要なども語りつつ)「憐れ」と呼ぶ人情味について語った漱石の芸術論。

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2011年08月28日

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