あらすじ
なぜ映画を観たあとすぐに考察動画を見たくなるのか? 映画やドラマ、漫画の解釈を解説する考察記事・動画が流行している。昭和・平成の時代はエンタメ作品が「批評」されたが、令和のいまは解釈の“正解”を当てにいく「考察」が人気だ。その変化の背景には、若者を中心に、ただ作品を楽しむだけではなく、考察して“答え”を得ることで「報われたい」という思考がある。30万部超『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者が令和日本の深層を読み解く! 「平成」と「令和」で何が変わったのか? ●「批評」から「考察」へ 正解のない解釈→作者の意図を当てるゲーム ●「萌え」から「推し」へ 好きという欲求→応援したい理想 ●「やりがい」から「成長」へ 充実しているという感情→安定のための手段 ●「ググる」から「ジピる」へ 複数の選択肢から選ぶ→AIが提示する唯一の解 ■目次 まえがき――若者が考察動画を検索する理由 第1章:批評から考察へ――『あなたの番です』『変な家』『君たちはどう生きるか』 第2章:萌えから推しへ――『【推しの子】』『アイドル』『絶対アイドル辞めないで』 第3章:ループものから転生ものへ――『転生したらスライムだった件』『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』 第4章:自己啓発から陰謀論へ――堀江貴文『多動力』、ひろゆき『1%の努力』 第5章:やりがいから成長へ――『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』『働きマン』 第6章:メディアからプラットフォームへ――『スマホ脳』『一般意志2.0』 第7章:ヒエラルキーから界隈へ――『スキップとローファー』『違国日記』 第8章:ググるからジピるへ――ChatGPT、『NEXUS』『わたしを離さないで』 第9章:自分らしさから生きづらさへ――『世界に一つだけの花』、『世界99』、MBTI 終章:最適化に抗う――そして『スキップとローファー』『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』 あとがき――やりたいことや自分だけの感想を見つけるコツ 参考文献――「考察の時代」を理解するための本
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Posted by ブクログ
本日、朝から地元の酒造の蔵開きに
小一時間歩いて参戦してきました。
オープン30分以上前に着いたのですが、
すっごい行列!!
その列に並びながら再読した本書。
2月とは思えない小春日和の福岡。
読書がはかどりました。
「若者は努力が報われるという”安心”を
得たいのかもしれない」
そんな仮説から、
一見似ているけど変容している
社会的な事象を対比しながら批評されています。
「批評から考察へ」
「ループものから転生ものへ」
「やりがいから成長へ」
「ヒエラルキーから界隈へ」の4章が、
私は面白かったです。
言われてみれば
「なぜはた」とか「映画を早送りで」とか
「ファスト教養」とかも、
「安心」という切り口で
繋がっている批評に思えてきます。
2週間ほど前に
三宅さんと岡田斗司夫さんとの対談を
観るためだけに
Youtubeの岡田斗司夫チャンネルの
メンバーシップに登録しました。
常連のかたも『神回』とコメントされていましたが、
すっごい面白かった!
お二人とも、
相手の言葉を受け止めながら、
リアルタイムで考えていることを
相手との共有と敬意の感じられる
自分の言葉で伝えあってて。
時に考え込んだり、新しい話を生み出したり。
あんなふうに対談できたら、
学び合うことが楽しいだろうな・・・と感じた時間。
「説明と考察と批評」について触れつつ、
「考察と批評」の境目を
読み手、聞き手がどう受け取っているかの悩み、
なんかも話されていて。
対談を聞きながら、本書の内容への理解も深まりました。
あそこでのお話の様子を思い出しながら、
本作の終章あたりを読むと、
他の著書でも言われている
「自分の言葉で伝えることの面白さ」が、
心の底から大切に思えてきます。
ちなみに「答えを求める生き方」も
決して否定されていない三宅さん。
素敵な人だ。
Posted by ブクログ
「批評」から「考察」へと変化していった若者たち。
なぜこれほどまでに「考察」という文化が広がったのかについて、著者の見解が書かれた本著。
面白かった。
正解を言い当てることは面白いことであり、自らの「考察」という努力が報われるのだから嬉しい。若者はここに「考察」の魅力を感じている。
「批評」は正解がなく自らの努力が報われない。
「考察」は正解があり自らの努力が報われる。
感想や感情なんて意味がない。個人の個性なんかより、自らがどの界隈にカテゴライズされたかの方が大事。そんな世の中へと変化していっているからこそ流行しているMBTI診断についても著者は取り上げている。人間の性格をタイプ分けし、「この子はINTPだからこんなふうに振る舞うんだ」そう判断して、他者を理解する。
MBTI診断に関して、私も同じような経験がある。私のMBTIはINTJだ。アルファベットで覚えていたわけではなく、日本語の名前だけなんとなく覚えているから、それを今調べた。私のアルバイト先では当然のようにMBTIの話になり、同じグループじゃん、私達相性いいよ、それぞれ思い思いの言葉を重ねている。そんな中で、自分が建築家(INTJ)であることを声に出すと、「えっ、Iなの意外!」と言われたことがある。MBTI診断を行った時は、理想の自分としてなのか、本当の自分としてだったかは覚えていないけど、正直に答えたと思う。それでも、アルバイト先で見せる自分のペルソナと本当のペルソナに違いがあり、うまく演じ分けられているのだと知れて嬉しくなった。
考察もいいし、MBTIもいい。それでも私は、それぞれが感じた自分だけの感想を思い思いに発信することができる、批評文化が好きだな。今もこうして感想が書けているのは幸せ。
Posted by ブクログ
タイトルと帯に惹かれて手に取った一冊で、個人的には久しぶりの新書だった。
本書で語られる「報われたい」「正解が欲しい」という感情や、「最適化された自分」であろうとする姿勢、さらには「自分で選んでいるつもりで、実は選ばされている」という感覚は、若者論として提示されているが、決して若者だけの問題ではないと感じた。
むしろ、年齢を重ねる中で、無意識のうちに「無難な正解」を選び続けてきた自分自身の姿が浮かび上がり、読んでいて何度も頷く場面があった。
「最適化するあなたに意味があるのではない。あなたの固有性のほうがずっと意味がある。」という一文は、本書の核心を端的に表しているように思う。
成果や効率、評価に寄りかかりがちな日常の中で、一度立ち止まり、「自分は何を選んでいるつもりで、何を選ばされているのか」を考え直すきっかけになる一冊だった。
Posted by ブクログ
「どちらの意見や考え方がいい」と言い切るのではなくて、世の中こう言う考えも流行ってるけど、どんな考え方でもいいんだよ〜。と包んでくれるような締め方で。報われキャラを演じる自分も、界隈で生きる自分も、素で生きる自分も全て肯定される本でした。また読み返したい。
Posted by ブクログ
三宅さんの「あなたの感想を聞かせてくれ!」という切実な思いがとても伝わってきたし、そう言ってくれる大人がいてありがたいなぁと思った。私は今21歳で、まさに報われることを望んでばかりだと気づかされた。もっと自分の感情や感想、好きなことを大事にしていこう!
Posted by ブクログ
思春期の学校で感じていた、推しの話でひっきりなしだった時に周りに感じていた疑問が解消された気がする。
〜のreactionとか海外の人たちがこぞってあげているのもどうなのかも。
自分の考えをどこかで確かめたい、正解が欲しい、という気持ちを、AIとの会話や考察動画を見ることで満たされると考えられていて、まぁまぁ納得した。
私は三宅さんほど考えが回らないけれど、世の中そうなっているんだと実感した。現に自分もAIが生活に入り込んでいるし、映画やアニメの考察動画を見て、自分の答えが、どこが間違っているのか合っているのかを確かめたい欲があったからだ。(〜のあのシーンはこう言う意味があった、こう言う伏線があった、、など)
この本で言う中の、推しと言う概念に関してだと、2026年本屋大賞にノミネートした、朝井リョウさんの「インザ・メガ・チャーチ」にも現れていると思う。
学びになった。
Posted by ブクログ
考察はすごく好きでよく考察動画をジャンル問わずに見てしまうのだが、決して正解を求めたことはないな、と最初に感じた。他人の意見や見解を見るのが興味深いと思う程度で作者が正解不正解を出してくるのは二の次だよな…なんて考えていた。
しかし、本書を読んでいる期間中に好きなアニメの劇場版総集編があり映画館に見に行ったのだが、パンフレットの監督インタビューにて、自分の感じたことと同じことを監督も述べていて「だよね!!よっしゃ!!」と思ってしまった。無意識のうちに正解を探していたようで頭の中で感じていた自分の作品の味わい方と、実際の思考にギャップがあると感じれたことが驚きだ。
レコメンドされる動画に影響されたのか、それとも私はまだまだ若い感性をもっているのか…笑。なるべく色んな意見を柔軟に取り入れられるかつ自分の意見を述べることを恐れないような読者でありたい。
Posted by ブクログ
504 audible
「自分の気持ちを大切に」報われなくても、私は私を大切にしたい。こうして言葉にできたことが、まず私の一歩。
心の内側からむくむくと湧いてくる感情を、ちゃんと形にしてあげられる人になりたいな。そんな自分を応援したい
Posted by ブクログ
『批評』と『考察』、それぞれの良さについて、実際の作品や時代の変遷などの社会現象から紐解いて解説された本。
「報われたい」という誰しもが持っている潜在的欲求が考察文化の発展に繋がっている、というのがとても分かりやすく書かれていました。
それでいて、三宅さんが伝える批評の魅力も考察を引き合いにしっかりと表現されていて、自分の感想を持つことの大切さを改めて実感させられる素晴らしい作品でした!
Posted by ブクログ
批評の時代から考察の時代への流れが仕事やエンタメなどさまざまな側面から解説されており、なるほどなぁと大きく頷きながら読み終えました。
国語の時間に、どの文章を読んでどう感じたか、ということを発表する時間がとても好きで、その時間だけは教室で一番多く手を挙げていた私としても、三宅さんと同じく、個人の解釈が認められる批評の文化が薄れていくことを悲しく思います。
仕事や推し活でいうと、私もやりがいより成長を求めてしまったり、推しの目標を一緒に追いかけていたり、時代の流れに沿った行動もしているなと、、
考察ドラマにもまんまと夢中になってますね、、
ただ、それを悪いものと捉えてしまうのではなく、その中でも自分なりの想いや信念、軸みたいなものは忘れずに生きていきたいです。
Posted by ブクログ
流行は人が流行らせるものだとてっきり思い込んでいたが、確かにAIのレコメンドで流行る流行らないは変わるよなと感じた。現に、曲名も歌ってる人も知らないがショート動画で聞いたことのある、今流行っている曲が多い。こうやって、自分の好き嫌いもAIにコントロールされて行くのかもしれない。
Posted by ブクログ
書店で出会って中身をちらっと見た時、「まさに自分のことが書かれている」と思って即決したこの本。
やっぱり読んでよかった!ここ数年の自分のモヤモヤを言語化してくれていて、ここにもまさに「正解」がある気がしてヒットの所以を感じた。
最適化することが良しとされる時代、自分自身もあらゆる場面で最適化のための選択肢を取っている。好きなものが答えられなかったり、推しの卒業と共に推しへの興味が薄れたり…まさに現代の中で生きている感じがする。
自分の「好き」にもっと深く向き合っていきたいとより強く思えるようになった一冊でした。
Posted by ブクログ
SNSやAIに囲まれた令和に生きる若者の性質を、流行から読み解く本。
考察と批評の違いは、本質的には作り手の意図に関係なく、受け手が正解を意識しているかで分けられるということか。ただし、実際には最近の作品は作り手の方が正解のある考察を意識して、伏線を散りばめるなどしてヒットに繋げていることもあると本書では触れていた。このことを踏まえて、現代の作品は作り手が正解を意識しているか意識していないかで1軸、受けてが正解を求めるか(考察)求めないか(批評)で1軸の4象限に分けられると思うとわかりやすい。
三宅さんの本は3冊目だが、適度に寄り道しながら伝えたいことをしっかりわかりやすく伝えてくれるので読みやすい。
結局、人生は全体最適にはならないんだから、局所最適を意識しつつも、正解に囚われすぎずに生きていこうぜっていう気持ちになった。50%で生きていこう。
あと、報われないのが怖いっていうのめちゃくちゃその通りだと思った。就活でES格のやたら時間かかって、もういっそ出さない方が良いんじゃないかって思うのは、失敗が怖いからだと思う。落とされて悲しくなるより、出せなかったんだからしょうがないっていう方が楽だから。でも後悔したり、失敗したりするのは当たり前だと思って前に進めると良いな。
Posted by ブクログ
考察がどうして流行っているのかが一気に解決しました。失敗したくないからこその正解を求めそして報われることが今の若者たちなのかぁ。確かにひと昔前は「努力は報われる」という前向きな言葉。そして少し前は「報われないこともある」というようなネガティブな言葉になり…。そこから、何のためにやってるの?これ、意味あります?みたいな若者が生まれた。そして今は「報われる」ために正解を欲しがる。推し活やChatGPTが流行るのも納得の一冊でした。
Posted by ブクログ
相変わらずな三宅さんの分析力、そして表現力。
本当にたくさんの本を読んでいるんだろうなーとは思うものの、ただ乱読しているだけの人ではここまで「批評」はできない。
単にダメ出しでなく世相をどう見るか。
ループものから転生ものへ、やりがいから成長へ、ググるからジピるへと。今回も楽しませてもらいました。
Posted by ブクログ
自覚あり!!って頭の中でうなずきまくりの読書体験だった。
報われたい、成果が欲しい、正解に辿り着きたい、、、コンテンツが溢れすぎていて、そのコンテンツを消費することが目的になってること、めちゃくちゃあるなあ、と思った。
自分のあれしたい、これしたい、って心の声も、浮かんだ瞬間に捉えないと消えちゃって、時間ができた時には何も考えられなくて虚にYouTube眺める、みたいな、、。
過程を味わったり、その瞬間瞬間に意識向けたりしたいなと思った!!
Posted by ブクログ
昨今のSNS選挙を目の当たりにして、なぜ現代のネット空間では、強いものがより強くなるんだろうと疑問に思っていたが、本書を読んで納得した。
本来なら多様な情報にアクセスできるはず環境が、実は単一化されていく。プラットフォームの奴隷になっていく。これは、パブロフの犬と同じだ。
これからは大多数の奴隷たちと、ごく少数の人とで、別の世界を生きていくのだろうか。柴崎友香『帰れない探偵』のような世界だ。読書して映画を観て批評するような人は、「帰れない探偵」として生きていくしかないのだろうか…。
Posted by ブクログ
同世代の文芸評論家による、エモーショナルでやさしい一冊。ポジショントークで分断を煽ることなく、懐かしい事例から未知の文化までが幅広く語られていて飽きさせない。
本書のキーワードは「最適化」と、それによって「報われること」だ。
考察、推し活、界隈文化。これらは一見自由で創造的に見えるが、実は高度に最適化されている。「考察」は単なる遊びではなく、いかに早く、鋭く、“正解”に近づけるかを競う評価の場となりつつあるからだ。
そこには「他者が作った枠組みを楽しむ」という肯定的な側面もある一方、うっすらと減点方式の空気が漂う。考察を否定することは一種の老害化かもしれないが、過剰に制度化された世界への違和感もまた、無視できないものだ。
私自身がこれらと縁遠かった理由も、本書を通じて腑に落ちた。私は「正解の作法」があらかじめ用意された世界に、うまく身を委ねられないことに気付いた。
ラベリングは自分らしさの表明に見えて、その実、アルゴリズムに回収され、最適な棚に陳列される行為に他ならない。『世界99』で描かれたような“分類される世界”そのものだ。
半ば自動的に形成された界隈には、すでに正解がある。そこでは居場所が得られる代わりに、オンリーワンであることは難しくなる。
本書では若者文化を決して断罪することなく、その合理性を丁寧に解きほぐしている。だから読後は単純な批評ではなく自分自身の立ち位置についても問われることになる。
「最適化の外側に立つことは本当に自由なのか、それもまた別の最適化にすぎないのか」と自分に矢印が向く。
単なる若者論ではなくプラットフォーム時代における“生き方の作法”を問いつつ現代のスタンダードを示す一冊だった。
Posted by ブクログ
実力主義が進むところまで進んでしまったからこそ、時間とお金が与える幸福度が過大に評価されている。そんな社会だからこそ、より明確なより効率の良いものに目を向けるようになってしまった。
あらゆるものに対して報酬を求める若者というのが、この本の中で特にスポットが当たっていた。
人を満足させるコンテンツを作るには、刹那的な快感はもちろんのこと、そのあとも楽しめるような仕組みを作る必要がある。
最適化されたものに身をまかすのもいいが、自分の意思、直感に従うのも間違いなく人生を豊かにする。
Posted by ブクログ
読みやすくて、平成と令和の同じ時代を生きたオタクにはすごく共感した。
令和の高校生を語る上でスキップとローファーの漫画から多く引用されていた。少し読んだことはあったけど、この本を読んでから改めてスキップとローファーを読むとゆるい日常感を楽しむだけじゃなく登場人物のコミュニケーションの取り方や界隈化について考えながら見れるようになった。
Posted by ブクログ
三宅さんにいつか会えることがあったら、いつも面白い話題をありがとうと言いたい。
これは、本当に面白い話題だった。
考察=正解がある→報われる体験が多い
批評=正解がない→報われる体験が少ない
若者は、報われたい気持ちが強いのだろうなと思う。SNSでキラキラ、楽しそうな人生を送っている人がわんさかいて、それを毎日のように見ていたら、報われたいと思う気持ちが強くなるよなあと思う。比較対象が多すぎる。そもそもの土俵も違うのに。
たしかに、カテゴライズを無視して、自分を知ることって三宅さんの言うとおり時間がかかるし、正解もない。これって難しいけど、人生においてすごく価値のある面白いことだと思う。そんなふうに周りを気にせず、自分の思う楽しいことを見つけて生きていくことが、今のプラットフォーム社会には大切なのかもしれない。
Posted by ブクログ
つい正解を求めてしまう
自分のキャラを演じてしまう
わかりすぎて辛かった。笑
自分だけの感性を大切に、しかし情報も上手く自分に繋げて共生していくことが大切で
やはり読書は視野を広げてくれる奥深い趣味なんだなと。
Posted by ブクログ
『考察する若者たち』を読み終えて、まず胸に残ったのは、いまの私たちが「正解」という言葉に、驚くほど過敏になっているという感覚だった。
映画を観ても、ドラマを観ても、音楽を聴いても、ただ感じるだけでは終われない。どこかに仕掛けがあり、意味があり、回収されるべき“答え”があるはずだと無意識に構えてしまう。その姿勢が、感想ではなく「考察」という形で定着していった過程を、本書は非常に丁寧にすくい上げている。
この本が扱っているのは、若者の知的好奇心の高まりでも、思考力の向上でもない。むしろ、なぜここまで「当てにいく読み方」が広がったのか、その背後にある社会構造と欲望の話だ。
著者が示す大きな転換点は、「批評」から「考察」への移行にある。かつての批評は、作品を手がかりに世界や社会、あるいは自分自身を問い直す行為だった。正解は存在せず、作者すら想定していなかった問いを引きずり出すことに価値があった。
一方、令和の考察は違う。そこには最初から“答え”がある前提があり、その答えにどれだけ早く、どれだけ巧みに辿り着けるかが評価軸になる。
映画を観終わった直後に考察動画を検索する。SNSで「この伏線、気づいた?」という投稿が流れてくる。気づけなかった自分が、少し置いていかれたような気持ちになる。本書は、そうした行動を断罪しない。ただ、その背後で何が起きているのかを冷静に言語化する。
そこにあるのは、「楽しみたい」という欲望以上に、「報われたい」という欲望だ。考察が評価され、拡散され、数字として返ってくる環境では、思考そのものが報酬回路に組み込まれる。正解を当てることは、快感であり、安全であり、失敗しない選択になる。
だが、その安全性こそが、考察を空洞化させていく。正解があるとわかっている問いに向かう思考は、世界を広げない。むしろ、どこまで行っても「想定内」に留まり続ける。
本書が鋭いのは、考察文化を若者の問題として切り離さない点だ。SNSやプラットフォームの中で、誰もが評価に晒され、誰もが「無難な正解」を選びやすくなっている。若者はその最前線にいるだけで、同じ構造の中に、すでに私たち全員が組み込まれている。
アルゴリズムは、好みを最適化してくれる。MBTIや性格診断は、自分を理解した気にさせてくれる。おすすめは、外れない選択肢を差し出してくれる。その結果、「自分らしさ」は探すものではなく、ラベルとして受け取るものに変わっていく。
本書の中で繰り返し語られるのは、最適化が進むほど、個別性は削られていくという現実だ。多くの人に刺さるものは、誰にとっても薄い。失敗しない道は、後悔もしにくいが、手応えも残らない。
では、考察する若者はどうすればいいのか。この問いに対して、本書は決して派手な処方箋を出さない。
答えとして示されるのは、むしろ不器用で、効率の悪い態度だ。「最適かどうか」ではなく、「やりたいかどうか」を判断基準に戻すこと。評価されない時間、数字にならない経験を、あえて引き受けること。正解がわからないまま進む不安を、完全には消さずに抱えること。
夜更かしして動画を流し続けるより、一冊の本を最後まで読む。おすすめされないジャンルに足を踏み入れる。「自分には向いていない」と言われそうな場所に、あえて近づいてみる。本書が提示するのは、そんな小さくて現実的な実践の積み重ねだ。
考察をやめろ、と言っているわけではない。考えること自体は、むしろ肯定されている。ただし、考えることが「安全圏に留まるための理由」になっていないか、自分に問い続けろという姿勢が貫かれている。
『考察する若者たち』は、文化論でありながら、強烈に個人的な本でもある。読み進めるほどに、「これは自分の話だ」という感覚が離れなくなる。正解を欲しがった瞬間。評価を気にして動けなかった瞬間。考えすぎて、何も選ばなかった時間。
読み終えたあと、世界が劇的に変わるわけではない。だが、次に「答え」を探そうとしたとき、ほんの一瞬、立ち止まるようになる。その違和感こそが、この本が与えてくれる最大の価値だ。
考察することをやめる必要はない。ただ、考察の先に、ちゃんと自分の足で踏み出す余地を残しておくこと。この本は、その余地を静かに取り戻させてくれる。
考察する若者である前に、迷いながら選ぶ人間であるために。いまこの時代を生きる誰にとっても、手元に置いておきたい一冊。
#2026年5冊目
Posted by ブクログ
ライトな文で気軽に読める
昭和生まれの私としては、「ええええ!」と思う事もあったが、後輩の行動と照らし合わせるとなんだが腑に落ちる所もあり。
でも、これも人それぞれであるので、この本を読んで若者の生態系の「考察」ができた、と思わず、こういう部分もあるんだなぁ、と自分の見識を広げたものであると考えてたい。
Posted by ブクログ
令和のヒットコンテンツとその裏側の背景を分かりやすく解説していて面白かった。正解や報われたい欲求によって考察文化が形成されていくのは確かになと思った。単純に楽しいや面白い、感動したという感情だけでなくその先の結果を意識してしまうことはよくあるなと読んでいて実感しました。もっと自分固有の価値観や意見を大切にしていいと応援してもらったような気分でした。
Posted by ブクログ
「萌え」から「推し」へ、「批評」から「考察」へという現代の風潮に対する見立てには、なるほどなと思うところが多かった。自分を周囲に合わせて最適化するために、ラベリングや取り敢えずの正解を求めてしまう若者像には、現実に出会ってきた10代〜20代の姿がオーバーラップしたし、説得力があった。
しかし、終盤の、だからこそ自分の欲望に向き合い大切にしていくべきというまとめ方には少しがっかりとした。なぜなら、自分の欲望は他者の欲望であるというのが、この本の要旨であると捉えて読んできたからだ。最適化に抗う必要があるのか、最適化に抗おうとすることも最適化という枠に回収されてしまうのではないか、なぞと、ぼんやり考えた。
Posted by ブクログ
平成から令和になって若者たちの考察の変わりようを知ることができて興味深い。作者の考える正解を当てに行く、報われたいという考察は、無駄や遊びを排除するコスパ意識とも根は同じとこなのかなと感じた。
Posted by ブクログ
書店1位に惹かれて購入。
まえがきの1ページ目がかなり惹き付けられる笑
章のタイトルを見て購入し、4章辺りで中だるみ、もしくは離脱する方が多いのでは?と私も気づけば考察…
人は常に個と集団を繰り返しながら人類史を歩んでいる。私はプラットフォームの進化により、平成後期の個を重んじるターンから集団に戻って来ていると感じていた。
しかし、この本を読むとそれは人々が本当に求めた集団なのか?適正化され、気付くとそこにいて、そこにいないことからの恐怖なのか。深く考えるきっかけになった本でした!
こういうタイプの本を読んだ経験が浅いので、文献の引用が多く、次の読みたい本が広がる本だな〜と感じた。