あらすじ
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
芥川賞作家が挑む、痛快・世直しエンタメ!
「こいつらを成敗できるのかと思うと、
わたくしも俄然、興奮してきました」
パワハラ、詐欺、痴漢えん罪、書店万引き――。
裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。
ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、
その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ、痛快無比の世直しエンタメ!
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Posted by ブクログ
ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。パワハラや詐欺などの現代の悪を断罪する。痛快な復讐の裏に潜む、人間の闇と変節を描く連作短編集。
復讐という劇薬がもたらす、一瞬の「見せかけの温かみ」を感じる一冊だった。
物語の前半、読者はダークウェブに潜む「子供部屋同盟」が理不尽な悪を裁く様に、胸が軽くなるような痛快さを覚える。しかし、後半に進むにつれて、その救済の裏側に潜む「人間性の欠落」という真の恐怖が牙を剥く。
特に印象的なのは、パワハラから救われたはずの人物が、幸せな生活の中で、かつての自分と同じ苦しみを他人に与えかねない発想を自然に抱いてしまう描写だ。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」という言葉通り、人は苦痛から解放された途端、あんなに切実だった苦しみを忘れる。他人の痛みに対して、たやすく鈍感になってしまう。過去の経験を自らの糧とせず、安易な救済に頼ることの危うさがそこにはある。
その一方で、いじめに苦しむ小学生が、復讐の手段として「殺人」を選ばなかったという結末には、一筋の希望が灯る。もし安易に殺意を実行していれば、彼女は一生、自分だけが知る重い十字架を背負い続けることになっただろう。彼女の思慮深さが、破滅を回避させた。
私たちは、ネット民として無自覚な正義を振りかざす側にも、そして大切な人を守るために深淵を覗き込む復讐者の側にもなり得る。この物語は、人工的な光に照らされた現代社会で、私たちが何を「礎」として生きていくのかを、冷徹に、そして鋭く問いかけてくる。