あらすじ
出来のいい“ぼく”と違って、グズな弟は、家庭教師を何度かえても効果なし。高校進学をひかえ、何とかしたいと焦る母。6人目の家庭教師・吉本の出現で、ついに変化が! 経歴も風貌も型破りな吉本は、弟を逃がさず、体育会系ノリで徹底的にしごいていく。両親の期待は弟にうつり、優等生だった“ぼく”は、だんだん勉強をサボリ気味に……。受験に振り回される一家を描く、第5回すばる文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
2013年購入
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久しぶりに読んでみた。13年に買って読んだ当初はドラマとの違いにただ驚いていたけど、大人になってから読むとなかなか面白い。
慎一の堕落していく姿に怒りきれない両親、茂之には強く言えるのはそれまでの2人の性格の違いか。無駄に達観してる慎一は人生へのやる気がなくなったら更生できる未来が見えないし、茂之はもともとの性格からこうやって人生を逃げ続けていくんだろうって考えるとこの家族は救いようがなくて可哀想。
昭和の時代はモノが溢れていない分、勉強のしやすい時代だとは思うが勉強嫌いの子供からすると生きづらかったのかなとも思った。
Posted by ブクログ
映像化された同名の作品には全く触れなかったので、変な先入観を持たずに小説版『家族ゲーム』を楽しむことができた。(「ドラマ版と全く違う」といったレビューが多かったので、ラッキーだったのかも。)
そこはかとない息苦しさを感じる作品だった。
その要因は移動が極端に少ないからであろう。この物語の中心は語り手である慎一の部屋での出来事と、その部屋の窓から見える光景である。この作品を読んで、私は『SAW』シリーズ1作目をまず思い起こした。四角い部屋の中にとらわれた二人。ワンルームシチュエーションを覆う、閉塞感や絶望、緊迫感といったものは作風は全く違えど、この『家族ゲーム』にも当てはまる。ジグソーのように慎一が観察者になっていたのも不気味さを喚起する。
どこへもいけない苛立ち、窮屈さ。それらを抱えている慎一は弟の家庭教師として雇われていた吉本の海外旅行の話に、「思わず大声を出してしま」うほど食いつく。
この息苦しい六面体の中から抜け出し、親のしがらみから解放されることがきっと慎一の「したいこと」なのであろう。しかし、高校生の身分ではそれも叶わない。そして親への抵抗策として彼が選んだのは、どこにも行かないこと、つまり引きこもりである。ここではないどこかに行きたいが故に、引きこもりになってしまう。なんとも逆説的で、皮肉だ。
巻末の解説を担当している高橋源一郎氏の文章はとても興味深かった。
もし自分が人の親になってからこの作品を読み返したとき、違った作品の捉え方ができるかもしれないし、また、なぜ『家族ゲーム』という題名になったのか、現時点で自分なりの答えを持たないので、それも一考の余地がある。
読んで損はない作品であると思う。
Posted by ブクログ
先日終わったドラマと違い、全く救いのない結末にビックリ。
いかにドラマが原作を膨らませて作ったかが分かった。
私としては断然ドラマのほうが好き。
Posted by ブクログ
話題に便乗して読んだ本。
そのページ数は少ないものの、ぎっしりと作者の考えが詰まった良い作品だった。
家族関係と教育。それは子供の人格形成に深く関係してくる。
子供の自主性を育てるにはどうすれば良いのか。対して常識とマナーとモラルを強いるにはどうすれば良いのか。
少なくとも自らがそれらを身につけていないといけないと思うが、それだけでも上手くいかないと思う。
そしてそれはこの本に答えは出ていないと思うし、分かっている人は本当に少ないのではないか。
それゆえ、親になる前から深く考えなければいけないと感じた。
こんなことを沢山考えさせられた、読んで良かったと思える本でした。
Posted by ブクログ
弟の家庭教師に雇われた風変りな大学生により変わり出す、ある兄弟の日常を描いた物語です。
家庭教師の手腕を見せる物語だと思って読み始めましたが、作品の趣旨は想像していたものと違っていました。
外側に出られない子供たちを始めとして、この作品で描かれる種々の問題は現代でもありふれたものです。
それだけに兄弟の状況全てを家族の問題とするのはやや難しい気もしますが、問題の一面を簡潔に浮き彫りにしたという点では、成功しているかもしれません。
兄の状況とともに観察したまま終幕を迎えますが、今なお問題の解決に動き出せていない、読者の時代をも批判的に捉えられていることが残念でなりません。
Posted by ブクログ
家庭教師によってあらわにされた家庭の不協和音、兄慎一の感じる不安とこわれていく母親との関係。あるいは弟の得体のしれなさ。こういう父親はさすがに少なくはなったが、基本スタイルは変わらないとあらためて感じた。