【感想・ネタバレ】私を知らないでのレビュー

あらすじ

中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。「僕」はキヨコの存在が気になり、あとを尾行するが……。少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在。そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは――。メフィスト賞受賞の著者による書き下ろし。心に刺さる、青春の物語。

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ネタバレ

面白い!

私は小説はあまり読まないのですが、この本は熱中して読んでしまいました。ただの恋愛小説に終わらず、現代社会の問題点をうまく投影していて大変興味深かったです。最後は賛否両論ありますが、私はそれも含めてこの作品の良さだと思います。高校生の皆さんに是非読んでいただきたい作品です!

#アツい #切ない #感動する

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2022年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「みんなに感謝してほしい。食事の前後に。服を買う時も。寝る前も。死ぬ直前にも手を合わせて声に出して感謝してほしい。そう感謝するべきなのよ」

「僕、生まれて初めてあの言葉を使うよ。あれを言うのは今しかないって感じだ」
「のび太、心の友よ!」
「僕はのび太じゃねぇ」
「俺はジャイアンでもねぇし」
僕たちはインターホン越しに笑い合う。

一人の方がラクだと言うのは簡単だ。自主的に一人になるのもそれほど難しくない。でも周囲の意図により一人にされるとかなり堪えるのだ。予想の何十倍も効いた。無視いうのは見ないことじゃなかった。その反対だ。常に監視されている。正しく無視するためには僕と一定の距離を保たねばならないのだ。だからみんなは僕の動きを把握しようと注視する。
狡猾な生徒たちだ。自分の心を穢さずに人の心を削る方法を知っている。

もちろん死は哀しい。でもそれで終わりじゃない。その先がある。遺された人たちには未来がある。哀しみをコンパクトに携帯するすべを習得し、前へ進まなければならない。

大人たちは言う。教室の中のことしか知らないのが子供の弱点だ、と。でも僕たちは教室の中のことだけなら大人よりもずっと深く知っている。

それはキヨコの求めた『普通』ではない。足踏みや回り道のない人生。みんなが当たり前のように享受している普通の人生を送りたいのだ。高校、大学と進学し、普通に就職して、普通に結婚して、普通の家庭を築くことをキヨコは望んでいたのだ。小さな望みだ。同級生同士でそんな話をしたら笑いものにされるだろう。でもキヨコにとっては高いところにある望み。精一杯手を伸ばしても届かなかった望みだ。なんでだ?なんでその小さな望みを誰も叶えてあげられない?世の中にはお金は溢れ返っているし、親切な大人だって少なくないし、古今東西いたるところに神様が蔓延っている。それなのになんでキヨコに『普通』を与えられないんだ?

この作品がおもしろいのは、こういった登場人物たちの多くが、見たままではなく、本人が思っているままでもない、ということが次第にわかっていくところだろう。

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2021年09月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「キヨコ」はタフで、でもそのタフは痛みを感じないんじゃなくて、痛みに耐えるタフさなんだと思う。
そのタフさで弱くて嫌いなコンプレックスだらけの醜い「進藤ひかり」を「キヨコ」は隠していたと思うと胸が痛い。

無駄に真っ直ぐな高野とどこか淡白で薄情なシンペー。
キヨコを助けようとする二人は全然違うけど両方とも間違ってなんかないと思う。

個人的に印象的だったのは
「誰かの屍の上に俺らの世界は成り立っている。だけど、謝るな。償うな。死者の恩恵を受け入れて無駄にするな。それが嫌ならとっとと死ね。(要約)」
とシンペーがある事件がきっかけで引きこもりになった高野に言いはなった場面。
みんなが受け入れたくないことだけどそうすることはきっと間違ってない。
だから「キヨコ」も胸を張って幸せになれますように。

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルや裏の説明書きにある「キヨコ」の不思議さに惹かれて読みはじめた。登場人物は一人一人過去や現在に話したくないことを抱えており、それらの奇妙な人間関係が物語の中心となる。キヨコは高野と付き合ったが、高野が不登校になったあたりから黒田とキヨコの付き合いが長くなりどのような関係になっていくのかというところも読んでいて面白かった。また後半にかけてキヨコの秘密がどんどん明らかとなるところも必見であり、ラストの「終章」では黒田の大人になったときの描写でお姉ちゃんが出てきて、お姉ちゃんなんていたっけ?と疑問に思った。しかし、ドイツ製の家電屋の話からもしかして?と思ったらそのまさかのキヨコが養子となり黒田のお姉ちゃんになっていたことを知り驚いた。黒田や高野(アヤは分からないが)が両親に幾度となく説得したおかげでキヨコは普通の生活を手に入れられたと知ってホッとした。最後に「序章」の話に繋がり納得した。

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2022年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中学生としてはその過去から常に冷めた客観的な思考を持つ主人公が転入した中学で出会う、キヨコとの奇妙な関係。
向日葵、うさぎ、里親制度、通り魔事件、年金不正受給など多くの伏線が張られており最後まで読者を楽しませてくれるし、何より中学生の心の襞をとても的確に、納得性を帯びながら提示してくれる。
第13章大当たりでの表彰シーン、第14章高貴での父子のラーメン屋でのシーン、第15章もっと陽のあたる場所でのキヨコとの絶頂の戯れ、第16章道化師での滑り台下での告白で、冷めた主人公の感情が開放され躍動し、盛り上がります。
主人公にとっては少々残念なラストではある。高野家がキヨコを養子にする展開を読みたかった。
作者の他の作品も気になりました。機会があれば手に取りたいです。

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2021年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私を知らないで

銀行員の子供として転入を繰り返しているが故に、シニカルに一歩引いて考える主人公の少年と同じ時期に転入してきてクラスを揺さぶるもう一人の少年。そして、クラスから無視されている美少女。
様々な学校でのエピソードによって微妙に変わる三人の関係が、学園祭と通り魔事件で大きく動くとき、少女の秘密が。。。
竹蔵もひねた性格なので、ある程度は理解できますが、こんな中学生いないだろう?というところが残念です。
それから、少女の謎もある程度途中で推測できてしまうところもいまひとつ。
この作者の物語は、プロットや謎から組み立てる作り方だと思いますが、もう少しそれを見えないように組み立ててくれると良いのになあ。

竹蔵

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2025年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「プールの底に眠る」から二冊目の白河作品。白河三兎の登場人物はみんなかなり理屈っぽいのだ。たしかにそれが少年少女期の一つの思考回路であったりもするけど。
だから少し発想や展開に鼻白むことがないとは言えないいが、甘ずっぱさや軽快さに惹かれ読まされてしまう。ぐいぐいと。きらいなわけない。
特に学生時代にはそんな生徒間での機微があったのかなんて気づかない鈍感な青春を過ごしてしまった自分には、面白く追体験した。

途中、重い暗転(ばあちゃんの事)があるなと早々に気づいてしまったけど、気になって一挙に読んだ。どう話を落とすんだって。
ハッピーエンドな感じだけど、未来永劫に続きそうな主人公の苦しみを想像するとなぁ。ハッピーエンドなのかな?

正直いうと自首するところまでは、よい作品と思った。
そこから先の解決編は解決に感じないしファンタジー過ぎる気もするし、それを引きずってか恋愛成就もストンとこない。シンペーは一生子供の頃から被ってたような仮面をつけて、一生自分を凍結して生きるのか。

自首で終わるストーリーもあったんじゃないかな。それじゃ「薄情」すぎるか。

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2021年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

達観したような主人公(黒田くん)が嫌いだったけど、人の繊細な気持ちの変化に気づいて、望むような行動ができて、好きな子に言い訳したり子供らしい一面もあってますます嫌いになった。

序章で「好きな子が結婚したのかな?」って感じたけど、最後の展開は予測できず話にどんどん引き込まれた。

黒田くんは達観してるようで、じぶんの恋には本当に気付いてなかったんやなあ。
キヨコの結婚相手は高野くん?

ミータン(クラスのボス)もアヤも好き。
人は生まれた環境で生き方や人間関係をレールにはめられてしまうように感じるけど、それだったら救われないから、過去の原因を追求するんじゃなく、自分で未来を切り開いていきたい。

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2021年03月13日

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