あらすじ
幼い日に実の母と離れ、弦楽器職人の里父のもとで育った中学2年生の時本拓実。
10年の委託期間を終え、実母の家へ戻る時間が迫っている。
音楽が導く、里親との別れの半年を描いた愛の物語。
note主催「創作大賞2023」受賞後第一作!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
今回の本は養育里親のストーリーです。
養育里親は期限があるゆえに別れの日がやってくる。
そのタイムリミットの日に向け主人公が揺れ動くさまが超リアルに描かれています。
環境に振り回されてようやく辿り着いた安住の地が終わるとなりゃ動揺もするよな、と思いました。
諦めの境地になっちまう気持ちもわかる。
そんな彼が素敵な廻りあわせで変わるんです。
特に後半の盛り上がりがいいと思いました。
本作は大人視点でも子供視点でも学びの多い作品なのかなと感じました。
養育者達の考え方は参考になりまくると思いますし、大人も完璧じゃないと認める部分も良いです。
少年の苦しむさまに圧倒的なリアリティがありました。
主人公は諦観に染まる中学二年生。
つらい生い立ちゆえに心に枷を付けたまま生きてきた彼が、育て親のもとを離れる期限が迫るなかで、感謝を形にしていこうと足掻きます。
里親でイメージするのとはまるで違う養育里親制度の存在を初めて知りました。
大好きな場所に居られる残り時間に葛藤する少年の感情が、爆音さながらに魂にまで響くような、そんな感覚。
序盤で内向的すぎる少年にモヤっとする瞬間もあったんですけど、気づけば少年の変わりゆく心の動きから目が離せませんでした。
冷めきった少年が熱を帯びていく流れには、美しい調べに全身が泡立つような喜びがありました。
やさしさの化身のような両親や元気印の中学生二人なども魅力いっぱいで、おじいちゃんとおばあちゃんも絶妙に物語を彩ります。
重い事情を抱えた主人公の成長ぶりを実感できるラストは結構好みです。
作中にこんな言葉が出てきます。
「自分を幸せにできるのは自分自身。」
困難な境遇や別れに向き合いながら、主人公がバイオリンの音色と自身の成長を通してたどり着く、前を向くための気づきで、私はこれに心から感動したんですよね。
でも考えてみれば当たり前のことで、他人の言動や行動にいちいち左右されて、いちいち落ち込んで悲しんでってあほらしいなって。
もちろん、自分のことをどうしても好きになれない人だっていると思います。
でも、最終的に自分を幸せにできたり自分の味方でいてくれるのは自分自身なんだから自分のことをもっと愛してみてもいいんじゃないかなと思いました。
これからの人生それぞれ山あり谷ありだと思いますが、みんなの人生に幸在らんことを。