あらすじ
20年前に歴史の一切が“抹消”された、かつての独裁国家〈イグノラビムス〉。今や多数の企業が参入し、理想郷となったその国で、突如児童200名以上が原因不明の奇病を発症した。世界生存機関から派遣された私は、現地調査で人々の抱える闇に気づく。だが悲劇は再び目の前まで迫っていた。歴史を奪われた国に隠された衝撃の真実とは。混沌を生きる全ての人に捧ぐ、エンターテイメント超大作。
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Posted by ブクログ
取っ掛りにくいかなと思ったけど、
ストーリーだけでなく、登場人物の会話、提起される問題、すごく沢山の要素が盛り込まれ、一見ばらばらのことが思考としてひとつに結ばれていく、作品自体の厚みが凄くて、良い本を読んだなと思えた。
アルフォンソの思考がベースだが、かたくなな個人の主観ではなく、色んな人の思想や人生への興味、それを経て自分の思考を常に広げていく姿勢は、読んでいる私の思考のステップにもなった。
国家や文化、大きな切り口からアイデンティティや家庭、個人的な問題、生を受けること生み出すことから目の前の人と関わること、マクロとミクロの入り交じる面白い描き方。
すごく好きな作品になったし、また読み返したいと思った。
Posted by ブクログ
現代のSFのお手本のような傑作で、伊藤計劃さんを想起させた。抹消、反出生主義、疫病調査等を主軸として国と人と組織の思惑が交差する骨太なSFに仕上がっていて読み応えがある。
歴史を抹消された国で起きた原因不明の病気を調査するうちに、隠された真実に向き合うことになるアルフォンソ。彼と仲間が本当に魅力的だ。
哲学や人文学の知識も盛り込まれていて、作者の描く世界観に引き込まれた。
映画一本見終わったような、何か大きな事件に携わり、それを終えたような達成感が読んだ後に残った。
Posted by ブクログ
とにかく壮大な物語でした。
個人としての生、民族としての生という重たいテーマを扱いながら、それを謎の病やテロというサスペンスで包み込み、イグラノビスという国を舞台に徹底的にリアルに描き切る、そんな物語でした。参考文献に並んだ書籍を眺めるだけで、この重奏的な物語の特色を感じることができます。
Posted by ブクログ
人は皆、属性を持って産まれる。それはアイデンティティとなり、呪いとなる。歴史が〈抹消〉された嘗ての独裁国家に於いて、子供たちに起きる発作の原因は何か。現世界の延長線上にある近未来を舞台に、生命倫理と生存の円環、その他多くのテーマが扱われる。疫学調査に係る鋭利な会話劇、他者との関係性を巡る繊細な心理描写、国際的諜報譚の緊張感。面白かった。