【感想・ネタバレ】天災と日本人 寺田寅彦随筆選のレビュー

あらすじ

地震列島日本に暮らす我々はいかに自然と向き合うべきか――。災害に対する備えの大切さ、科学と政治の役割、日本人の自然観など、いまなお多くの示唆を与える寺田寅彦の名随筆を編んだ傑作選。解説/編・山折哲雄。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

震災の時からずっと読みたかったのですが、本屋で見つけられず、最近やっと購入できました。
昭和の災害について書かれた文章なのにそのまま今も通用する。全く進歩していないのかな日本人。

(読中)面白いです。そして文章がとても読みやすい。戦前の文章なので少し敷居が高かったのですが、すっと頭に入ります。

(読後)何回も読み返すべき本だと思った。
日本人の自然観は日本人の宗教観など精神部分にも触れとても興味深かった。寺田寅彦の時代からこちら、日本でも自然破壊が進み、里山は崩壊し、人の住むところはコンクリートとアスファルトにおおわれて久しいが、日本人の芯の部分はまだ変わっていないと、いいなと思う。

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2021年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

寺田寅彦は、日本文化や日本事情の授業を担当した私にとっては、よく見ていた名前だったので、良書だと思っていました。で、実際に読んでみてそうでした^^
「天災は忘れたころにやってくる」という警告を発したということでも有名な寺田寅彦。この随筆集に収録されているのは、昭和25年ぐらいまでのもので、「天災と国防」という短編は昭和9年(1934年)、日本が中国大陸に侵略し始めていたころの時代に、書かれた随筆です。
この「天災と国防」は、随筆集の冒頭に収録されていますが、文明と災害というテーマで、「陸海軍の防備が十分であっても肝心な戦争の最中に安政程度の大地震や今回の颱風あるいはそれ以上の者が軍事に関する首脳の設備に大損害を与えたらいったいどういうことになるであろうか(20頁)」と、暗に身命賭してお国のために戦争するということを貴い愛国心・大和魂などとしていることに、疑問を呈し、批判的な文脈で述べています。なかなか読みごたえのある随筆集です。
この随筆集を編者である山折哲雄氏は、冒頭で寺田寅彦がいう自然の二面性、「厳父のごとき自然」と「慈母のごとき自然」について、「歴史的な背景を含めて科学的に明らかにした」と解説していますが、そのことを感じられるのがこの随筆集の最後に収められている「日本人の自然観」です。その短編の見出しを列記しますと、

緒言
日本の自然
日本人の日常生活
日本人の精神生活
結語
となりますが、文体・表現法は随筆的ですが、ほとんど論述的な構成で、これもまたかなり読み応えあります。
結語にある氏の要約だけ引用しますと、「日本の自然界が空間的にも時間的にも複雑多様であり、それが住民に無限の恩恵を授けると同時にまた不可抗な威力をもって彼らを支配する、その結果として彼らはこの自然に服従することによってその恩恵を十分に享楽することを学んで来た、この特別な対自然の態度が日本人の物質的ならびに精神的生活の各方面に特殊な影響を及ぼした(143頁)」。前述の山折氏が、「なぜ今『寺田寅彦』なのか」と切り出しています。山折氏が編集したこの随筆集は2011年に角川学芸出版から出ています。そうです、あの「3.11」があった年です。そういう意味で、災害への警告・反省を促したものとも読み取れますが、今読み終えて思うに、暴力・武力がきな臭く出ている今でこそ、この本を読むことで、もっと人類史観的に立って考えた方がいいんじゃないかな?行動した方がいいじゃないかな?と思いました。


おススメの一冊です。

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2015年03月07日

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