あらすじ
夏休みの初日、目が覚めたあたしは、見知らぬ体育館にいた。周りには7人の少年少女と、着ぐるみを着た謎の人物が発した言葉――「キミたちにはこれから、一本の劇を演じてもらいます」。なぜあたし達はここに連れてこられたのか。そして、劇が完成した先に待つものとは。その理由と物語の結末が明かされた時、読む者の心も炙り出されていく。吉川英治文学新人賞受賞後第一作。人間の心の深淵に迫る青春エンタメ大作。
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Posted by ブクログ
いままでのハードな世界観から一転したような青春物語。
これまでのものとはテンションがぜんぜん違う!(笑)
これはほとんどの人が読んでも楽しめると思う。
はじめはどうして集められ、閉じ込められたのかも分からなくて、そこから徐々にお互いのことを知り、演劇をすることの理由が分かっていく過程が面白い。
自分がしていたことに気づき、しかもそれに向き合うなんて誰もが出来ることではないはず。
劇の結末はどうするかを自分たちで考えて、こうするしかないって答えを劇中劇で指し示すなんてまじスマート!カッコイイ。シンシンって映画の演劇練習とかに近い感じなのもよかったですね。
今作に出てくる子供たちの家族は決定的に壊れる1歩手前にいるよう、一家離散までいってないんだけど彼らの行いが誰かを傷つけたことは間違いなくて。自分に罪の意識もなくやっていることなんて山のようにあるんだろうな、良かれと思ってしていたことだと信じていたのに、相手にはそれが何よりも辛いことになってる。
荻堂作品はやっぱり会話が最高ですね!コタロウの無邪気な振る舞いを追及する場面と主人公が良いことをしてるだけだと主張し、それはあなたが言える人だからだよって諭される場面はほんとに良いですね。その行いで本当に助かるひともいたり、いじられキャラになって笑える人なら気にもしないでしょうけど、そうじゃない人がいることを考えろって突きつけられる。作中人物だけじゃなくて読んでる自分にも矢が飛んでくるのもよかったです。
Posted by ブクログ
夏休みの初日、目が覚めたらそこは体育館で、周りには同年代の少年、少女たちがいた。
着ぐるみを着た謎の人物が、集められた8人で劇を演じてもらうと言う。
閉じ込められた中で、8人の中学生は劇を演じることができるのか…。
なぜここに集められたのか?なぜ劇をするのか?
やらなければそこから出られないという状況で、反抗していても無駄だとわかり、演じる彼らたちが徐々に気がついていくのは、自分たちが誰かを傷つけていたことを知ることだった。
事実に目を背けては、何も変わらない。
人の痛みに気づかないで、知ろうともしないで大人になることは許さないと言われているようでもあった。
劇を演じながら彼らはそれぞれ何が正しかったのかを考えていたのだろう。
Posted by ブクログ
読み進めるのが辛い話だった。夏休みを全て閉じ込められた場所で劇を完成させることに費やすという突拍子もない設定。それに関わる大人も気味が悪い出で立ち。???ハテナが一杯で始まり、読み進めるのがかなり辛い。8人の中学生の罪が一人ずつ明らかになり、それに向き合っていく。きっと最後に救いがあると信じて読み進めるうちに、自然と皆を応援していた。大円満で終わらないけれど、それでよかった。それぞれのこの先の人生に幸あれと祈った。
Posted by ブクログ
かがみの孤城を思いだすはじまりだと感じました。
なにか罪があるからそこに送られた。
自分を送った相手は誰なのか、罪とはなにか。
本当にここを抜け出せるのか、なぜ演技をするのか。読者も登場人物も考えることは同じだったはず。この台本もなぜこの内容なのか、この配役なのか。なぜ?がたくさん出てくる物語。
終盤に近づくにつれ、それぞれの罪が明かされていく。すると台本の意味がわかっていき
考えて行動する、ということを知るホノカたち。劇を終えた彼女たちは、成長し、相手のことも考えて行動できるように変わったのだなと思いました。
子供も大人も相手のことをもう一歩思いやる、ということが出来ないことがある。
老若男女問わず考えてみて欲しいなとおもう作品でした。