あらすじ
ビジネス界の閉塞感の正体は何なのか。
日本の企業の活力が衰退している理由は何なのか。
では、どうすれば老化現象を乗り越えられるのか。
次のパラダイムを大胆予測する革新的組織論!
【目次】
第一章 会社という名の不可逆プロセス
第二章 老化した会社の「止められない」症候群
第三章 老化を加速させる大企業のジレンマ
第四章 会社の老化がイノベーターを殺す
第五章 何がパラダイムシフトを阻むのか
第六章 組織の宿命をどう乗り越えるか。
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Posted by ブクログ
エントロピー増大の法則は、会社にも当てはまる
リモコンボタンの増殖は止められない
規則・マニュアルの増加も止められない
会議の肥大化、組織の細分化も不可逆プロセスだ。
混ぜることで価値は下がる。
砂糖と塩を混ぜれば、使い物にならない。
一杯500円のワインと一杯500円のビールを混ぜると一杯1000円の価値のあるアルコール飲料にはならない。もとの二つのものに個性の違いがあればあるほど、混ぜたときの価値の減少も大きいといえるだろう。
たとえばミルクとワインを混ぜたほうが、ミルクとヨーグルトを混ぜるより価値の減少は大きい。
組織の質は混ぜれば必ず劣化するという仮説が、ここから導かれる。 会社同士が機能を補完しあう効果が期待できても、組織を融合すれば特徴がなくなって劣化する。
多様な人材を生かすためには、評価指標も従来の画一的なものではなく多様化させる必要がある。そこまでもいいのだが、重要なのは運用の仕方である。 加点主義を前提としたものか、減点主義を前提としたものかで正反対の方向へ行くのである。
多様な評価指標を減点主義で運用した場合、多面的に無難な人が生き残って金太郎飴集団ができあがる。国語も算数も図工も音楽も不得意でない人が選ばれ、音楽や国語がすごくできる人が選ばれないことになる。
外注化すれば空洞化する。
会社の中のさまざまな業務は、はじめはその会社の人間にしかできない付加価値の高い内容であっても、次第に標準化されて付加価値の低い仕事となり関連会社やサプライヤーへの外注化が進む。 クリステンセンのイノベーションオブライフではアウトソージングに潜む危険性を指摘している。 会社の業務はノンコア業務から順番に外注化が進んでいく。 定型化されて差別化要因と関係がなくなった業務はいわゆるコモディティ化され、外部の複数の会社から調達が可能である。これはROAの最大化を考えるうえでは理にかなっている。
しかし、外注化が、ゆっくりとではあるが確実に、会社の老化に貢献していることは気づかない。
単なる作業、手足を動かすだけの業務が真っ先に外注化の対象に選ばれる。コピー取りは俺の仕事ではない、と手足を動かさなくなる管理職。それでも自分でコピーをとっていた第一世代は救いがある。やろうと思えばできるかもしればい。問題は第二世代である。そんなことは俺の仕事ではないという大義名分を掲げながら、実はやり方がわからないのである。それでも、浮いた時間を付加価値の高い仕事に振り向けられていれば救いはあるが、実際は外注管理という名の思考停止に陥ってしまっているのではないか。単なる手配使となってしまい、コア業務もいつのまにか外注先に移ってしまうという悲劇も他人事ではない。
はじめのうちは自分たちでもこなせるが外注した方がコストダウンできるという理由で外注していた仕事も、徐々に自分たちではできなくなっていき、空洞化してしまう。こうしてすっかり空洞化してしまった会社や事業部に配属になった新卒社員などはさらに悲劇である。自らのコアスキルが全くない状態で発注先の関連会社に対しての管理が求められる。このような状態でもサプライヤーからは顧客として一応の敬意を払われるから、勘違いモードに入る危険性があることが容易に予想される。
大企業で伝統的な事業を担当している花形部門に配属された若手がたどる道は、業界は違っても似たようなものだろう。これは本人の自覚もさることながら、職場としても育成計画やローテーションを考えるうえで十分に留意する必要がある。
Posted by ブクログ
企業の老化現象、いわゆる大企業病や官僚主義について、それが不可逆的かつ必然的に発症するメカニズムについて説得力をもって記述されている。
一定規模の組織に所属している人であれば誰もが経験のあることだと思うが、いかにイノベーターが駆逐されていくかが事例をもってよく理解できた。
会社を人間の人生にたとえ、老化現象を解消するには、子供を作るごとく
器と価値観をリセットするしか方法は無いとの結論は、それまでの一連の文書を読んできた中では妙に納得ができた。
Posted by ブクログ
会社の成長を人生というアナロジーで考察した本書。共感することも多く、とても面白かった。
基本的に、会社の成長は永久ではないこと、成長ステージに併せた機能を具備すべきこと、新陳代謝がなければ死を迎えること、という点が特に興味深い。
近視眼的な見方で考えているようでは、こういう視点からの采配(意思決定)はできないですね。組織の変化が不可逆だという認識を持った人が(マネジメント層に)いない会社というのは、とっても残念。
わかっててやらない(目を背けている)のなら、大罪。
わかってないのなら、愚者。
Posted by ブクログ
私自身が結構な大会社に勤めている人間ですが、本書で書かれているアンチイノペーターがのさばり、思考停止や減点主義、増える一方のコンプライアンス面のチェックなど、大会社の困った実態があまりにも鮮やかに表現されていますので読んでいて笑いそうになりました。
逆に言いますと、今日本の多くの大企業が直面しているのが会社が老化している実態であり、老化を食い止めるのが改革者である「イノペーター」であるのですが、大会社でイノペーターになると孤独な闘いを避けざる得ないのは何ともやりきれない状況ですが、これは中田の会社を見ても事実なのだと思います。
本書ではイノベーターが大会社で生き残る道として3つの処方箋が書かれています。一つ目は「我慢して丸くなる」こと。二つ目は「飛ばされる事」(ただし、飛ばされた先で成功しても、ゆめゆめ本流に戻ろうと思うなと書かれています)。三つ目は「外へ飛び立つ」事が書かれています。
特に「飛ばされる事」は通常サラリーマンとしては負けと取られる事態ですが、イノペーターにとってはむしろ好都合の事態と考えた方がいいとは、現実を踏まえた内容に思えました。
会社の老化が止められないのであれば、個人の生き方を老人に合わせるのか、そうでない道を選ぶのか、日本人に問われているのが今だとの思いがしました。筆者の他の本も読んでみたいと思いました。