【感想・ネタバレ】会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論のレビュー

あらすじ

ビジネス界の閉塞感の正体は何なのか。
日本の企業の活力が衰退している理由は何なのか。
では、どうすれば老化現象を乗り越えられるのか。
次のパラダイムを大胆予測する革新的組織論!

【目次】

第一章 会社という名の不可逆プロセス
第二章 老化した会社の「止められない」症候群
第三章 老化を加速させる大企業のジレンマ
第四章 会社の老化がイノベーターを殺す
第五章 何がパラダイムシフトを阻むのか
第六章 組織の宿命をどう乗り越えるか。

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Posted by ブクログ

【書評】会社の老化は止められない

エンタープライズ企業へのアプローチに対しても非常に有効な考え方。

- [ ] 「全体最適を考えよう」というのは、口では簡単だが、一度部分最適の味を知ってしまった人の後戻りは難しい。全体最適とは一般に部分最適の積み上げではなく、「部分非最適」とセットのものだからである。
- [ ] 「データに基づく分析」というのも取り扱いに注意が必要な曲者。データが取れるのは基本的に「すでに起こったこと」でしか無いからである。当初の目的が「過去のデータから将来を予測する」ものであっても、世の(そして老化した会社の)圧倒的多数を占めるアンチイノベーターはそうは考えずに「過去のデータ」にとらわれてしまう。
- [ ] 世の中の人を「知識・経験の有無」と「創造性の有無」で4象限に分類。イノベーターの足を引っ張るのは、必ずしも発言力の弱い人ばかりではなく、むしろエスタブリッシュメントに所属している、「知識と経験はある創造性の無い人」であることが多い。

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2022年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

エントロピー増大の法則は、会社にも当てはまる
リモコンボタンの増殖は止められない
規則・マニュアルの増加も止められない
会議の肥大化、組織の細分化も不可逆プロセスだ。
混ぜることで価値は下がる。
砂糖と塩を混ぜれば、使い物にならない。
一杯500円のワインと一杯500円のビールを混ぜると一杯1000円の価値のあるアルコール飲料にはならない。もとの二つのものに個性の違いがあればあるほど、混ぜたときの価値の減少も大きいといえるだろう。
たとえばミルクとワインを混ぜたほうが、ミルクとヨーグルトを混ぜるより価値の減少は大きい。
組織の質は混ぜれば必ず劣化するという仮説が、ここから導かれる。 会社同士が機能を補完しあう効果が期待できても、組織を融合すれば特徴がなくなって劣化する。

多様な人材を生かすためには、評価指標も従来の画一的なものではなく多様化させる必要がある。そこまでもいいのだが、重要なのは運用の仕方である。 加点主義を前提としたものか、減点主義を前提としたものかで正反対の方向へ行くのである。
多様な評価指標を減点主義で運用した場合、多面的に無難な人が生き残って金太郎飴集団ができあがる。国語も算数も図工も音楽も不得意でない人が選ばれ、音楽や国語がすごくできる人が選ばれないことになる。

外注化すれば空洞化する。
会社の中のさまざまな業務は、はじめはその会社の人間にしかできない付加価値の高い内容であっても、次第に標準化されて付加価値の低い仕事となり関連会社やサプライヤーへの外注化が進む。 クリステンセンのイノベーションオブライフではアウトソージングに潜む危険性を指摘している。 会社の業務はノンコア業務から順番に外注化が進んでいく。 定型化されて差別化要因と関係がなくなった業務はいわゆるコモディティ化され、外部の複数の会社から調達が可能である。これはROAの最大化を考えるうえでは理にかなっている。
しかし、外注化が、ゆっくりとではあるが確実に、会社の老化に貢献していることは気づかない。
単なる作業、手足を動かすだけの業務が真っ先に外注化の対象に選ばれる。コピー取りは俺の仕事ではない、と手足を動かさなくなる管理職。それでも自分でコピーをとっていた第一世代は救いがある。やろうと思えばできるかもしればい。問題は第二世代である。そんなことは俺の仕事ではないという大義名分を掲げながら、実はやり方がわからないのである。それでも、浮いた時間を付加価値の高い仕事に振り向けられていれば救いはあるが、実際は外注管理という名の思考停止に陥ってしまっているのではないか。単なる手配使となってしまい、コア業務もいつのまにか外注先に移ってしまうという悲劇も他人事ではない。
はじめのうちは自分たちでもこなせるが外注した方がコストダウンできるという理由で外注していた仕事も、徐々に自分たちではできなくなっていき、空洞化してしまう。こうしてすっかり空洞化してしまった会社や事業部に配属になった新卒社員などはさらに悲劇である。自らのコアスキルが全くない状態で発注先の関連会社に対しての管理が求められる。このような状態でもサプライヤーからは顧客として一応の敬意を払われるから、勘違いモードに入る危険性があることが容易に予想される。
大企業で伝統的な事業を担当している花形部門に配属された若手がたどる道は、業界は違っても似たようなものだろう。これは本人の自覚もさることながら、職場としても育成計画やローテーションを考えるうえで十分に留意する必要がある。

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2016年12月10日

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老舗メーカーで生きづらさを感じている技術系人材必読の書である。

会社の成長と人間の一生をここまで詳細に対比する発想は従来ありそうでなかったし、ましてや会社にも老化現象があって、かつ寿命が意識されていないという視点も言われてみると新鮮である。

自分の勤務先も創立100年を迎える老体であり、かつての栄光を引きずるバリバリの老人会社であるが、本書で指摘する老化現象、特に官僚主義とオペレーター型人材の優越が著しい。そうか、だから自分のようなイノベーター寄りの人間は周囲と話が噛み合わないし冷遇されるのか!基本未熟で非常識な社員と思われているのね。まあその通りなんだけど。
そういう恵まれないイノベーターが取りうる道は、①丸くなる、②飛ばされる、③飛び出す、の3つしかないという厳しい現実も。さて、どれを選ぶかな。

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2016年10月02日

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ネタバレ

企業の老化現象、いわゆる大企業病や官僚主義について、それが不可逆的かつ必然的に発症するメカニズムについて説得力をもって記述されている。

一定規模の組織に所属している人であれば誰もが経験のあることだと思うが、いかにイノベーターが駆逐されていくかが事例をもってよく理解できた。

会社を人間の人生にたとえ、老化現象を解消するには、子供を作るごとく
器と価値観をリセットするしか方法は無いとの結論は、それまでの一連の文書を読んできた中では妙に納得ができた。

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2013年06月30日

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■老化した会社

A.老化した会社では「思考停止」現象が頻発する。すなわち、思考が自分中心となり、全体像を考えずに視野狭窄に陥り、具合の悪いことが起これば「私は悪くない」と考えるようになる。

B.老化した会社を活性化できるのは、起業家精神を持つイノベーターである。だが皮肉にも、会社の老化が進むほど彼らを活用できない。なぜなら、会社が成長し、成熟するにつれ、決められた仕事を着実にこなす「オペレーション型人材」が社内で幅をきかせるようになるからである。

C.会社の老化への対処法としては、例えば、次のようなものがある。
・会社の老化は止められないという現実を受け入れる。
・新しい世代を生み出して、世代交代を図る。
・自社の課題を可視化した上で、思考停止に歯止めをかける。
・明確な戦略を持つなど、社員の方向性を統一する。

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2013年06月02日

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是非、皆さんも読んで下さい。考えさせられますと言うか、現在の自分で良いのかと己を省みるきっかけになります。

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2013年04月23日

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まさに今の会社の状況。危機感をもって仕事をする必要を感じました。しかし、感じるだけではだめですね。今までと変わらない。
孤独を恐れずに本物の仕事をしたいです。

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2013年04月21日

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読みながら分かる分かると頷いてしまうような、とても共感性の高い本。
"あるある本”である(そんな言い方があるのかは知らないが)。

会社は不可逆的な変化を蓄積していく。例えば、こんなことだ。
●ルールや規則の増加
●部門と階層の増殖
●外注化による空洞化
●過剰品質化
●手段の目的化
●顧客意識の希薄化と社内志向化
●「社内政治家」の増殖
●人材の均質化・凡庸化

最近よく聞くのは、ちょっとしたミスが分かると直ぐ「再発防止策」。で、それは、どう考えてもたった一人の能力不足や疲労や悪意など。それでも護送船団方式で、ルールやシステム全体、設備設計を変えてしまうというある種の「過剰反応」。重要な事ではあるし、必要な場合も多いが、必要性が吟味できずに、何もかもがこの始末。よって、過剰品質化するし、ルールが無限増殖していく。

かと思えば、社内の別の部署からきた思想家(夢想家)が熱い変革意識をもって「これは何のためにやっているのだ」とバッサバッサ切る。でも、その業務やルールの本質を理解せずに変えるから一部で機能不全が起こり、また元に戻したり、変なパッチ当てのような仕事が増える。外部から見ていると、これは構造的に「変える動機を持つ人」と「変える能力を持つ人」の乖離を象徴した現象であり、コミュニケーションエラーに近い。で、本書にはそういう事が書いてある。

また、考えさせられるのは、「言い出しっぺ」が損をする負のサイクル。組織内でのさまざまな提案が企画になっていき実現するプロセスにおいて、言い出しっぺが「得をする」か「損をする」か。あるいは、従業員が「言い出しっぺが得をする」と考えているかどうか。これらは会社の老化の進行度を測るバロメーターの一つであると。損得を考えて働かねば、″やりがい搾取”される。で、どれだけ会社に尽くしていたって、会社の仲間と引退後に付き合っていく事例は多くない。

こうした"あるある”が書かれるが、それは状況を言語化しているだけであって、対処療法については、深い洞察が無い点はやや残念。それでも、可視化する事で対処を考えさせられる土俵に立てるという事はあるのかもしれない。

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2024年08月22日

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会社組織を生き物のアナロジーで分析するのは、よくあるアプローチだと思いますが、本著では、「エントロピーは増大する」という自然科学の大原則から演繹的に組織論を考察する様が、知的で面白いです。ちょっと前に読んだ、福岡博士の模式図『ベルクソンの弧』をイメージすると分かりやすかった。

P196
また商談の「手離れのよさ」についても発想が正反対である。物売り的な発想では、商談の手離れをよくして効率的に数を多くこなしたいと考えるのに対して、ソリューションビジネスにおける「手離れのよさ」というのは「顧客接点が少ない」ことを意味し、むしろ「手離れが悪く」いつまでも顧客接点が残ることを歓迎する。

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2021年07月17日

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会社の老化現象
・ルールや規則の増加
・部門と階層の増殖
・手段の目的化
・顧客意識の希薄化と社内志向化
・社内政治家の増殖
・人材の均質化、凡庸化

人間の心理の非対称性
・変化に抵抗し、それまでの習慣に固執する
・一度得たものは簡単に手放せない
・期待値ではなく、リスクの大きさに反応する
・縄張り意識をもつ
・知れば知るほど近視眼的になる
・自分中心に考える

老化が進むのは、同じパラダイムの組織が生き続けている場合だけである。
老化した組織においては、イノベーターは存在しても活用されないばかりか、異端児として迫害され、行き着く先は牙を抜かれた普通の人になって埋没するか、転職するか

「敵を作りたいと思うなら、何かを変えようとすることだ」byウィルソン米大統領

会社の成長につれて仕事は標準化され、属人化した仕事は悪とされるようになり、誰がやってもほとんど同じ結果になるような仕事のやり方が推奨される

イノベーターは常に孤独と戦わなければならない

世界を変えるのは未熟と非常識

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2021年02月01日

Posted by ブクログ

その通り!
早く世継ぎを作らねば・・・

大企業病は病気ではなく老化、すなわち不可逆な事象であるという指摘。企業は生物ではないので病気も老化も比喩的表現ではあるが、分かりやすさからすると心地よい。

著者は社会を熱力学からのアナロジーを用いて表現するが、自然と社会を単一の抽象化で語れるのかは、個人的に興味深い。局所平衡をキープするために膨大なエネルギーを投入し、ひたすらエントロピー生成を加速させる、すなわち会社を維持するために大量の人員を投入し、価値創出につながらない意味不明な仕事が増え続けると・・・

<個別ポイント>
人間心理において「ない」状態は同じでも「元から無い」と「無くなる変化」ではとらえ方が異なり、変化の方が圧倒的に大きく作用する、これは変化への抵抗、特に減らす、なくすことへの抵抗につながる。

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2017年05月03日

Posted by ブクログ

「地頭力を鍛える」の人が書いた本。ひたすら会社を人に例えるアナロジーで押し切るのだけど、分析自体は頷けるものの「確かにあるある」で終盤まで対策がない。が、そもそもこの手の本で対策や答えを求める方がおかしいと思っているので、私的には十分な内容。

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2013年12月01日

Posted by ブクログ

わかってることをサブリミナル効果的に何度も言われて、その重大さを刷り込まれる感じ。ただ、そんなにわかりやすい構図ではないというのが、難しくさせてると思うので、懐疑的になる。
わかりやすいものに流れるという話があったけど、今の時代、ITとか、価値が目に見えないこと、わかる人にしかわからないことが最も根本的な難しさの要因に思える。

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2013年10月17日

Posted by ブクログ

人の一生は、若い頃、成長し身体が大きくなり、知識もつき、体力もあったときから、歳を重ねるとともに中年、老年になるに連れて、衰えて行く。身体は弱り、頭はボケ、やがて死へと向かっていく。会社も基本的に人と同じだが、会社だけずっと生きていけると思われていると著者は言う。会社も人と同じように、世代交代し、若くて元気で新しいことを生み出してくれる者に経営を任せるべきだ。意識的に世代交代のメカニズムを会社の運営ルールに入れるといいと思った。

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2013年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

会社の成長を人生というアナロジーで考察した本書。共感することも多く、とても面白かった。
基本的に、会社の成長は永久ではないこと、成長ステージに併せた機能を具備すべきこと、新陳代謝がなければ死を迎えること、という点が特に興味深い。
近視眼的な見方で考えているようでは、こういう視点からの采配(意思決定)はできないですね。組織の変化が不可逆だという認識を持った人が(マネジメント層に)いない会社というのは、とっても残念。
わかっててやらない(目を背けている)のなら、大罪。
わかってないのなら、愚者。

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2013年08月30日

Posted by ブクログ

今の日本国家や会社の実状を的確に分析したもの。あまりにも図星なので笑ってしまうくらい。一番問題なのは当事者達に全く自覚がないこと。自分達が老化していることに気付いていないし、問題とも思っていない。なにせ昇格するためには、可能な限り老人達に取り入る事が重要なので、その人達を否定するなんていう事は絶対考えない。かくして、老人会は綿々と続いていく。しかし、日本の茹でカエル状態も、もう限界。こんな老人だらけの会社に、やれ正社員を雇用しろだの言ったって、自分達の老後の方が大事なんだから、そんな事を考えもしない。この手の本の常で、現状分析に多くのページか割かれ、これからどうしたら良いの?という所が薄いのだが、少なくともルーティンというかアンチイノベーションの領域は激しくコモディティ化するので、その外側で孤独にイノベーティブに生きていくしかない、という未来が見えてくる。しかし、自分も含めこれまでの人生でそんな生き方した事ないし、教育も受けてない。1億人か、路頭に迷う時代になるのだろうか?

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2013年08月15日

Posted by ブクログ

*****
組織内のエントロピーは必ず増大する、その結果として組織は必ず「老化(いわゆる大企業病)」に陥る、という話
ルールが多くなる、標準化が是とされる、業務が細分化される、等々
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具体的な解決策が何かしら提示されるわけではなく(少なくとも私に取っては)、組織の成長ステージ/規模/事業ステージが変わることと「大企業病」を分けて考える思考の枠組みである。
解決の方向性はどのような魂を世代交代を通じて埋め込みたいのかによって異なる。
*****

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2013年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私自身が結構な大会社に勤めている人間ですが、本書で書かれているアンチイノペーターがのさばり、思考停止や減点主義、増える一方のコンプライアンス面のチェックなど、大会社の困った実態があまりにも鮮やかに表現されていますので読んでいて笑いそうになりました。

逆に言いますと、今日本の多くの大企業が直面しているのが会社が老化している実態であり、老化を食い止めるのが改革者である「イノペーター」であるのですが、大会社でイノペーターになると孤独な闘いを避けざる得ないのは何ともやりきれない状況ですが、これは中田の会社を見ても事実なのだと思います。

本書ではイノベーターが大会社で生き残る道として3つの処方箋が書かれています。一つ目は「我慢して丸くなる」こと。二つ目は「飛ばされる事」(ただし、飛ばされた先で成功しても、ゆめゆめ本流に戻ろうと思うなと書かれています)。三つ目は「外へ飛び立つ」事が書かれています。

特に「飛ばされる事」は通常サラリーマンとしては負けと取られる事態ですが、イノペーターにとってはむしろ好都合の事態と考えた方がいいとは、現実を踏まえた内容に思えました。

会社の老化が止められないのであれば、個人の生き方を老人に合わせるのか、そうでない道を選ぶのか、日本人に問われているのが今だとの思いがしました。筆者の他の本も読んでみたいと思いました。

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2013年07月22日

Posted by ブクログ

本当そうだよなぁ…と思いながら読み進めました。イノベーターのアンチイノベーターとの対立や、みんなでやるはだれもやらない等、ある、ある、と言う話の連続。
そういいながら正直結論ないだろうな、と思ったら若干意外な結論が待ってました。でも実務的にはそれが現実的なのかもしれない、と自分の経験上からも納得しています。
オススメです。

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2013年07月08日

Posted by ブクログ

企業で働いているだれもが日常で感じるジレンマが適切に表現されている。
変化を好まないオペレーション人材と、それに対峙するイノベーター。どちらも必要であることは本に書かれているとおりだが、自分は後者でありたいと感じながら、読み進めた。感じたことを活かしながら、今後の仕事に向き合っていきたい。

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2013年06月09日

「ビジネス・経済」ランキング