あらすじ
“俺の後輩”こと、黒猫の視点から描かれる『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』公式コミック第3巻! 高校のゲーム研究会のゲーム制作を通じて居場所を見つけ、京介としだいに接近していく黒猫。そんな中、ついに“俺の妹”、桐乃が帰国して……!?
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Posted by ブクログ
黒猫視点でのスピンオフ、コミカライズ第3巻。
お互いを一層意識するようになった京介と黒猫。追い詰められた桐乃からのメールを見た京介を、黒猫は「呪い」をかけてアメリカに送り出す。京介に連れられて帰国した桐乃は、京介と黒猫の様子を見て黒猫にあてつけるような行動をとる…。原作ラノベでは5巻、「黒猫ルート」とされているあたり。黒猫が桐乃のもとへ向かおうとする京介の背後から頬にキスをする、あの有名なシーンの前後が描かれている巻です。
絵柄をはじめ、描き文字の読みにくさなどのコミックとしての欠点はディテールの乏しさを除けばほぼ解消され、すんなりと物語に没頭できるようになりました。特に黒猫に関しては、前巻にもましてかわいく描かれており、黒猫好きな人に安心してお勧めすることができます。
ストーリーに関しては原作どおりではあるものの、例えばゲーム制作中にバグに遭遇した黒猫の心象として「はるかかなたを遠ざかる桐乃の背中」が描かれたり、思わずキスをしてしまった黒猫が、夜、布団の中で自分の行動を思い返して布団の中を転がりまわって悶える様子が描かれたりと、嫌味のない範囲でヒロイン黒猫の内心が描かれていて好感が持てます。ようやく読んでよかった、コミックとして面白かった、続きが気になると思える一冊になりました。
惜しむらくは桐乃の存在です。留学先から帰国してくるのは原作どおりではあるのですが、その強烈な存在感にどうしても「黒猫視点」が引っ張られがちになってしまうこと。桐乃と京介の偽装デートの前半など、これまでどおりすっぱり切っていたはずの黒猫のいないシーンが描かれてしまっています。「原作を知らない人は置いてけぼり」で結構ですから、徹底して欲しかったと思います。
この場面に限らず、丸々2巻登場しなかった桐乃が帰国したとたん、その(特に京介に対する)横暴な振る舞いが鼻について仕方がありません。良くも悪くも強烈なキャラクターですね。「存在はするものの登場はしない」くらいの立ち居地がちょうどいいのですが…まだしばらく出てくるはずですね…。
コミカライズとしては、見たかった場面に絵がついたのが嬉しかったりしました。「呪い」をかけた後だとか、京介の部屋で「それとも何?お前もしかして俺のこと好きなの?」というデリカシーゼロの京介の発言に対して「好きよ…… あなたの妹があなたのことを好きなくらいには」と返したときだとか。
ああ、原作小説のこの台詞、いいですよね。桐乃の思いと、それを黒猫は気がついているけれど京介は気がついていないこと、京介が気がついていないことを黒猫が気がついていること、そして黒猫の京介への思いと黒猫はまだ京介に気付いて欲しくないこと。この全ての思いが込められています。そのときの黒猫にいけださくらさんがつけたちょっと挑発的な表情もなかなか素敵でした。
もっと言えば、そのうちに出てくるだろうこの台詞の続きの台詞もいいものです。