あらすじ
黒猫が“俺の後輩”になってからしばらく。京介は、学校でなかなか友達を作ることができない黒猫を心配していた。そこで、友達作りのため、ゲーム研究会への入部を勧める京介だったが、そこで待ち受けていたのはとんでもなく濃い面々だった――!?
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Posted by ブクログ
クラスでの孤立を深める黒猫が彼女を心配する京介に誘われて「ゲーム研究会」へ入部し、「新入部員限定企画コンペ」で同じクラスの「超腐っている」赤城瀬菜と製作するゲームの企画を競うお話。
ストーリー的には原作3~5巻あたりで、黒猫が知らないところで起こっているエピソード(京介がエロゲの深夜販売で秋葉原まで行く話とか)は気持ちよくばっさりと切られています。
これは、原作に遅れて始まり、原作より遅いペースで進行せざるを得ないコミカライズの進度を調整できるとともに、「読者は知っているのに黒猫は知らない」エピソードを描かないことで黒猫の視点で描かれていることがはっきりする効果も顕著で、たまに挿入される五更三姉妹の「黒猫しか知らない」エピソードと相俟って、黒猫がヒロインであることをしっかり主張することにつながっています。単に「省略すること」の効果がこんなに大きいとは目から鱗でした。
漫画としては「支切り直し」をしたいけださくらさんの萌えに寄せた画の安定ぶりがよく分かる1冊となりました。特に黒猫に関してはどのコマを見てもかわいく描かれており、黒猫が好きな人にも安心してお勧めできるレベルとなっています。
ただ、台詞のフキダシのみが描かれてコマ自体は真っ白という部分が依然として多くあり、また原作がディテールに神が宿る作品であるのに対して描き込んで欲しいディテールが省みられず、さらに京介は相変わらず髪がヘルメット気味である(少女キャラ以外でもゲー研の部長や真壁君などはちゃんと描けているのに…)など、まだまだ不満な点はあります。
ストーリーに関しては、京介のお節介を嬉しく思う一方で「私はあなたの妹の代用品ではないわ」と思わず口に出してしまう黒猫の京介に向ける想い、作りたいものと売れ筋が一致していなくても「畢竟、私にとって同人とは自己満足を叩きつける場」であり、あの名台詞「超凄いオナニーを見せつけてやるだけのことよ」につながる黒猫の創作にかける想い、そしてそのいずれにも影を落とす桐乃の存在感の大きさが、黒猫視点であることにより一層強く感じられることで、黒猫好きの読者はますます黒猫を応援したくなります。ずるいです。
なお、キャラが立ちまくっているメインヒロインを差し置いてサブヒロインが人気になることは、例えば「長門は俺の嫁」の例を見ても珍しいことではありませんが、黒猫が創作に当たっても、京介との関係に当たっても意識せざるを得ない桐乃の存在は良くも悪くもやっぱり大きいようです。