あらすじ
日露戦争に勝利し、坂の上に辿り着いた日本の目の前には、次なる仮想敵国として太平洋の向こうにある大国アメリカが立ちはだかっていた……。黒船来航が与えたトラウマが戦争へと具現化していく過程を、「日米未来戦記」の書き手たちを中心に、群像劇として描いた大河ノンフィクション。
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Posted by ブクログ
第一次大戦前後から、第二次大戦前にかけて、「日米未来戦記」が流行した。この時代を包んでいた雰囲気を、日本、米国、英国の名もなき作家達の生い立ちとその作品を通じて描き出している。
黒船来航から50年後、アメリカの大艦隊がまたも日本に訪れたことはあまり語られない。このときの「白船来航」に対する国内メディアの反応は、「万歳、歓迎」の大合唱であった。これは巨大な国力を持つアメリカとの戦争を恐れての、最大限の「恭順の意」だった。その裏で、日露戦争に勝ったことを遠因として、米国への対等の意識も芽生え始める。
実は、アメリカ国内でも、移民排斥運動に加えて日本脅威論がしだいに高まっていた。大艦隊の派遣には、日本の牽制と言う意味が多く含まれていたのである。
互いを仮想敵国とするような雰囲気がどのようにして醸成されていったのかを、作家達の視点から多面的に捉えていく。