あらすじ
「三国志」の魅力は、幾多の武将の活躍と、軍師たちの戦術にある。本書は、その中から軍師のみ34人を選び出し、彼らの生き方と果たした役割を、人物ごとにまとめたものである。世は戦乱の時代、大きな変革の時代である。日々激しく動く状況下に身を置きながら、軍師たちは、時代の趨勢をいかに読み、いかなるグランドデザインを描き、いかなる戦術を立て、いかに行動したのか?「天下三分の計」を描いた諸葛孔明。軍師として勲功第一の働きをしながら曹操から死に追いやられた荀いく。赤壁の戦いで曹操軍を撃退するものの早すぎる死を迎えてしまった呉の周瑜。非凡な才能を持ち劉備から信頼されるものの、母への孝を貫くためにやむなく曹操に仕えた徐庶、などなど。三国志学会事務局長である著者は、物語の中ではなく、歴史としての三国時代に活躍した軍師たちの実際の人物像と行なった事績を紹介しているので、この時代に対する興味が一層深まる書である。
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Posted by ブクログ
表紙絵、諏訪原さんだし、軍師ばかりだし、
好きな人にはたまらない、最高なんですけど。
タイトル通り、軍師34人について、一人3、4Pくらいで紹介してる本。
すでに知ってる有名エピソードはもちろん、正史と演義両面から書かれてます。
語りは、ほのぼのした先生が、坦々とお話してくれてるかんじ。
つまりは、解りやすいってことです。
三国志の知識が沢山ある人には物足りンかもしれないけど、完結にまとめるとこうさ みたいな復習ってことで。(もちろん多少著者の主観はあるけど、それもアリだなーって思うくらいなんで平気かと)
一冊まるごと軍師って早々無いと思うし(私は他に知らなかった)。
荀氏とか、潁川の辺りのグループ分けと、九品官人法が図にされてたり、解りやすいですね。
買って良かった!
Posted by ブクログ
三国志検定3級。「武将」を中心とした三国志の世界観をいい意味で変えてくれる本。「名士」「君主」「武将」の関係など新しい視点を学ぶことができました。
Posted by ブクログ
三国志に登場する軍師34人について、演義と正史のエピソードを交えて紹介する本です。
軍師についての総論の後、国別に一人一人紹介していくわけですが、一番面白いのは実は総論でした。
一般的には、軍師というのは、文官のイメージが強いと思います。しかし、中国では平時には文官、戦時には武官どちらともなれる存在であることを主張します。
そして、何より、軍師になるような人物は、名士と呼ばれる中国内の有名人ネットワークを駆使しており、そのネットワークには派閥があったと語っています。そして、三国時代とは、名士の派閥間、および名士と主君の主導権争いの歴史であったことが示されます。
派閥間の競争は、国家間のみならず、国家内部(例えば魏内部だけでも複数の派閥がある)でもあったことを本書では示しています。名士の派閥は、大きくは、儒学的な価値観を漢王朝維持に置くか、新王朝を立てる方に置くかに別れます。
この時代においては、名士の派閥の力に抗するのは容易ではなく、かの諸葛亮でさえその呪縛から逃れられませんでした。それどころか、自分の派閥を拡大させようとさえしており、劉備との主導権争いすら演じているというのです。
軍師達は、名士であるが故に人望とネットワークがあり、君主は彼らを臣下に持つことにより、民からも認められ国を治めることができたのです。しかし、軍師達は自分の持つ理想の儒学国家を目指しました。ここに、君主と軍師の対立の構図が浮かび上がります。
本書では、名士を軸にして、魏が孫呉と蜀漢を滅ぼし中国統一を成し得た理由、その後司馬家により簒奪を許す結果となった理由をも解き明かしています。
Posted by ブクログ
著者は三国時代は名士の時代だという。その影響力は強く、政権を安定させるためには、名士の協力が必要であった。実は諸葛亮と劉備の関係も単純なものではなく牽制を伴う関係であったとの分析は面白い。
Posted by ブクログ
てっきり「最強の武将10選」的な羅列ものかと思ってたけど、名士層という切り口から系統立てて後漢時代を切り取った一冊。これまでの三国志もので抜けてた視点が補完されて、今までなんとなくスルーしてたことでその意味と流れを知ることもあったりして、なかなか興味深い内容だった。なにげに最近読んだ三国志ものの中では一番。
例えば
・陳羣が荀?に推挙されたこと。
・陳羣が曹操の後継者争いでは曹丕についたこと
・陳羣が九品中正制度を制定したこと
などは陳羣のプロフィールとして知ってても、それがどういう流れでつながるのかはピンと来てなかった。
官位が売買されるようになった後漢時代に、学問(≒儒教)に秀でた「名士」と呼ばれる集団が腐敗した中央政界外の人材プールとして機能していた。
↓
潁川群の名士グループに所属する荀イクは、そこから有用な人物を曹操陣営に数多く推挙した。
↓
潁川群グループと儒教の影響力の拡大に対抗し、
曹操は建案文学という新しい文化的価値を打ち出した。
↓
曹操の後継者として曹丕と曹植との間に対立が生じるが、
文学の面では曹植が勝っていた。
↓
「年長者が家督を継ぐべき」という儒の教えに基づき
陳羣を始めとする潁川群グループは曹丕を支持。
↓
結果、曹丕が家督を継ぎ、見返りとして
名士層の影響力を拡大する九品中正制度が制定される。
こうすると個別の事実が一つの流れの中で、
意味があるものに変わってくる。
孫権と陸遜の関係とか、こういった切り口で再検証すると
なかなか興味深かった。
Posted by ブクログ
大きな字でややライトな読み心地ですが、本貫による軍師たちの派閥や信頼し合っているようで油断もヘッタクレもない君主との力関係に着目していて面白いです。
あと呉質や孔融のような、あまり良く言われない人物に対して好意的なのもポイントですね。
Posted by ブクログ
読書録「「三国志」軍師34選」3
著者 渡邊義浩
出版 PHP文庫
p96より引用
“阿瞞という曹操幼時の字を呼び、「おまえは
私を得なければ、冀州を獲得できなかったの
だぞ」といったりもしました。確かにそのとおり
なので、曹操は笑って、「おまえの言葉は正し
い」といいましたが、心中これを非常に嫌悪
しました。”
目次から抜粋引用
“軍師とは何か
軍師の誕生
多士済々ー曹操とせめぎあう軍師たち
忠義を尽くすー劉備を支えた軍師たち
悲劇の群像ー孫権と生きた軍師たち”
文学博士であり三国志学会事務局長であ
る著者による、三国志に数多く登場する人物
達の中から、とくに軍師について選び出し解説
する一冊。
多くの人がその名を知っているような有名
な人物から余程の三国志ずきでなければわか
らなさそうな人物まで、君主や周囲との関係
まで含めて書かれています。
上記の引用は、曹操の幼なじみである、許攸
という人物を紹介する項での一文。
親しき仲にも礼儀あり、ということわざの実例
としてぴったりな逸話です。この後曹操に殺害
されているらしいですから、どんなに自分の手柄
であっても、人に恩着せがましく振る舞うのは
自分にとって結局不利に働くのでしょうね。
気をつけたいものです。
参考文献の紹介を覗くと、著者の著作が
ズラズラと並んでいて、なんだか複雑な気分
になりました。それだけ著者が、三国志に通じ
ているということなのでしょうけれど…。
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