あらすじ
太陽神につつがなく運行してもらうためには、生贄を捧げなければならないーー。
生贄制度が残り、王と神官が絶対権力を持っていたマヤ文明。
父と母を殺され、姉を生贄にされ、自らも生贄として殺されかけた少年・スレイは、ウェラス族のヘルマスに救われなんとか命をつなぐ。
生き残れ、地獄のようなこの国で。稀代のストーリーテラーがおくる、前代未聞のマヤ文明サーガ!
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Posted by ブクログ
マヤ文明やアステカ王国を下敷きにした、架空の古代文明の物語。
家族を殺され、儀式の生贄にされそうななった少年、スレイが主人公。運良く助け出され、数奇な人生を歩んでいくことになる。
600ページ以上あり、あまりの分厚さに怯んでしまう。が、面白くてサクサク読める。
スレイは、状況に応じて柔軟に事に対処できる能力があり、飄々と、たくましく生きていく様がとても良い。
他の登場人物も魅力的だ。エルテカ国の横暴な王、謎めいた神官、スレイの親の仇ですら、悪いだけではない、様々な側面を見せてくれる。皆が、それぞれの思想、正義で動いているから、勧善懲悪ではなく、混沌としていて面白い。
話し言葉が今風なのも、サクサク読める要因になっているかも。血生臭いシーンや重い展開の緩衝材にもなっているし、何よりも面白い。最高神官が、「冗談じゃないっすよね」とか言う。
終盤、2つの山場がある。エルテカから、スレイの故郷である小さな島を守る戦い。数で圧倒するエルテカに、様々な工夫で対抗するスレイ達。手に汗握った。戦いの中スレイは、親の仇である戦士、シベリアとサシで戦い、ほぼ引き分ける。スレイは片目を失うが生き延び、シベリアは死ぬ。このシベリアという男、スレイの親の仇なのに、何故か嫌いになれない。仕える王の命令で動き、たくさんの人を殺して来たが、卑怯や横暴とは無縁、清々しいほど戦いに生きた戦士だった。
そして、エルテカの最高神官であり、後に王となった女性、フォスト・ザマ。幼い頃から死神に追いかけられといると感じていた。王が暗殺されてしまい、その後継となるが、反エルテカの勢力に捉えられ、無人島送りに。死神が私に追いついた、という表現がせつない。最後に、自分を捉えた戦士との決闘を望み、もう少しで勝利というところで力尽きてしまう。
2人とも、主人公であるスレイの敵だったけど、何かが少し違えば、そうじゃない世界線もあるだろうに、という妄想をしてしまうぐらい、魅力的だった。
スレイは仲間や友人にも恵まれ、この先もきっとたくましく人生を切り開いていくんだろうな、という感じで、物語は幕を閉じる。
600ページを読み切った達成感もあるけど、想像以上に面白かった。迷う事なく、星5個!
Posted by ブクログ
ジャガー・ワールド
マヤ文明をモデルにした、その文明や国々の興亡を巡る大河小説です。総ページ632ですが、大きな物語の展開や登場人物たちの冒険でわくわくしながら一気に読み切りました。
マヤ文明にはなかったキリスト教のような半生贄と友愛を説く宗教をからませることで、恒川氏の人類観や世界観も垣間見ることができます。そして、多くの登場人物がそれぞれの生を全うする様子から、生きるということはどういうことか?や文字は人々に便利さをもたらしたが、それは本当に人が生きる上でプラスになっているのか?などの問をつきつけてきます。
竹蔵は、数奇な運命にもまれながら最高神官を経て王にまでなるフォスト・ザマと、軍神と称えられ貴族でありながら自ら戦うシベリアのキャラクターがとても好きでした。
物語の手仕舞いし方もとてもうまく、余韻を持った読後感もとていも好きです。
鈍器本(厚い本をそういうみたいですが)に恐れることなく、是非一気読みしてみて下さい。
竹蔵
Posted by ブクログ
恒川光太郎によるマヤ文明ワールド。
ただただ面白い。同作者の「金色機械」のマヤ版みたいな印象を持ちましたが、あちらに比べていろいろ伏線というかお話が絡みあうみたいな感じもそれほどはしなかったしコメディっぽさも皆無ではあったけど、それでもなお面白い。マヤ文明に対する興味深さがあり、そして圧倒的な読み応え。星5以外つけようもない。
もともと独特な異世界感が持ち味の作家さんだと思っていましたが、マヤという実際に存在した世界に対してもその持ち味は健在。このボリュームのある一冊にして「読み終わるのがもったいない」と思わせる傑作でした。
個人的にはフォスト・ザマの最期が・・哀しくもしびれました・・・
Posted by ブクログ
絶対面白いだろうなと思ってた!
マヤ文明が舞台の話。
いつの間にか異世界に入ってて、その世界のルールに振り回される話が恒川さんの特徴で、今作もその通りな話で最高です。
食人、生贄、王政と現代からすればこんなの完全に異世界ですから。
登場人物を現代人の喋り方にしてるのが、日常から異常さを際立たせてて良いですよね。心臓を抉り出して捨てた人体を食うの嫌だわ〜うちの子なんか嫌がって食べないもんとかどんな会話やねんって笑っちゃいます。
マヤ語を完全な日本語にするとか無理だろうし、取っ付きにくいであろうキャラクター同士のやり取りを分かりやすく崩しすぎてもないのが上手い。
主要なキャラクターが固まってて、生贄、戦士、賢者、神とストーリーが進むにつれてキャラの背景が挟まれる作りが楽しすぎました。
敵だと思ってたのにこんなことがあって、こういうことしてたんやなってわかるとみんな死んでほしくなくなる。シベリアはめっちゃ好きになったし。
フォストもめっちゃ良いキャラですね。1番好きかもしれない。
映画で紀元前とかマヤ文明が舞台のやつが結構あるから、かなり想像しやすかったです。
アポカリプトを見よう!
Posted by ブクログ
結論:古代マヤ文明を舞台にしながら、人間の本質を描いた重厚な物語でした。
『ジャガーワールド』を読んで、古代マヤ文明についてもっと知りたくなりました。
生贄や食人といった文化が存在し、科学的なアプローチが乏しい時代背景の中で、人々が何を信じ、どう判断していたのかが描かれています。
特に印象に残ったのは、人間の動きが現代とほとんど変わらないと感じた点です。
裸の王様のような人物に対し、他地方への侵略がほとんどうまくいっていないにもかかわらず、遠征は成功だったかのように報告する場面はとても象徴的でした。
時代や文明が違っても、人間の本質は大きく変わらないのだと思わされます。
物語の後半は、三国志のように国と国との争いへと展開していきます。
戦略や思惑が交錯し、物語に重厚感が増していきました。
歴史大河のような読み応えがあります。
また、登場人物それぞれの個性が際立っており、「この人物はどうなるのだろう」と気になって、気づけば一気に読み終えていました。
文明の壮大さと人間ドラマの両方を楽しめる一冊です。
Posted by ブクログ
現代から見たら野蛮で未開な風習のある古代マヤ文明
その中で生きる人々を感じる中で、現代社会だって未来から見たら野蛮で未開なんだろうと感じる
当然とされていることを疑い、自分も誰かを犠牲にして、誰かの権利を蔑ろにして生きているのではないか。
古代マヤ王国人から見ても野蛮で、食糧として日常的に人肉を食する部族の一員だったドルコ
王国に捕らえられ言葉や暦、信頼できる人物との出会いや戦いを経て、彼は変化し最後は最高神官からの脅しにも屈しない
彼の変化はそのまま人類の変化のようであり、その変化は良いことなのかという疑問を投げかける
学び、知ることを始めたらもう元に戻ることはできず、進むしかない
進む先にあるものは今だって誰も分からない
その中で良き人であろうとするレリィの存在は、進み続けるしかない人類を止められたのかもしれない
「一人一人が自分を変え、世界を変える」
膨大なエピソードが一冊にギュウギュウに詰め込まれていて、一気に読んでしまった。
希望を言えば一つ一つの話を丁寧にもっと読みたかった気もする。
そして、最高神官のバディで無双するのも見てみたかった笑