【感想・ネタバレ】黒いトランクのレビュー

あらすじ

千九百四十九年も押し詰った鬱陶しい日の午後、汐留駅前交番の電話のベルが鳴り、事件の幕が切って落とされた。トランクに詰められた男の腐乱死体。荷物の送り主は福岡県若松市近松千鶴夫とある。どうせ偽名だろう、という捜査陣の見込みに反し、送り主は実在した。その近松は溺死体となって発見され、事件は呆気なく解決したかに思われた。だが、かつて思いを寄せた人からの依頼で九州へ駆けつけた鬼貫の前に青ずくめの男が出没し、アリバイの鉄の壁が立ち塞がる……。巨星、鮎川哲也の事実上のデビュー作であり、戦後本格の出発点ともなった里程標的名作。綿密な校訂による決定版!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

名作、と聞いていたけれど、古くて読みづらいのでは……となんとなしに読まずにこれまで来てしまった。
で、満を持して(?)読んでみたら、面白かった!

トランクと死体と容疑者の移動トリック。
どうしてこんなことを思いつけるのか……。
すごかった。

ガチガチのアリバイトリックだけど、登場人物の絞り込みがすごかった。無駄な登場人物は一人もいなくて、むやみに目くらましのために配置するようなことが一切ない。
中盤くらいで犯人はおおよそ見当がつくんだけれど、そのアリバイを破るトリックのためにどんどん読み進めていくのがつらくない。普段アリバイものは苦手なのに……。

靴磨きの少年のところ(靴の色)は、ちょっと「これは伏線ぽいな……」と思ったけど、子どもが砂山で遊んでいるのなんか完全にノーマーク。
描写は自然で文章は美しく、戦後の日本の風俗描写も生き生きとしていて、小説としてもとても素晴らしかったと思う。
名作といわれるのがよくわかった。おもしろかった。

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2021年02月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

解説で有栖川氏が「世界で一番好きなミステリ」「私が好きなミステリとはこういうもの」と述べているが、まさに私にとっても、好きな要素をとにかく詰め込んでまとめてくれたような小説であった。
まず、クロフツ式の、地道な裏付け捜査とそれにより過去の被害者や犯人の動きが徐々に明らかになっていく過程は、人によっては退屈に感じるかもしれないが、私には、その過程に特に読書の喜びを感じる。
例えば他の人は、最後にどんでん返しがあってその驚きが大きければ大きいほど面白いとか、過去にさかのぼって何があったかを調べていく過程より、小説の中の時間の進行に伴って、どんどん新しい展開(第二、第三の殺人など)が次々に起こっていく方が良いとする向きもあるだろう。だが、有栖川氏が指摘しているように、この小説では必要最低限の登場人物しか用意されていない。だから犯人が意外な人物だったということも、実はない。過去にあったことを丁寧に捜査して明らかにしていく、実はそれだけなのだが、こんなに先が気になり、展開がスリリングなのは、本書が優れた「本格もの」であり、奇抜さや奇を衒うのではない王道の推理小説ということだと思う。
それから戦後すぐの時代の、当時の時刻表を題材にとっている点。当時の鉄道網や鉄道史にも興味がある読者なら、必ず本書も興味を持つことだろう。石川達三や北原白秋など、いわゆる純文学系の話題にも触れられている点も良かった。
また、探偵役たる鬼貫の人となりの描き方も好感を持った(これは個人の好みだが、私は天才肌の奇人変人的探偵より、鬼貫警部のような生真面目で好人物な探偵の方が良い)。
さらに、巻末の解説部分で、鮎川氏が無名の新人だった頃、苦労して本作を書き上げた経緯や、初版から大きく改稿されてきている箇所も多いこともわかり、長年に渡って作者や編集者、さらには読者が、大切にしてきた作品だということが伝わってきて、そのような作品を読むことができて大変嬉しく思った。
また、クロフツの「樽」をあらかじめ読んでいたので、さらに読む楽しさが増したのだろうと思う。「樽」のように、トランクが複数存在すると思われることが明らかになった箇所は、思わず唸ってしまったほどだが、決してクロフツの作品の焼き直しではないことは無論である。「黒いトランク」の方が、よりテンポが早く、やはり日本人が読者なので地名などの位置関係も頭に入りやすかった。

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2019年08月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私のようになんとなくすいすい読んでいって、おおよそのトリックであったり謎解きであったりといったものをゆるやかに楽しんでいるタイプの人には、時刻表トリックはあまり向いてないかもしれないけれど、表題のトランクに関するトリックでは、見事に鬼貫警部と一緒に悩まされて、最後に明かされるトリックになるほど!と思わされる。
刊行されたのがずいぶんと昔であるけれど、今の時代に読んでも違和感なく入り込むことができる。
自身でトリックを解いていきたい人には一部納得のしかねるところもあるというのは、他の人の感想を見ていると確かにそうだとは思わされるものの、あくまでもこれは虚構であって現実ではない。そこにツッコミを入れるのは野暮に感じる。

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2021年01月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文春の「ミステリー100」の上位にあったもので、
偶然古書店で発見。名作と呼ばれるものはやはり期待してしまう・・・

分刻みで、XとZが やら 
時刻表によると人物XがQに・・・やら
私の頭が理系にできてないせいもあり、何やらややこしい。
トリックの素晴らしさに付いてゆけないまんま、流されてしまいました。


犯人、被害者、刑事、その他容疑者、かかわる人々、
みんなが大学時代の同級生だなんて無理やり感全開ですが、
これで違和感ないのでしょうか?

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2013年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうやったかに特化した推理小説。いろんなトリックが散りばめられてておもしろかった。

よくできたトリックだけど一点だけ。若松駅の前で、たまたま運よく彦根運転手のトラックを捕まえられたけど、いつまでたっても博多まで行くトラックを捕まえられない可能性だってあるんじゃないの?時間が肝のはずなのに、そこが行き当たりばったりで納得いかない。列車の時刻の正確さ云々よりよっぽど気になる。

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2021年01月03日

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