あらすじ
「吉田拓郎=フォーク」は日本の音楽史上最大の誤解である――。
語り継ぐべき歴史がある! 日本のロック、ポップスを創成期から取材している田家秀樹と、昭和歌謡から最新ヒット曲まで独自の視点での考察が人気のスージー鈴木。年齢もバックグラウンドも異なるふたりの音楽評論家が、13人のレジェンドたちを「通説」から解き放ち、その実像、功績、知られざるエピソードまで語りつくす、語り下ろし対談本。
「音楽を語る」ってこんなに楽しい!
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Posted by ブクログ
■はじめに
“人間の営為”を、あるテーマで括って並べてみる。すると、それまで点在していた出来事が1本の線となり、「歴史」として見え、その背景や功績もあらためて浮かび上がってくる。
本書は、J-POP史に名を刻む13名のアーティストの軌跡と功績を通じて、日本のポップス史を読み解く一冊。
俎上に載るのは、吉田拓郎、井上陽水、沢田研二、矢沢永吉、松任谷由実、中島みゆき、浜田省吾、桑田佳祐、佐野元春、松田聖子、中森明菜、忌野清志郎、氷室京介。錚々たる13名。
なぜ「J-POPの開拓者」ではなく、あえて「ロックスター」と括ったのか。その意図を探るようにページを繰った。
■内容
田家秀樹は、作家 重松清をして「いつだって『あの日、あの瞬間』にいた」と言わしめる、日本のポップス史の“生き証人”。
その形容は決して大げさではない。読んでいると、「いったい、おいくつなんですか?」と訊きたくなるほど、後に伝説として語られる数々の「あの日、あの瞬間」に居合わせている。
一方のスージー鈴木は、J-POPや歌謡曲に通暁する音楽評論家。自身も音楽を“演る”人だけに、コード進行など音楽的な構造にも踏み込んでいく。
そんな二人が取り上げる13人の章には、それぞれタイトルが付けられている。
「『吉田拓郎=フォーク』は日本音楽史最大の誤解である」
「井上陽水、はぐらかしの美学」
「中島みゆきにノーベル文学賞を!」
「語れば語るほどハッピーになる矢沢永吉論」
…といった具合。
もう、この見出しだけでシズル感が漂う。
〈田家秀樹の時代考証 × スージー鈴木の音楽的分析〉。2つの視点が見事にクロスオーバーし、それぞれのアーティストが「何を変えたのか」「何がそれまでと違ったのか」が、くっきりと言葉になっていく。
しかも2人は、1人のアーティストだけを凝視しているのではない。戦後歌謡からフォーク、ニューミュージック、ロック、そしてJ-POPへと連なる大きな流れを俯瞰し、その中に13人を置いて語る。
だから、一人ひとりの「凄さ」が相対化される。点ではなく線で語る。この視点が、本書を単なる「スター13人の人物評」に終わらせていない。
■感想
さて、なぜ「ロックスター」なのか。
僕なりに読み解けば、それは「反体制」といった単純でベタな定義ではない。彼らは、それまでになかった“新世界”をつくった第一人者、つまりイノベーターだったからではないか。
ただ、「革新」という言葉だけでも、どうもしっくりこない。彼らは、それまでの音楽を否定して、ゼロから何かを生み出したわけではない。長年培われてきた音楽のスタイルを十分に咀嚼し、それを壊し、組み替え、自分だけの新しいスタイルを創った。謂わば、J-POPにおける「創造的破壊」。ゆえに「ロックスター」なんだろう。
もうひとつ、本書を読みながら考えたことがある。ここに登場する13人には、それぞれ熱狂的なファンがいる。もちろん僕の周りにもいる。
ところが、そのファンに「この人の何がそんなに凄いの?」と訊いても、なかなか「なるほど!」と思える答えは返ってこない。とは言え、説明が下手なのではない。
好きなアーティストの音楽をCDで、ライブで、浴びるように聴く。その行為だけで、すでに自己完結していて、好きであることに、そもそも説明なんて必要がない。
僕自身、これまで何人もの人から、村上春樹の小説は「何が面白いの?」と訊かれた。その度に懸命に語るも、結果はたいてい、のれんに腕押し状態。
そう、「推し」を語るのは難しい。ましてや、さほど興味のない相手へ、その魅力を伝えるのはもっと難しい。
でも、僕はその「凄さ」を聞きたい。知りたい。それは音楽に限らない。プロ野球、大相撲、小説家、政治家について…、「この人の何が凄いのか」を言語化し、目の前に差し出してくれる人がいると、思わず耳をそばだててしまう。
では、スージー鈴木・田家秀樹…、この2人が語ると「なるほど」と膝を打つのか。推察するに、ひとりの「推し」だけを見ていないから。
13人を俯瞰し、さらにその背後に広がる日本のポップス史を総覧する。その大きな地図を頭に入れ、「この人はここが違った」「この一曲が流れを変えた」と指し示してくれる。
絶対評価ではなく、時代の中に置いて相対化する。だから読ませる。だから腑に落ちる。そして、ときどき膝を打つ。
■最後に
好きなものを好きな人だけの「自己完結の世界」から、知らない人にも「ちょっと聴いてみようかな」と思わせる“開かれた世界”へ。
知っているアーティストが、実は知っているつもりだった。さほど興味のなかったアーティストにまで、ちょっと耳を傾けてみたくなる。
評論を読んで、音楽が聴きたくなった。まずは拓郎から、聴き直してみよ。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 「吉田拓郎=フォーク」は史上最大の誤解である
第2章 筋を通す”不良”沢田研二
第3章 語れば語るほどハッピーになる矢沢永吉論
第4章 井上陽水、はぐらかしの美学
第5章 中島みゆきにノーベル文学賞を!
第6章 松任谷由実。「私は天才」の所以
第7章 桑田佳祐、「大衆音楽」の原点
第8章 平和を歌う「普通の人」、浜田省吾
第9章 佐野元春のインテリジェンスとユーモアとダンディズム
第10章 松田聖子と中森明菜の「音楽」だけを語ろう
第11章 忌野清志郎の楽しい「読後感」
第12章 ロックのビートを変えた氷室京介の声
<内容>
20歳年の離れている音楽評論家、田家秀樹とスージー鈴木の対談集。日本のロックを語るというところか?12(13人)が紹介されているが、読んでいて嫌な感じがないのは、二人とも13人のミュージシャンをくさる発言がないから。多くの楽曲を知っていたが、うなずきながら楽しく読むことができました。