【感想・ネタバレ】虚構の昭和史 海軍善玉論、石原莞爾名将論の陥穽のレビュー

あらすじ

創られた英雄、偽りの名将。
隠蔽された失敗、糊塗された責任。
戦後、陸海軍は歴史修正(メイキング)を如何にしたのか?
現代史家を代表する三人が事実だけでなく、虚構を生む土壌まで考察する。
珠玉の昭和史検証。

石原莞爾の戦場経験は乏しく、指揮能力は疑わしい。
山本五十六は「戦争に反対」ではなく「負ける戦争に反対」だっただけ。
海軍善玉論に石原莞爾名将論。否定されて久しいが、未だに根強くイメージが残っているものだ。
それらはなぜ誤っているのか?また、なぜ生まれ、流布され、信奉者を生み出し続けるのか?
さらに瀬島隆三、源田実、奥宮正武、黒島亀人など、事実の隠蔽や改竄を行った人物を俎上にあげ、
『山本五十六』『坂の上の雲』が触れなかった事柄から虚構を生んだ土壌までも考察する。
旧軍人の証言を直に聞いてきた三人が秘話を語りつくす!

■石原の戦争観や戦争論も留学時代の知識の受け売りだった
■瀬島龍三は保阪正康に買収を仕掛けてきた
■阿川弘之『山本五十六』旧版の絶版は、「事件」と呼ぶのがふさわしい
■「その後の秋山真之」を司馬遼太郎が書かなかった理由
■特攻の作戦計画を練ったのは源田実と黒島亀人だった
■最初の特攻要員を志願だったことにしたい海軍軍令部が行った詐術
■辻政信の著作は研究者の参考にならない
■『トラトラトラ』を書いたプランゲも黒島に騙された
■敗北に学んだように見せかけて、敗戦原因をぼかした源田実

【目次】
まえがき
第一章 怪しげな戦史の作者たち
第二章 真相の暴露を恐れる人々
第三章 創られた英雄・山本五十六
第四章 戦史はこうして上書きされる
第五章 「海軍善玉論」 が覆い隠したこと
第六章 平和国家の忘れもの
あとがき

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Posted by ブクログ

毎年この時期(終戦記念日8月に近く)になると、書店は多くの太平洋戦争関連の書籍が出版され、店頭に専門のコーナーが設けられ、沢山並んでいる。かつては半藤一利氏だけで本屋の一角を占領するくらいあったのだが、その半藤氏も数年前にお亡くなりになられた。他にも太平洋戦争関連を描く研究者たちが、同じ様な題材で新しいものをリリースしてくれるのだが、毎年似た様な顔ぶれであって、なんだか安心してしまう。
本書はこの時期になると書店を賑わす太平洋戦争の著名な研究者たちの座談会形式の様な内容となっている。顔ぶれは、保阪正康氏、戸高一成氏、大木毅氏の3名だ。個々が記してきた書籍もかなり読んできたので、私としては本書内でどの様な会話がなされているのか、買わずに通り過ぎる事は出来ない。
大きなテーマとして扱っているのは、海軍善玉論、石原莞爾、山本五十六、黒島亀人や源田実に代表される戦後生き残った人々についてであるが、いずれも高名なお三方であるから、一体どの様な話が飛び出すのか、通説とは異なる側面や裏話が盛りだくさんとなっている。戦後何故陸軍が悪玉に仕立てられ、海軍は先見性のあるインテリの様なイメージで戦争に反対した善玉と見られたのか。真珠湾を急襲し緒戦の大勝利を齎し、その後も数々の名言を残した山本五十六、彼は本当に英雄だったのか、はたまた単なる博打内だったのか。戦後天才戦略家として最もその名を上げた石原莞爾は天才だったのか。そして、宇垣纏の日記を盗んで焼いたと言われる黒島亀人や、戦後の自衛隊でもその名を轟かせた源田実。戦後はひっそり身を表に出さなかった黒島と、書籍まで出して表舞台に立ち続けた源田。対照的な2人であるが、いずれも戦争中は重要なポジションで作戦の成否に重要な影響を及ぼしてきたが、結果的に日本は敗戦した。2人が消し去りたかった戦時中の黒い歴史とは何か。
わざわざこうした本を出すのであるから、一般的に知られている様な事実や描写、人物像に止まらず、様々な戦争関係者へのインタビューなどから得られた、知られざる話(あまり知られていないという意味で。どこかで既出の話であることには変わりない)中心に進められる会話。読み手にも様々な思い入れや考え方があるであろうが、一つの側面を捉えたものとして、どの話も興味深い。
「またこの人たちか」という感覚の方もいるとは思うが、戦争経験者が減り、口頭での伝承が難しくなる今後に備え、こうした経験者へのインタビュー経験のある研究者から我々は学びたい。毎年同じ様な顔ぶれに私は安心感しかない。

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2026年07月26日

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