あらすじ
下総の狐狩り・稲荷藤兵衛は、凡ての嘘を見破る〈洞観屋〉としての裏の渡世がある。ある日藤兵衛に持ち込まれた依頼は、老中・水野忠邦による大改革を妨害する者を炙り出すこと。敵は、妖物を操り人心を恣にする者たち。依頼を受けた藤兵衛は、江戸で化け物遣い一味と遭遇する。やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禪寺洲齋と出会い、憑き物落としに立ち会うこととなるが――。文学賞を三賞受賞した伝説的シリーズ、感動の最終巻。
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Posted by ブクログ
生涯もっとも面白い小説かもしれん。このたび文庫化を機に再読。初読の際、シリーズ既作品の物語・登場人物を忘れていていまいちピンとこない部分があったため、今回はシリーズこれまでの六冊および江戸怪談シリーズ三冊を読んでから本作に臨んだ。すると面白い面白い。登場人物の会話中の細部のあちこちに前作までの物語への言及がありたまらない。ある意味、これまでの九作品すべてが伏線であり、本作で回収されるという趣で、まさしく集大成。京極夏彦の構想力構築力に驚嘆感動する。物語は『続』で暗示されていた支配者中枢との闘い(ではないかもしれんが)が描かれる。しかも、新たな登場人物、支配者から小悪党達の探索を依頼された、噓を見抜く技をもつ稲荷の藤兵衛の視点で全編貫かれ、藤兵衛の目から見た小悪党の動きが描かれる。その藤兵衛の人物造形、洞察力、細やかさ、優しさ、しゃべり方が良い。また中禅寺秋彦の曾祖父も登場し憑き物落としを行う。小悪党どうしの交誼、互いへの強がりを含む思いやりに泣ける泣ける。また、壮大なエンタメであるとともに、政の根本を語り、この国の歴史への、資本主義への、現代社会への鋭い批判でもある。すばらしい。
しかしあの愛すべき化物使い、小悪党達にもう会えないのか、嗚呼。