あらすじ
――先生は光でした。
私が求めていた光。
昭和初期、英国ロンドンで造られた、この世に二つとない至高のグランドピアノ。
それは華族の令嬢随子のピアノ教師に贈られるはずだったが……。
戦前、戦後、そして現在。物言わぬピアノが立ち会った栄華と悲恋。
百年の無念と切なる願いを、一台のピアノがつなぐ
ピアノ、それは黒く輝く怪物――
大正十二年、ロンドン。駐英大使平松伯爵の娘・随子は恋に落ちた。才能ある若きピアニスト、グスタフ・アッカーに。
平松伯爵は使用人の少年を現地の工房に弟子入りさせ、アッカーのために贅を尽くしたピアノを作らせるなど、芸術に理解のある人だった。しかしアッカーへの想いを秘めてピアノを弾く幸せな少女時代を送っていた随子には、残酷な運命が待ち受けていた。
現代、日本。世間の注目を一身に集める若手ピアニスト友澤伸多は、さらなる高みを目指して練習に没頭していた。ところがある日、仕上がったはずの曲が弾けなくなった。それはピアニスト生命を断ちかねない、危険な予兆だった。
つらい時、そのピアノは、ただそこにあった。
ひとすじの希望を手繰り寄せる感動のドラマ!
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Posted by ブクログ
マーラーの交響曲第5番4楽章が頭の中で流れるほどに美しく切ないお話でした。
一台のピアノが時を超えて紡がれるお話なのですが、そこに携わる人たちの人生が関わっていてまるで実話のようでした。
自分が死ぬまでに遺したなにかも、それはピアノという素晴らしいものでなくても、いつか誰かの呪いになるかもしれないけれど、違う誰かには光になるかもしれない。そんな希望まで見出せる素敵なお話でした。
Posted by ブクログ
一台のピアノ、ニーマイヤーという「呪われたピアノ」と云われるピアノを巡る物語。
友澤伸多という新進気鋭の若手ピアニストはジストニアという病でピアノが弾けなくなります。
時は遡り、大正時代アッカ―という日本人の華族である16歳のヨリコを愛するピアニストもまた右手を車に轢かれてピアノを弾けなくなります。
二人のピアニストが弾いたニーマイヤーのピアノとは…。
私は実は読み始めは何の話かわからなかったのですが、主人公はピアノだったようです。
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私もピアノは五歳の誕生日に買ってもらい20年は弾いていました。
中学の時は物凄くよいピアノの先生に当たり、毎日下校してから四時間くらい弾いていましたが、先生に薦められた音高、音大受験は覚悟ができず、しませんでした。
生涯をピアノに捧げるというのは非常に覚悟がないとできないと身をもって知っているので、ピアニストの苦悩は共感できるものでした。
Posted by ブクログ
好きな著者だったので。
ピアノを巡るお話。
大正時代の駐英大使となった伯爵一家、
一家の娘たちにピアノを教えるオーストリア人のピアニスト、
ピアノ工房に送り込まれた一家の使用人、
戦後の愛媛県で林業を営む一家、
婿を迎えた長女をはじめとした三姉妹、
そして現代のピアニスト。
それらが、「呪いのピアノ」とも呼ばれた珠玉のピアノと
美しく苦しく絡み合って物語は進んでいく。
予定調和的というと否定的にとられるかもしれないが、
淀みなく自然に時が流れていく感じだと思ってほしい。
美しい一冊だ。
Posted by ブクログ
大正から現代に及ぶ百年の時の流れを、ピアノと音楽を軸にして描いた壮大な人間ドラマです。様々な感情を呼び起こす上質の音楽を聴き終えたような余韻を生みます。
物言わぬ一台のグランドピアノが全てを知っている。愛と憎悪、生と死、光と影…、ピアノの白と黒の鍵盤が紡ぐ音楽のように、時代のうねりの中で人生の喪失と再生をつないでいくストーリー構成が、実に巧いなと感じました。
運命に翻弄される華族の女性、ピアニスト、そして見届ける調律師。人物造形も秀逸ですが、歴史的な背景と繊細な心理や葛藤の描写、さらに数奇な運命を見届けるグランドピアノの存在が重なり合い、切なさを助長します。
人は、絶望の中に見つけた一つの「光」が、必ずや生きる支えになるでしょう。百年の時を経て、粋を集めた唯一無二のグランドピアノ・ニーマイヤーに魅せられた人々の思いが受け継がれ、哀しみさえもつないでいく終末に心が浄化されました。
大きな時代の波に飲み込まれた多くの者たちの中にあって、生き延びたグランドピアノ・ニーマイヤーは、「呪い」ではなく「光」なのでした。白と黒のように、日常の中にある対照的で普遍的な概念は身の回りの生活に根づいています。これを巧く物語に落とし込んだ傑作と言えるでしょう。
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かなり王道ではあるが、とっても読みやすかったので、読んで良かったなぁという気持ちがちゃんと残るストーリーだった。
「つながっているー何もかも必然だったのだ。」最後のこの言葉に出会うために私はこの本を読んだんだろうな。
なぜなら私も、人生で起る全ての出来事はみんなつながっていて何もかもが必然であると感じているから。
Posted by ブクログ
新進気鋭のピアニストのために製作されたピアノ「Niemeyer」に関わった人達の人生の悲劇と感動・再生の大傑作大河小説。もっとコンパクトにすればもっと面白い小説になるのにと思う作品が多い中、本作は2倍の文量でも読みたくなるような、ピアノの調べのように流麗な文章に綴られ、時間を忘れるほどの美しさ。行きつ戻りつの展開も絶妙。最近の宇佐美作品は上質で安定しており、何れも傑作揃い。もうマエストロの域で、もっと広く読まれることを望む。
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CL 2026.5.30-2026.6.2
ピアノとピアノを弾く人(ピアニスト)と調律師。
大正から現代まで、特別なピアノがつなぐ人々の運命と想いを描き出す。
音楽の持つ力に救われると同時に、時代や運命に翻弄される人たちの無力さに胸がつぶれる思いがする。
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宇佐美まことさんの新境地という印象を受けました。
時代を行きつ戻りつしつつ、一台のピアノに関わった人々を描く。
文章はどこか説明的なのに、全く退屈ではなく、ぐいぐいと引き込んでくれます。翻訳もののような雰囲気。
それぞれの時代のエピソードがきれいに繋がる構成は秀逸です。
Posted by ブクログ
昭和初期にロンドンの職人によって作られた至高のグランドピアノを巡る物語。時代を超えて描かれるそれぞれの人物の物語が繋がっていく、重厚な読み心地の作品です。
どの時代の物語においても多くの悲劇が起こりますが、もちろんそれはピアノのせいではありません。ピアノがあったからこそ起こったのだといえないこともないけれど、そのピアノがなければあの人もあの人もさらに不幸だったろうと思いました。多くの人の希望と絶望に関わり、ある時には「呪いのピアノ」などと呼ばれながらも、その気高さを失わないニーマイヤーのピアノがまさしく物語の主役。人々の思いを繋いだピアノがラストでどのような音を奏でるのか、読む手が止まりません。
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戦前駐英大使の所で作られた最高のピアノはその後悲しい時へ。現代日本のピアニスト、戦後愛媛の材木商。運命に翻弄されるピアノ。
良かった。1台のピアノの運命+優秀なピアニスト+優秀な調律師。本当にあったドキュメントかと思った。
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華族のお嬢様と駆け出しのピアニストの恋。もしあの時。。と思うけど、それも含めてそういう運命だったってことだものねぇ。。
三年掛けて作ったピアノ、どんな音がするのかな。弾いてみたい。
Posted by ブクログ
ピアニスト、調律師、そしてピアノ。
すべてのつながりを感じた作品でした。
才能のある2人のピアニスト、ピアノを愛する調律師達、そしてピアノの数奇な運命をたどる物語は、時代を越えた壮大な物語でした。
時代の流れにそらずに紡がれた物語は、現在と過去の違いをより際立たせていたと思います。特に女性のおかれた立場が、過去と現在ではすっかり変わっているので、過去の不幸にいたたまれなさを感じました。
一台のピアノが知っているすべてを感じることができ、次へと繋いでいくことに光を感じることが出来る作品でした。
読者の私は、多くのクラシック曲のタイトルが出てくるので、聴いてみたくなりました。
〈目次〉
第一楽章 歌う左手「光」の主題
第二楽章 二人のマエストロ
「光」の主題
第三楽章 谷底の牢獄
「光」の主題
第四楽章 桜のお印
「光」の主題
Posted by ブクログ
『呪われたピアノ』と不名誉な呼び名を与えられたニーマイヤー。
至高のグランドピアノをめぐり、人々の愛と憎悪が交錯する本作は、深い余韻を残す。
白と黒の世界に魅入られたピアニストと調律師。
心を押し殺し、死へ追い込まれた二人の女性。
もし時代が違っていたなら。
もし華族に生まれなかったなら。
もしあの瞬間、想いを伝えていたなら。
いくつもの if が胸の奥で波紋のように広がり、息が詰まる。
戦前、戦後、そして現在へと時代は連なり、唯一無二のピアノに魅せられた人々の思いも受け継がれていく。
ニーマイヤーは呪いではなく光だった。