あらすじ
怪異に嘘も本当もない。
大事なのは背景にある人の営みや風土だ。
寒村に伝わる呪いの人形に秘められた謎とは?
忽然と消えた娘を追う母は、〈鬼を招く〉学芸員&〈最恐〉呪物蒐集家と、東北を駆ける――。
仙台のタウン誌で働きながら娘とふたりで暮らしている桑見里帆は、古本市で「おしら鬼」と呼ばれる木彫りの像を手にする。巨大な角を生やした奇妙な木像の写真を目にした里帆の母は、我が家にも同じ人形があったと言い放つ。その夜、娘の愛菜が木像とともに失踪してしまう。里帆は、民俗学に詳しい学芸員・獺川(おそかわ)や怪奇マニアの呪物蒐集家・摩訶原(まかはら)といった怪人物たちを巻き込みながら、愛菜の行方を追うため「おしら鬼」の正体を探ってゆくと――。
怪談実話の旗手が放つ、伝奇ミステリ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
東北という土地には、無性に心惹かれるものがある。
遠野物語、オシラ様信仰、イタコ……
ちょっと不気味で、それなのに不思議とあたたかい。
人間の営みや風土が、
色濃くにじみ出るようなあたたかさなのだ。
『おしら鬼秘譚』黒木あるじ
突然ですが、東北という土地が大好きです。
実は数年前、宮沢賢治が好きすぎるあまり、
岩手を訪れたことがあります。
遠野の伝承園や、姥捨て伝説の地・デンデラ野、
カッパ淵などをレンタカーで巡って、
その最中にはちょっと怖い体験なんかもしたのですが。笑
あの土地の持つ独特の風土に、すっかり魅了されました。
本書『おしら鬼秘譚』は、
そのときに出会った「オシラ様」を思い出させる一冊。
ホラー小説かと思って手に取ったのですが、
良い意味で怖さは控えめな、伝奇ミステリでした。
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主人公・里帆は、古本市の民芸品コーナーで、
巨大な角を生やした奇妙な木彫りの像を手にする。
そこで異常なほどの執着心が芽生え、即座に買い求める。
東北のある村の出身である母は、
その「おしら鬼」と呼ばれる木像の写真を見て、
「我が家にも同じ人形があった」と口を滑らせる。
ところがその夜、娘の愛菜が木像とともに失踪してしまう……。
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最初はね、里帆の身勝手さにちょっとイライラしたんです。笑
どうも私は、感情のまま突っ走ってしまうタイプの人物が苦手で。
男性が主人公なら、また違った印象だったのかもしれない。
そう思いながら読んでいたのですが、
読み終える頃には、
あぁ、これは女性だからこそ成り立つ物語なんだと腑に落ちました。
「おしら鬼」という不気味な木像。
いわくつきの呪物。
東北に伝わる伝承と、
土地そのものが持つ力がどろりと溶け合っていて、
なんとも不思議な魅力のある物語でした。
余談ですが、
「呪物」をモチーフにしたホラーが好きなら、
貴志祐介さんの『さかさ星』もぜひ読んでほしい。
あまりの禍々しさに、ぶっ飛ぶから。笑
Posted by ブクログ
評判とかの事前情報もなく、新刊情報を眺めてたらちょっと気になったので購入し、読んでみました。
傑作とまではいかなかったのですが、楽しく読むことはできました。
作中に出てくる民俗学に関する知見は、目を見張るモノがありました。すごく丹念に調べたんだろうなぁと感服しました。
主人公の行動で気になる箇所がいくつかありました。娘が行方不明になっているのに、娘の学校には体調不良で休ませると嘘をついたり、母親が「おしら鬼」について確実に何かを知っているのに、なぞのプライドで聞くことをしなかったり。娘が何かを相談したがっているのに無視して、そしてそのことを反省して何の話だったかを聞き出そうとしてたくせに、いざ娘が話そうとしたら「明日教えて」と突き放したり。謎すぎる。ちょっとイライラしました…。
あと、こういう表現で伝わるか分かりませんが、なんか芝居臭く感じるシーンも何度か見受けられました。「それセリフで言わせちゃうんだ…」みたいな。
一方、クライマックスはエンタメに振り切っている感じが、ちょっと笑っちゃいました。
でも、獺川(おそかわ)の覚醒は熱かったです!
普段、心霊ホラー小説を好んで読んでるので、その目線からではこの作品は心霊ものとは言いにくいかなぁと思いました。
でも、民俗学とか因習とか伝承とかが好きな人には合っている作品なのではないかと思いました。
今回みたいにインスピレーションで選書するのも良いなぁと思いました。今後もこういうことしていこうかなと思います。