あらすじ
第38回小説すばる新人賞受賞作。
小学四年生の吉沢癒知は、宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として信徒から崇拝されていた。幹部の母からは、神聖な身体を持つ者として食事や他者との触れ合いを厳しく制限されていたが、自分に寄せられる信徒の信仰心や日々の「儀式」に抵抗をおぼえはじめていた。そんな癒知の前に現れたのは、家庭の事情で何度も転校を経験している渡来クミ。引越し当初、近所を散策中に見かけた「めっちゃきれかった」癒知に興味津々。ある日、学校のトイレで遭遇したことをきっかけに、ふたりは距離を縮めていく。そして繋がりを持ったのは癒知とクミだけでなく、母親同士も親交を深めるようになり……。
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Posted by ブクログ
主人公は小学4年生の二人の女の子。
クミの母は一級建築士として働き充実していたが、夫の転勤で仕事を辞めて転勤生活になることをきっかけにうつ状態になったのか部屋で引きこもり生活を送っている。
癒知は新興宗教の「降り子」として、教祖のような役割をさせられている。
そんな二人が出会って・・という話。
湊かなえの「暁星」も宗教2世のことをテーマとする話題作だったが、この小説も宗教に巻き込まれる子どもたちという視点では「暁星」にも劣らない小説だったのではないか。
文体はやさしいが、臨場感に富み、ラストシーンはハラハラした。
「(大人は)つよいくせに。なんでも持っているくせに。いざとなれば、自分の足でどこまでも逃げられるくせに。」(本文)
逆に言うと(子どもは)弱い。なにももっていない。いざとなっても自分の足でどこまでも逃げられない。
だから「おとなはこどもをなめている。」
そんな、大人に対する「怒り」や「悔しさ」が特に後半、顕著になる。
「大人の都合」に巻き込まれるのが昔から「子ども」だった。有無を言わさず巻き込まれるのが「子どもの宿命」、その理不尽さ、その哀しさ・・
その「子ども」を子どもの視点から描き切った本作は、賞を取るにふさわしい作品だと思った。
Posted by ブクログ
すごい!!すごい!!すごい!!!
こんな素晴らしい小説に出会えたのはいつ以来?
いや、初めてかもしれない!
青春?てほど成熟してないけど確かに誰の中にも存在してた(ような)幼く甘く熱い(!)時代を思わせ、憧れさせるような見事な文章とストーリーでした!
面白い物語って、読み終わるのがもったいないなあと感じながら読み進めるのがいつもの私なのですが、かこの小説はとにかくぐいぐいとペダルを漕ぐように、先へ、先へ、と気持ちが先走りました。
癒知とクミの行動や会話もとっても良いのですが、この小説はとにかくセリフ以外の部分がすごく魅力的です。隅から隅まで、その表現がめちゃくちゃ良い!
「夏に狂ってしまった並木が、緑をもくもくとさせて空を隠していた」
「目尻がにゅっと歪む。下唇が上唇を呑みこみながら盛り上がった」
とか、とか。
こんなもんじゃないくらい隅から隅まで。
ああ、なんかもう、好き。
冒頭からラストまで、小さなふたりの狭い世界の話なのに壮大なSF映画か冒険かアクションか、いや友情と恋愛物語か?そんな感じ。
最後の最後、滑り台での癒知からクミへの言葉、涙、涙でした。
そしてラスト、これは過去でもなく未来でもなく、今、この瞬間を全力で生きてる二人だからこそ、この終わり方なんだと思う。
この本を選んでよかった!最高でした!
Posted by ブクログ
『第三十八回小説すばる新人賞受賞作』
めっっちゃよかった!!
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小学4年生の吉沢癒知は、所謂 「宗教二世」。創夫の生まれ変わりとされる『降り子』として信徒から崇拝されている。癒知は神聖な身体を持つ者として、日々の生活に厳しい制限を課せられている。
そんな癒知の前に現れたのは、家庭の事情で何度も転校を繰り返している渡来クミ。
二人はある日、学校のトイレで遭遇し 癒知の勘違いから取っ組み合いの喧嘩になるが、その日を境に親交を深めることに。
教戒に縛られた生活(口に入れるものも、喋る相手も決められてる!)を送る癒知は「しあわせ」がわからない。 「子どもは甘い物を食べただけで感じられるもの。大人は願っても手の届かないもの。『しあわせ』っていったい何?」
親の転勤で 何度も転校を余儀なくされるクミは、真の友達がわからない。「じわじわ忘れ去られるくらいなら、初めから期待させないでほしい」
そして二人に共通するのは、子の愛し方を大きく間違った親の存在。
「大人の都合、大人の事情」に振り回され、ままならない生活を送る癒知とクミ。二人は互いを知り 認め合い 心を通わせていく。
しかし「大人の事情」は、そんな二人の仲を割く最悪な事態へと……
何の力も持たない「子ども」は、この困難に、そして「大人」たちと闘うことはできるのか-。
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ゆっちとクミの友情に心が熱くなりました。
そしてゆっちもクミも良い子だし!徐々に仲良くなくっていく過程もすごく良い!
秘密基地を作る、自転車の乗り方を教える、ルールを破ってある事をする…。小学生らしい二人の姿が本当に可愛く描かれていて愛おしすぎる(*´`*) 日向ぼっこしたかのように心がホカホカ
それに対して 親に何度も何度も裏切られるシーンも、二人の落胆、怒り、諦めが痛いほど伝わってきて泣きそうになる( •̥-•̥ ) どちらの親も心が弱いのはわかる。でもさっ!もっともっと全身全霊で子どもを愛せよっっ!!!ヽ(#`Д´)ノ
お話も始めから面白いと思って読んでいましたが、二人の仲が近づいてからは どんどん面白くなっていき あっという間に読み終えました。
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タイトルは「ギアをあげた日」から改題されそうですが、こちらの方がとてもいい!秀逸!
「このまま一緒に、どこか遠くへ行こう。ずっと二人で」 まだ子どもな二人は、大人の手を離れてどこへも行けないことをわかっている。グッとその言葉を飲み込む。
それでも!ペダルを漕ぐ!
「あそこまで行けば、また新しい選択肢ができる。どんな道かはわからない。永遠に続くわけじゃないだろう。」
いまこの瞬間の決断が、間違っていてもかまわない。
「行け!」
「行け!行け行け!」
『ギアをあげて、風を鳴らして!』
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ちなみに第三十六回の新人賞受賞作は
「正しき地図の裏側より」だったんですね。私的 絶賛おすすめ中のやつ!
本書もおすすめ!!
Posted by ブクログ
38回小説すばる新人賞受賞作。
小学4年生の吉沢癒知(ゆち)は、ある宗教団体で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として信徒から崇拝されていた。神聖な身体を持つ者として、食事や他者との触れ合いを厳しく制限され、幹部の母親との触れ合いも禁止されていた。そして、自分に寄せられる信徒の信仰心や日々の「儀式」に抵抗をおぼえはじめていた。ある日癒知は儀式後に、父親の転勤で何度も転校を繰り返している渡来クミと偶然出会う。その後、学校のトイレで遭遇したふたりは距離を縮めていく。
流れるようにスラスラと読めて、頭の中でイメージしやすかった。さすがすばる新人賞受賞作。
宗教2世の話は本当に辛い。まして、癒知は生まれた時から社会との関わりを持たない施設内で育つ3世。小学校に通っていてもそりゃあ、クラスメートとも馴染めないよ。そして、儀式のシーンが児童虐待。想像するだけで悍ましかった。あんなこと実際にやってたら犯罪だよ。
クミの方も、転勤を繰り返す父親について行くため、仕事を辞めた母の心が壊れかけているにも関わらず、明るく元気に振る舞う様が健気で可哀想なくらい。
彼女たちに明るい未来はあるのだろうか。あって欲しい、そう願いたくなる終わり方だった。
余談
高校の頃、ほとんどの子が進学する中、あるクラスメートだけ家事手伝いとなった。後から聞いた話だと宗教上の理由とのこと。
私が初めて身近に感じた新興宗教だった。それで彼女は幸せなのか、と疑問に思ったことを今でも宗教問題が報道される度に思い出す。
Posted by ブクログ
残酷な新興宗教の構造。
親子関係や家族のかたち。
それらに違和感や嫌悪を感じるこどもたち。
初めての友達と外の世界。
育まれる秘密の友情。
そして破壊と救出。
現実を理解した上で、幻想ではなく意思表明としての逃走。
感情を積み上げて内から外に向けることによって、身体を取り戻していく物語。
タイトルと表紙の絵が良いなぁって思って手に取ったのだけれど、読んだ後だとさらにコクが増しました。
最高のシスターフッド小説でした。
Posted by ブクログ
宗教二世の意志というのはあるのだろうか?と疑問に思う。
子どもがいちばん最初に触れるのが母親であり、育つに従いその影響は大きいと思う。
だが、知らぬ間に親と距離が生まれる…それはとても悲しいこと。
気がつけば宗教施設で育ち、創父の生まれ変わり=降り子として信徒から崇拝されていた小学4年の瘉知が、転校生の渡来クミと出会ってから距離を縮めていく話である。
クミと出会うことで、知らなかった世界を知る瘉知だが、彼女は神聖な身体を持つ者として、食事や他者との触れ合いを制限されていた。
それは信じられないほど厳しいもので…。
思いっきり母と触れ合いたいし、気軽に喋りたいし、いろんな食べ物を食べたいということができない辛さはとても考えられないのだが…。
彼女に自由はないのだろうか。
ずっと2人でチャリで好きに突っ走ってほしいと思った。
Posted by ブクログ
宗教とは何なのだろう、神様とはどのような存在なのだろう、人を苦悩から救うものであるのではないのだろうか。
この小説を読んで今までも疑問に思っていたがより疑問は深まった。
信じる者こそ救われる、信じる人を否定する気はない、信じて幸せになれればそれでいい。
この小説に出てくる神様は、神様が幸せではない。
こんな宗教があるとしたら、そんな宗教で人が救われることはない。
誰も真に幸せにはなれない。
神様は形の無いもの、それぞれの心の中にあるものでいいのではないだろうか。
誰かを不幸にして自分だけ救われる宗教なんてありえない。
癒知とクミが自分のためだけに生きる大人になることを願わずにはいられない。
とっても思い物語だった。
Posted by ブクログ
よかった、とてもよかった。
ラストで涙が出たのは、かわいそうだとか二人の友情だとかではなく、この先どうしたって厳しい現実が待っていると思うんだけれど、それを彼女たちもわかっているんだけれど、二人が自分と相手を信じて「今」を切り開こうとしているような、、うまく言葉にできないけれど、そんなふうに感じて胸がいっぱいになったんだと思う。
癒知の母親は、彼女の世界で娘を愛しているんだと思う。癒知も母親と同じ信仰心なら伝わったんだろうな。
環境がちがっても、母親への気持ちは二人とも同じなんだよね。
どうにか報われて欲しいけれど、、むずかしそうで切ない。
不信感や不快感は感じるけれど、ギリギリのところで、宗教を批判するストーリーが中心にならなくて、なので二人に集中して読めた。わたしはそこがとてもよかったと思う。
このあとどうなるのか気になるラストもよかった。
癒知もクミも、わたしの頭のなかに生き生きと浮かんでいた。
こんなに子ども目線で書ける作者さん、すごい。次の作品もたのしみ!
それにしても世話役森田くん、ある意味すばらしい「世話役」だった!
けれど、団体の幹部候補生としては問題だろうな〜彼のその後も気になるわー
Posted by ブクログ
あさきょさんの本棚から
宗教二世問題を子ども目線で描いている。
小学生であっても生まれながらにして宗教の教祖としての役割を背負わされるということ自体が、人権侵害だと思うけれど…
実際こういったケースはあるのだろうな。
宗教施設の中ではその宗教のルールだけが真理であって、国の法律を超えたものなのになってしまうという現実。
闇だな…
そんな中で、クミが癒知を救うために必死に動く姿が素晴らしい。
私だったら絶対諦めてしまうだろう。
宗教二世問題について考える時、なぜ逃げなかったのかという発想になりがち。でも現実は決して逃げることなどできず、彼らにその意識すら芽生えないようにされているということを改めて認識した。
人は病気や不安な時程宗教などに救いを求めてしまうけれど、その時の判断は冷静ではないからこそ、間違えやすいという現実も、しっかりと胸に留めたい。
私はといえば、若い頃不安の塊で生きていたのに、食べ物を変えたら脳天気な毎日だ。
みんなもっとタンパク質を摂ればいいのに。
彼女達のその後はどうなったのだろうか…と気になる終わり方だったけれど、きっと道は拓かれたと信じたい。
Posted by ブクログ
身体がゆるやかに大人へと移ろいゆく子どもたちの季節が、大人の為にオトナにならざるを得ない日々になってしまっては絶対にいけないと、そのことを強く思いながら読みました。出来ることにも行ける距離にも限りがある中で、手が届くものへ危なっかしい不器用な全力で突き進めるのは、あの頃の私たちも持っていた未熟さ唯一の特権と言ってよいはずです。大人になれば戻ることも、そこにあった宝物に触れることも出来ず、ただ惜しい気持ちを抱えるしかしようの無い子供時代だからこそ、この瞬間の彼ら彼女らには、今はまだ《「ちゃんと漕ごうって思わんでええねんで」111p》という愛情で包んだ言葉を私たちは手渡してあげるべきなのだと思います。
Posted by ブクログ
宗教絡みの虐待。そこに転校してきた少女が神さまとされていた少女と紡ぐ絆。友情では計りきれないその2人の思いを乗せて疾走する自転車逃走の未来を信じたい。
Posted by ブクログ
良かった、引き込まれてグイグイ読んだ。最初は怪しい宗教の言葉から始まったので、とっかかりに面白くないかも?と思ったがそれは間違いで、物語としてとても面白かった。宗教の神の降子として神として生きる癒知と、お母さんが病んで家庭はうまくいかないが明るく振る舞い日の転勤に翻弄されるクミと。出会いは最悪だったが、2人は親友というだけでは表せない、深い友情で結ばれる。
出会うことで互いが良い意味で変わる。
最後はどうなったのか?という終わり方。
Posted by ブクログ
宗教団体で信仰対象とされている小学生の少女とその同級生を描いた小説
設定も描写も面白かった
ラストはやや強引で不自然にも感じられたが、少女たちの真っ直ぐな思いの現れと思えば飲み込める
デビュー作とのことだが力のある作家さんだと思った
Posted by ブクログ
小学生版「テルマ&ルイーズ」。癒知が、対等な人間として接してくれるクミと出会って、自分の気持ちを表現する言葉を見つけていく過程がよかった。
小学4年生でここまでの考えと行動力があるかなと思ったのと、「まとも」な考え方のできる森田がなぜ教団に入ったのかが解せないので星3つ。
Posted by ブクログ
全てを失ったとしても、手にしたいもの。
それは一体なんだろうか。
そもそも全てを失うという選択肢を選べるだろうか、そう考えてしまった。
クミが引っ越してこなければ癒知と出会うことはなかった。クミの母が宗教団体に入ろうとも思わなかった。けれど、クミが引っ越してきたから癒知は救われた。希望を得た。
クミは一歩踏み出す勇気を得た。
人生に正解なんて無い。一つの決断は、誰かから見たら間違ってるかもしれないけど、
当人たちからしたら最善の選択肢。
すごく大事な決断を幼くして選んだ彼女たちは強い。
個人的には森田の存在が気になる。
癒知の味方に見えるが…
なぜ彼は宗教団体に入ろうと思ったのか、
なぜ宗教に関する論文を書いたのか。
バックグラウンドが気になった。