あらすじ
<デビュー25周年>渾身の書き下ろし長編ミステリー! 結婚直後の妊娠と夫の転勤。その頃から夫は別人のように冷たくなった。彼からの暴言にも耐え、息子を育ててきたが、ついに暴力をふるわれた。そして今、自宅マンションの浴室で夫が倒れている。夫は死んだ、死んでいる。私が殺したのだ。もうそろそろ息子の翔が幼稚園から帰ってくるというのに……。途方に暮れていたところ、2週間前に近所でばったり会った大学時代のサークルの後輩・桂凍朗が訪ねてきた。「量子さん、問題が起きていますよね? 中に入れてください」と。
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Posted by ブクログ
面白いというか、楽しかった!
最初は重たい始まり方だったけど、ジャバウォックという架空のちょっとモンスター的要素と愉快なキャラ達が物語を和らげミステリーがだんだんユーモア溢れるファンタジーになっていって、ほぼ一気読みしてしまった〜後半の亀がルーシー夫妻に送られてきた時のスイッチが入る感じ、たまらん!桂凍郎の思惑がわかった瞬間、でもその上をいくラスト、面白い作品が多いからこそ厳しいレビューが多いけど、私は大満足でした。
あと、物語の展開だけじゃなくてちゃんと考えさせられる部分もあって今の時代にも則していた気がする。桂凍郎の「人が難しいのは、種と同じぐらい個も重要に感じているからです」っていうセリフが個人的に印象的。キャラでいうと北斎がよかったな〜、伊坂幸太郎の小説に絶対いる良い意味で自分勝手でポジティブで読んでて気持ちがいいキャラ。
あとやっぱり仙台好きだね〜〜(4.2)
Posted by ブクログ
ただの夫殺害のミステリー、、、
ではない。
初めから違和感があった。
会話が、、、言動が、、、
何かおかしい。
いきなり変わる場面展開に少々ついて行きづらさはあるものの、最後まで楽しく読めた。
Posted by ブクログ
初めての伊坂幸太朗さん作品でした。暴力を振るってきた夫を殺害してしまうという導入がミステリーの幕開けを思わせる一方、読み進めると「ジャバウォック」なる寄生存在を巡るSF染みた物語に変容していく。
序盤、所々で量子の記憶が途切れ途切れになり、思い返しながら状況を説明する描写があった点と、宿主が死ぬ・死んだと思わせるとジャバウォックが別の生体に移り住むという話から、てっきり量子にジャバウォックが憑いていて、意識が飛んだり戻ったりしているんだと思っていたら、終盤でまさかの種明かし。水槽の中の脳などの哲学的な要素を持ち出すことで、量子が抱く不安感の正体がうまく誤魔化されていたのだと気づく。
印象に残るのは凍朗の台詞、「自分は最後の最後まで、どんな相手にも親切な人間でいたい、と思っているんです。」人間が「暴力と親切」から成る生き物であると考え、人間の暴力的な一面を悲観しながらも語られた言葉。彼の傲慢さ故の発言か、「他人は変えられない」が故の諦めからくるせめてもの希望だったのか。終盤、あんな形で自身を試し、答え合わせをしなくても良かったのでは...という哀しさを感じた。
Posted by ブクログ
面白かったと思う。
ミステリーかと言われると、そうなんだ、くらいの認識でした。
ラストの、「桂さんは、そういう人間だった。ということだね」が、答えなのかなと思った。
Posted by ブクログ
彼女の混乱がこちらをイラつかせ、焦りによって不安は助長され終盤まで持ち越す
よくわからないもやもやをどう受け止めるかで変わる気がする
日常に潜む些細な揺れは必ずあって、見えないそれは具現化が難しい
現れた時には手遅れというか、もはやどうにもならない形でわたしたちを襲う
そこに、ジャバウォックバスターを当ててくるあたり、トリッキーな手法だ
ただ、年々、機微をレシーブする力が足りなくなってる
隠れコマンドの取りこぼしが多くて残念だが、その余白もまたそれはそれで
Posted by ブクログ
伊坂幸太郎さんの新刊は、相変わらずタイトルからは内容が想像できない上に、帯の文字が重い。夫は死んだ。死んでいる。私が殺したのだ。
序盤から、モラハラ夫に苦しめられる妻という構図に、先が思いやられるが…おいおい、あっさり殺してしまったな。視点人物の1人である妻・量子が呆然としていると、部屋を訪ねてきたのは…。この先はノンストップの展開である。
そしてもう1人の視点人物・斗真。かつて、彼は人気歌手・伊藤北斎への誹謗中傷に加担していたが、現在はほぼ活動していない北斎のマネージャーをしている。当然、仕事の依頼などないのだが、ある日、北斎を訪ねてきたのは…。
ジャバウォックとは、ルイス・キャロル作『鏡の国のアリス』にある架空の生物だそうだが、物語自体には登場せず、作中に登場する書物、いわゆる作中作に登場するというから、何ともややこしい。それをモチーフにする作家がここにいた。
2つの視点が交錯するという手法は珍しくはない。共通しているのは、正体不明のジャバウォックが絡んでいること。ふざけた名前のコンビと、あの男。どちらもジャバウォックの危険性は理解しているし、それぞれの使命感で動いている。
終盤に向かうほど緊迫感が高まるが、どことなくユーモラスで、相変わらずの伊坂節。不思議と、この物語の中核はジャバウォックでなければならない、他の名前ではだめなんだ、という気がしてくる。しかも、重要なキーアイテムがそれ?
あるビートルズの曲がネタになっているのはご愛敬。しかし、作中に曲名は一切出てこないし、よほどの熱心なファン以外わからないだろう。ジャバウォックといいこの曲といい、改めて伊坂流のネタ選択のセンスに脱帽するしかない。
読み終えてみれば、よくあるあの手だったわけだが、伊坂幸太郎がアレンジするとこうなるのか。なるほど、本格の作家とは言い難い伊坂幸太郎さんの作品に、本格の大御所・綾辻行人さんが賛辞を寄せているのもわかる。
Posted by ブクログ
個人的にはリアリティさが、ちょっと物足りなかった。
今年Ankを読んでいただけに余計に差を感じたのかもしれない。
よくわからないジャバウォックが取り憑いたり、剥がされたりする。
コロナ禍の後だからか、未知のウイルスのようなものに対する人の怖さが共通認識になっているのだろうか。