【感想・ネタバレ】事件は終わったのレビュー

あらすじ

年の瀬に起きた痛ましい〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉。突然男は刃物を振り回し、妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した。時は過ぎ、事件に偶然居合わせてしまった人々には、日常が戻ってくるはずだったが・・・。会社員の和宏は、一目散にその場から逃げ出したことをSNSで非難されて以来、日々正体不明の音に悩まされ始め・・・・・・(「音」)。切りつけられた妊婦の千穂は、幸いにも軽傷で済んだが、急に「霊が見える」と言い出して・・・・・・(「水の香」)。他全6編。事件が終わって始まった、少し不思議でかなり切ない〈その後〉を描く連作短編集。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

それぞれ。
ひとりひとり。
その中で完結して続く短い話が。
全部1つに繋がる。
その瞬間が粋な描写で描かれてた。
ちょっとした一言で。
なんとなく、グッときて。
面白かったーと、思いました。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

とある地下鉄内で無差別殺傷事件が起こる。
その場に居合わせた人達のその後の生活が少しスピリチュアルな展開で描かれている。
そして殺されてしまった老人は、本当はどんな人だったのか──

何か事件が起こった時、どこか他人事で遠い世界の出来事のように感じている。
でも当事者たちはなかなか事件を忘れられないし、心に傷を負いながら事件後も生活は続いていく。
全員良い方向に人生が進んでいきそうで良かった。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

年の瀬に起きた《地下鉄S線内無差別殺傷事件》は大きな爪痕を残した。
事件は終わったものの、居合わせた被害者達は“ある症状”に悩まされている。
傷ついた心が癒えるまでの話を、スピリチュアルな展開で描くのって斬新だなあと。
でも意外な真相もちゃんと用意されている。
個人的に『壁の男』が好きだった。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

地下鉄内で、男が刃物を振り回し、乗客が死傷する事件が起きた。最初に切られたのは、隣に座っていたマタニティマークをつけた女。そして、それを助けようと男に向かっていった老人が、メッタ刺しにされて死亡。その様子はスマホで撮られていて、ネットに上げられる。乗客たちの、後日譚。

いち早く車内から逃げた男は、そのことをネットで責められ、社会生活が送れなくなり、マタニティマークの女は霊の影に怯えるようになる。その時の記憶を失ったテニス選手の高校生は、見ないようにしていた自分と向き合うことになり、ホストの男は、植物状態で寝たきりの息子の幻影を見るようになった。電車に乗れなくなったジャーナリスト志望の女子高生は、正義について悩み、不登校になった同級生のもとを訪ねる。最終話は、絵が描けなくなってしまったイラストレーター。そこで、死亡した老人の人となりが明かされる。

無差別殺傷事件の被害者のその後の話、という、前情報から考えていた話とまったく違った。解説で、桜庭一樹さんが書かれているように、「人の人生は切り取れない」。ちょっとネタバレすると、事件の直前、その電車に乗っていた女子高生は老人に痴漢をされ、「死ねよ」と言ってしまう。その老人が本当に死んでしまったことで、女子高生は悩むんだけど、英雄だと思った老人が痴漢をするような男だった? という驚きがあり、それが最終話でひっくり返るというか。一話、叙述ミステリがあったな。ミステリがあまり得意でないので、騙された気持ちになる。いくつか続けて読むと、なんだまたかよ、と思ってしまうな。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

降田天『事件は終わった』集英社文庫。

地下鉄内で起きた無差別殺傷事件の終わりから始まるという面白い構成の連作短編集。

降田天の短編は幾つかのアンソロジーで何作か読んだことがある。

ホラーや都市伝説のようなテイストを漂わせながら、事件と関わった人びとの人生を描くのだが、爽快感も納得感も無く、尻すぼみにつまらなくなっていくという残念な作品だった。


『00 事件』。以前は、年末になると何時も陰惨な殺人事件が起きていたが、今は毎日のように殺人事件のニュースを目にしているように思う。それだけ、何気ない日常の中に危険が潜んでいる恐い時代になったということだろう。

物語の発端となる事件が極めてシンプルに描いている。

12月20日の夜、地下鉄S線の車内で、迷彩柄のダウンを着た男が突然ナイフを取り出し、奇声を発しながら、右隣に座っていた妊婦を切り付け、助けに入った老人を滅多刺しにして殺害する。犯人は駅職員に取り押さえられ、事件は終わる。


『01 音』。今の時代は、誰もが何時如何なる場所でもスマホで画像や映像を撮れるようになり、便利な反面、それらがネットに公開されれば、バッシングにつながる場合もあるから恐い。

世の中には様々な場所に様々な悪意が忍んでいる。どうしてこんな酷い世の中になってしまったのだろうか。

地下鉄無差別殺傷事件発生時、犯人の右隣に座っていた会社員の和宏は、一目散にその場から逃げ出した映像がSNSにアップされてから、SNSで非難が集まり、以来、会社を辞めて家に引きこもる、母親と2人暮らしの和宏は古いアパートに引っ越し、ひっそりと暮らしていたが、正体不明の音に苦しむようになる。


『02 水の香』。無差別殺傷事件の生き残った被害者も身体に傷と大きなトラウマを抱えることになる。

もう一つの悲しい心の傷。

地下鉄無差別殺傷事件で犯人に最初に切り付けられた妊婦の千穂は幸い軽傷で済んだが、自分を助けようとした70歳の向井正道が亡くなったことにショックを受けていた。また、千穂は事件の直後から急に、霊が見えると言い出し、行動と言動がおかしくなる。


『03 顔』。テレビなどで無差別殺傷事件などの発生時の映像などを観ると、誰もが我先にと逃げ出していることが解る。人間の生存本能からして、それは当たり前のことなのだろう。

この話で事件の全貌が大きく変わるとは思わなかった。

地下鉄無差別殺傷事件の際に足首を骨折した高校三年生の池渕亮はテニス部のエースと目されていたが、怪我により休養とリハビリを余儀なくされる。池渕は高校の報道部からドキュメンタリーの取材を受け、事件当時のことについて話す。


『04 英雄の鏡』。なかなか込み入った内容で、結末には驚愕する。

地下鉄無差別殺傷事件の現場に居合わせたホストのユウは2年前に亡くなった勇気の声を聞くようになり、次第にそれが常態化していく。


『05 扉』。こちらも地下鉄無差別殺傷事件とは一見無関係と思われるストーリーなのだが。

『03 顔』に登場した高校生の池渕亮たちが再び登場し、未来ドアの都市伝説を探る。


『06 壁の男』。絵が描けなくなったイラストレーターの似鳥が再生していくプロセスを描きながら、地下鉄無差別殺傷事件で妊婦を犯人から守り、刺殺された70歳の向井正道の心の内を描く。

どうにもシックリこなかった。

本体価格820円
★★★

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2025年10月01日

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