あらすじ
就活の最終面接の日、青森で漁師をしている父の船が遭難したという連絡が入った。家族と就職先を一度に失った桐ケ谷麻海は、東京で暮らす叔父・響介のもとに転がり込むことに。
居候としてなにか仕事をさせてほしいという麻海に、響介がかけた言葉は「掃除も洗濯も料理も別にやらなくていいから、俺の仕事をちょっと手伝って」。
響介の職業は、保険調査員。保険会社から依頼を受け、保険金を支払うにあたって不正や問題点がないか調べる仕事だ。
麻海は見習い調査員として詐欺が疑われる事案の調査をするなかで、生と死、お金にまつわる様々な家族の思いにふれていく。
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Posted by ブクログ
父親の死(行方不明)から始まる物語。
暗く暗く、どん底のような場面から始まってもおかしくない。しかし切なさは残しつつも、叔父と甥のコンビは比較的ふつう、どちらかといえば、前向きな日々を過ごしていく。
人が亡くなる物語(ミステリーとホラー以外)って、かなり悲しみの場面が多く、悲しみにどう対処したか、そこからどう立ち直っていったのかが多いと思います。
けれど現実には、たしかに悲しみに浸る時もあるけれど、それ以外の感情がないかというとそんなことはない。優しくされたら嬉しいし、驚くようなことがあればもちろん驚くこともあると思うのです。その中で、やはり死と向き合う時間がある。悲しくもなる。
そんな人間のいろいろな感情が、すごく物語に描かれているように感じました。
暗く悲しみに浸り続けるような作品がダメというわけではもちろんないです。ただ、このいろいろな感情があることがすごく人間らしいく、読んでいて心に響きました。